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もてぎのトラブルを乗り越え、万全の体制で富士へ

みなさん、こんにちは。レーシングドライバーの塚本ナナミです。

【画像】レーシングドライバー塚本ナナミのスーパー耐久参戦記 富士スピードウェイ公式テスト 全5枚

今シーズン用に新調したレーシングスーツも届き、ワクワクした気持ちで、6月の富士24時間レースに向けた公式テストに臨みました。今回はその様子をお届けします。


こちらが今シーズン用に新調したレーシングスーツ。気持ちも新たに、がんばります。    Shinichi Yasuda

開幕戦のもてぎでは、私たちAndLegal Racingの822号車は燃料ポンプにトラブルを抱えてしまい、チーム一同、悔しい思いをしました。

レースの世界では、たったひとつの小さな部品が結果を大きく左右します。

「二度と同じことは繰り返さない」

チーム全員がそう心に誓い、そこからの仕事ぶりは本当に頼もしいものでした。

メカニックがトラブルの原因を丁寧に突き止めてくれ、しっかりと修理して、本番前にはスポーツランドSUGOで入念なテスト走行を重ねてくれました。考えられる不安をひとつずつ消し込み、「もう大丈夫」と胸を張れる万全の状態でマシンを富士スピードウェイへ送り出してくれたのです。

レースは、ドライバーがクルマに乗り込む前から、もう始まっています。みなさんも、愛車のちょっとした異音や違和感に気づいたとき、早めに点検に出すと安心ですよね。それと同じで、地道な準備の積み重ねこそが、本番の安心につながります。

キャリア15年を超えた今でも、整えてもらったマシンのステアリングを握る瞬間は特別です。私はこの公式テストに、支えてくれるチームへの感謝と、「絶対にいい走りで応えたい」という思いを乗せて臨みました。

私の枠だけ、まさかの雨。スリックタイヤで挑んだウエット路面

公式テストは時間を区切ったセッション(走行枠)に分かれていて、複数のドライバーが交代で走ります。

ところが、私が担当した2回目のセッション。コースインしようとした、まさにその直前から、ポツポツと雨が降り出したのです。しかも、雨が落ちてきたのは、なんと私の走る枠だけ。


合言葉は『We are ONE TEAM!』。支えてくれるチームに、走りで応えていきたいです。

タイヤはスリックタイヤ(溝のない、晴れた路面用のタイヤ)のまま、コースイン。本来、濡れた路面では溝のあるレインタイヤに履き替えるのが基本ですが、降り始めは各チームの作戦が分かれます。

周りのチームが次々とレインタイヤへ交換していくなか、私はチームと無線で相談しながら、ギリギリまでスリックタイヤで粘りました。濡れた路面でグリップ(タイヤが路面をつかむ力)を探りながら走るのは、本当に神経を使います。それでも、富士スピードウェイの上り勾配が続く第3セクターにさしかかると、さすがにスリックタイヤでは前に進まなくなり、レインタイヤに履き替えて再びコースへ向かいました。

結果として、ひとつの走行枠のなかで『雨のスリックタイヤ』と『レインタイヤ』、その両方を経験できました。これはなかなかできることではない、とても貴重な勉強の機会。ラッキーだったと思っています。天気がめまぐるしく変わる24時間レースでは、この経験がきっと生きてくるはず。

……とはいえ、雨が降ったのは私の枠だけ。正直なところ、気持ちはちょっぴり複雑でした。

夜の富士を走る。24時間レースへ

今回のテスト最大の特徴は、夜のサーキットを走る『ナイトセッション』でした。

「夜のサーキットって、どのくらい見えるの?」とよく聞かれますが、答えは「想像よりずっと暗い」です。たよりになるのは自分のヘッドライトの光だけで、富士スピードウェイ名物の約1.5kmのホームストレートも、その先は闇に吸い込まれていくようでした。昼間に走り慣れたコーナーも、夜は表情が一変。コースの記憶を頼りに、五感を研ぎ澄ませて走ります。


夜のサーキットって幻想的。とはいえ、マシンのイラスト、ほぼ見えてないですよね……。

私たちが走るST-5クラスは、もっとも速度の低いクラス。そのため、車両の後ろに緑色のLED(識別灯)を点けて走ります。フェラーリやメルセデスAMGなど、はるかに速い上位クラスのGT3マシンに、「速度差のあるクルマがいますよ」といち早く気づいてもらうための、いわば命綱です。バックミラーに迫る光を確かめながらの走りには、夜ならではの緊張感がありました。

24時間レースでは、各チームに新しいドライバーが加わります。822号車は、Aドライバーの私・塚本ナナミ、Bドライバーの川福健太選手に加え、惠木勇哉選手、前田貴行選手、奈良敬志選手、巳ノ瀬健太選手が、24時間のゴールへバトンをつなぎます。

夜のサーキットを走るレーシングカーは、見ているだけでも幻想的。本番はキャンプでのんびり過ごしながら、花火まで楽しめます。6月5〜7日、ぜひ富士スピードウェイへ。私たちは『We are ONE TEAM!』の合言葉で挑みます。応援、よろしくお願いします!