気象庁は5月29日から「線状降水帯の直前予測」の速報を始めました。線状降水帯の発生が予測される2~3時間前を目標に「もうすぐ豪雨になるかもしれません。身の安全を図ってください」と警戒を伝える情報です。過去の線状降水帯発生時のデータ分析を行い、気象解析の解像度を上げ(詳細にした)、発表が可能になったとしています。ポイントは「2~3時間前」です。この時間を、命を守るためにどう使えばいいのかを考えます。

情報発表の流れ

これまで、約半日前に「予測」の情報が出て、その後「発生」の速報が出ていました。これからは、新たに発生2~3時間前を目標に「直前予測」の速報が発表されます。そして発生すると、「発生」の速報が発表されます。

□線状降水帯半日前予測(気象解説情報) ※半日程度前から発表

□線状降水帯直前予測(気象防災速報) ※2~3時間前を目標【New!】

□線状降水帯発生(気象防災速報)

シミュレーション

図は、2025年8月10日 福岡県福岡地方での豪雨の状況を再現した「線状降水帯直前予測」の発表例です。

午前4時52分に、まず「線状降水帯半日前予測」が発表されました。求められる防災行動は「大雨に対する心構えを一段高め、避難準備等、災害に備える」としています。具体的な行動としては、避難場所の確認、避難場所について家族と共有、非常持ち出し袋(非常持ち出し品)の準備・確認です。避難に支援が必要な方や時間がかかる方は、念のため避難を検討してもいいかと思います。(レベル3 高齢者等避難の行動です)

そしてシミュレーションでは、発生2時間50分前の午前9時20分に、「線状降水帯直前予測」が発表されます。防災行動を「レベル4 危険警報が発表されるタイミングと近いことから、周辺状況や自治体の避難情報等もふまえ、避難など適切な防災行動をとる」としています。

気象庁の文章の中の「周辺状況」が重要です。線状降水帯が発生していなくても、すでに強い雨が降っていたり、それまでの雨で家の周辺が危険な状態になっていたりします。たとえ時間的な猶予(リードタイム)が2~3時間あっても、この段階で避難を始めても、タイミングとしては遅いかもしれません。みなさんは「周辺状況」をみて、命を守るためにどう行動すればいいのか?を考えてください。避難所に行くのか?ご近所の安全な家に避難するのか?自分の家の安全な場所に移動するのか?を決めてください。

そして、午後0時10分に「線状降水帯発生」の速報が出ました。「自治体からの避難情報や周辺状況を確認し、速やかに安全確保」です。レベル5の状況です。

「半日前予測」「直前予測」「発生」、各フェーズによって求められる防災行動が変わっていきます。その時、どうすればいいのか、家族で話し合っておきましょう。

予測が難しい線状降水帯

線状降水帯は、海から供給された水蒸気が積乱雲になって、さらに次々と発生して帯状に並んで豪雨を降らせ続ける積乱雲の集合体です。同じ場所に長時間居続けます。実は、線状降水帯がいつどこで発生し、どう移動し、いつ消えるのか?を精度よく予測することは、現在の気象技術では、かなりハードルが高いと言えます。

気象庁の野村竜一長官は、去年10月15日の会見で、「2025年10月9日までは予測数86回のうち実際に発生したのは12回で的中率約は14%」としています。的中率は低いのですが、「予測情報を発表した後で3時間雨量100ミリ以上となったのは、86回中52回で約60%と、多くは大雨になっている」と話しています。

つまり積乱雲の集合体は、「線状線状降水帯と呼べるサイズ」に成長しなくても「その手前の段階」でも大雨を降らせています。ですので線状降水帯に関する情報が出たら、「対象エリア」だけでなく、その周りのエリアで大雨になる可能性があります。警戒が必要です。

※気象庁の線状降水帯の定義=積乱雲が列をなし数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、長さ50~300km程度、幅20~50km程度の線状に伸びる強い降水域

被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕

東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。