<SATANIC CARNIVAL 2026>のラストを締め括るのはSiM。<SATANIC CARNIVAL>のトリを務めるのは9年ぶりとのことだが、当然のことながらこの9年でSiMを取り巻く環境はガラリと変わった。コロナ禍に直面して苦境に立たされたロックシーンを背負い「俺達を閉じ込めた看守自身に鍵を開けさせて、そいつらが見ている前を胸張って歩いて出ていく。それが自由だ」という言葉のもとに“自分達の居場所は自分達で守る”という姿勢を貫いたことで新たなリーダーたる存在感を放ち、さらには「The Rumbling」を扉にして本格的な海外進出を果たした。

2016年以降は<SATANIC CARNIVAL>を含めた国内フェスのトリを務めることも多かったわけだが、ロックシーンに対する影響力にしろメッセージの力にしろ、そして音楽そのもののキレにしろ、この9年で増強され続けたバンド筋肉は観る者を凌駕する貫禄となっている。よっての<SATANIC CARNIVAL>大トリなのだろう。フロアに充満する熱は、2日間のオーラスに対する期待はもちろん、それ以上に、ただただ“SiMのライブが観たい”という高揚感から生まれているようにも感じる。

お馴染みのSEが鳴り止むと同時に鳴らされたのは「PANDORA」。背面のLEDには堕ちた聖母のような姿のパンドラが映し出され、初っ端から飛び出したファイヤーボールに大歓声が上がる。モッシュパートに合わせて背景のパンドラがドクロの姿に変貌していくなど、“もはや敵はいない” “今俺がここに立っている意味を考えてみろ”という意味合いのリリックに連動する形で映像も音も急激に加速していき、そのスピード感はピットにも即着火。ショートチューンではあるものの1曲で完璧なモッシュピットが完成、あとは天井をぶち抜いてどこまで行けるかの勝負である。

そこから立て続けに披露された「Blah Blah Blah」ではMAHが「暴れろ!」と煽り、お馴染みの呪文“oh na na na”と♪ズッタ、ズッタ♪と2ビートを交錯させつつサビメロの爽快感で一気に持っていく。ステージ左右のウィングまで動き回って観客を手招くMAHの姿はヴォーカリストというよりフロアを支配する魔王のようである。「Blah Blah Blah」のMVの世界観をよりダークに進化させたような映像は、ヴァーチャルな世界で他人を攻撃することでしか自己承認を得られない人間が地の底まで堕ちていく様を描き出す。そこにインサートされるパンドラの肖像と、パンドラの箱。つまりこれは、他人の人生をてめえのものと履き違え、一線を超えて無闇やたらに人という“箱”を開けた人間には厄災が訪れるのだというメッセージである。

「PANDORA」も「Blah Blah Blah」も2013年にリリースされた楽曲だが、人と人の傷つけ合いが止まないどころかむしろ加速している2026年にこそ、クリティカルに響く歌である。その多彩なリズムチェンジも呪文のようなメロディもパンクとレゲエの配合も“SiM節”のど真ん中として認識されているのが「Blah Blah Blah」だが、何よりSiMが放ち続けてきた“誰も自分の人生を侵すことなどできない”というメッセージの王道を行く楽曲だからこそ、時を経るごとに威力を増しているのだと思う。

「9年ぶり2度目のトリ、SiMです。いろんなバンドがトリをやってきた中、2回目のトリ。SiMに任せておけば間違いない、その通りです! 長く出ていると、サタニックのプロデューサー・I.S.Oさんに言いたいこともないです(笑)。別にいいです。そして、セットリストも9年前から丸っと変わるよ。それは仕方がない。だけどせっかくだから、古い曲をもう1曲やります。ムカつくヤツは全員ぶち殺すっていう曲です!」

そんな言葉に続いて放たれたのは「I HATE U」。これもレゲエから2ビートに急速発進する展開の楽曲だが、目を見張るのはブレイクダウンの深さである。丸っと変わったセットリストより何より、9年分のヘヴィネスと緩急が凄まじい。悪態をつきつつユーモラスに締め括るMAHの話術も、MAH曰く「世界のSiM」としての存在感も、もちろんSiMのライブの求心力になっていることは間違いない。が、やはり硬軟も緩急も自在な独特のグルーヴこそが比肩なき個性として輝いているのだ。そんなことを改めて思う、あらゆる意味で自由自在なライブである。

「I HATE U」を鳴らし終えると、「からの……」というひと言から、2026年新タームに突入したことを印象づけた楽曲「FiVE TiMES DEAD」へ。メタルコア的なリフからレゲエに雪崩れこみ、“NA NA NA NA NA”のコーラスとMAHのシャウトが交錯するサビを繰り出し、さらには突如ドラムンベースが挿されるブリッジがやってくる。♪ズッタズッタ♪というヴァースのリズムも「Blah Blah Blah」以降の十八番だし、この曲を彩る映像演出は日本的なオブジェクトのオンパレードだし、さあ行くぞという時に財布やパスポートが見当たらずキレ散らかすというユーモラスな歌詞もMAHらしいし、徐々に海外進出を進めていった『PLAYDEAD』のシーズンを超え、いよいよ本格的に海外も制圧しに行く姿勢を“SiM全部盛り”の楽曲で見せつけている。さらには「生きてるか? じゃあ死ね!」という何とも悪魔的な言葉から「KiLLiNG ME」をドロップし、MCはとにかく端的で短く、音楽の威力一発でブチ上げるストロングスタイルのライブが徹底的に続いていく。

「これだけのメンツが揃っている中で、なぜSiMがトリなのか。ちょっと考えればわかるよね? レベルが違ぇんだよ! 格が違うってことですよ。……普通に嬉しいです、ありがとうございます(笑)。サタニックが始まった頃はまだ“ヤバい若手”くらいの感じだったと思うんですが、今や中堅とベテランの間くらいになってきて。9年前のトリの時は少し浮き足立ってたけど、今日は余裕で来ました。安心して楽しんでいってください。今や世界のSiMだからさ。余裕で“プチッ”と踏み潰すつもりで来ました」

これはMAHらしく太々しい物言いのMCだが、この発言に込められた自信は本心だろう。海外のポップミュージックこそが最先端!という時代は過ぎ、ストリーミングサービスの台頭によってあらゆる時代/あらゆるジャンルの音楽が横並びになり、日本の音楽が“ガラパゴス文化”ではなく“世界有数の個性”に反転したのが今だ。レゲエとポップパンクとヘヴィロックとニューメタルを節操なく混ぜて急激なトランジションで繋いでいくこの奇怪な音楽曼荼羅は日本人だからこその雑食性から生まれたものだし、それがそのまま世界規模で輝くオリジナリティになっていくはず。そんな期待を抱かせるほど今のSiMには風が吹いている。

そんなワクワクを抱きながら観ている中、お次はまさに世界への扉を開いた1曲「The Rumbling」。サビの美しいメロディと“It’s coming, rumbling”のリフレインが重なることで“声を上げてしまう”のがこの曲の凄まじさであり、逆に言えば、どんなに急激な展開を持つ楽曲でも最終的には“歌える”という感覚一発で接着してきたSiMミクスチャーの根本とも言える曲である。

そして、本編ラストはまさかの新曲「DALALA」。「我々は9月にアルバムを出す予定で、ライブでも新曲をやってるんです。お決まりの曲で終わるのもいいんだけど、飽きちゃってさ。まだリリースもしていない、誰も歌詞を知らない新曲で本編を終わるっていうのに挑戦していいですか。大丈夫、めちゃくちゃ歌いやすいサビが来るんで。♪DA LA LA LA DA LA LA〜♪」という観客への親切なガイドを置きつつも、まだ公開されていない新曲で本編を終えること自体が今のSiMの自信を表している。

そうして演奏された「DALALA」は、ツーバスとぶっといリフが走るイントロからレゲエへ接続し、突如として光射すコーラスに雪崩れこみ、縦に跳ねつつ明るいメロディの“DA LA LA”を大合唱。と思ったら一気に叩き落としてビートダウン、超獰猛なモッシュパートを経て再びリフが登場し、最後の最後でまた大合唱……という、千変万化のSiM節をさらに極端化させた1曲である。特に“DA LA LA”のリフレインは爽やかと言ってもいいほどの質感で、ここでもまた“カオティックなのに歌えてしまう”というSiMらしさを再認識するのだった。

アンコールではユキナ(花冷え。)を迎え、新曲「BLiNDEYES feat. Yukina from 花冷え。」を披露。“sumimasen deha sumimasen”というフックはワードそのものとして強烈だが、日本語特有とも言える同音意義を生かし、“すみません”と“済みません”を重ねることで怒りを表現するセンスが最高である。人格自体が変わっているのではないかと思ってしまう歌とシャウトのコントラストを見せるユキナ、そしてラップもメロディも自在に乗りこなすMAH。その痛快さがSATAN STAGE全体のピースな暴動に映り、これ以上ない大団円だ。

……と思ったが、最後の最後に繰り出されたのは「f.a.i.t.h」だった。完膚なきまでにフロアを支配し、最後はそのフロアごと破壊してステージを降りていったSiM。ハッピーな大団円よりも、ラストまで徹底的にぶつかり合って、お互いの命を躍動させて。そのほうが<SATANIC CARNIVAL>らしいと感じたのは、僕だけではなかったはずだ。

文◎矢島大地
撮影◎スズキ コウヘイ/中河原理英

◆BARKS内<SATANIC CARNIVAL 2026>特集

@satanic_ent

【Real Time Recap Movie】 DAY 2 SATAN STAGE SiM @SiM #サタニック

♬ オリジナル楽曲 - satanic_ent - satanic_ent

◾️セットリスト(SATAN STAGE)
1​.Blah Blah Blah
2​.I HATE U
3​.FiVE TiMES DEAD
4​.KiLLiNG ME
5​.The Rumbling
6​.DALALA
encore
7​.BLiNDEYES feat. Yukina
8​.f.a.i.t.h

 

■<SATANIC CARNIVAL ’26>
6月6日(土) 千葉・幕張メッセ国際展示場1-3ホール
6月7日(日) 千葉・幕張メッセ国際展示場1-3ホール
◯物販 / FOOD AREA:open9:00
◯ライブ観覧エリア:open10:00|start11:00
▼6月6日(土)出演者
10-FEET / バックドロップシンデレラ / FC FiVE / Fear, and Loathing in Las Vegas / FOMARE / ハルカミライ / HERO COMPLEX / HEY-SMITH / Ken Yokoyama / Maki / MAYSON’s PARTY / MONGOL800 / サバシスター / SCAFULL KING / SHADOWS / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Suspended 4th / ヤバイTシャツ屋さん / 山嵐 / [OA] カライドスコープ
▼6月7日(日)出演者
04 Limited Sazabys / Age Factory / dustbox / ENTH / 花冷え。 / HIKAGE / Knosis / マキシマム ザ ホルモン / OVER ARM THROW / Paledusk / ROTTENGRAFFTY / SHANK / SHE’ll SLEEP / SiM / 四星球 / THE FOREVER YOUNG / 打首獄門同好会 / View From The Soyuz / w.o.d. / [OA] Launcher No.8 

 

関連サイト
◆BARKS内<SATANIC CARNIVAL 2026>特集
◆<SATANIC CARNIVAL> オフィシャルサイト
◆PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト