「天下一品の後釜ラーメン店」1年足らずで全店ガラガラ閉店へ…「質問すべてお断り」運営会社もダンマリ
「その件に関するお問い合わせは“上のほうから”すべてお断りするよう言われております」
「東京背脂黒醤油ラーメン」を謳ったラーメンチェーン「伍福軒」を運営する株式会社エムピーキッチンホールディングスの問い合わせ窓口担当者は、編集部の取材に対してきっぱりとこう言い放った――。
“その件”とはずばり、ここ1ヵ月あまりに判明した「伍福軒」の一斉閉店である。2025年7月にオープンした新進気鋭の同チェーンは、関東10店舗(渋谷店・新宿西口店・池袋西口店・目黒店・蒲田店・田町店・吉祥寺店・大船店・大宮東口店・川崎店)を展開していた。ところが、この6月15日をもって全店舗が消えることが決まっているのだ。
鳴り物入りで誕生した「伍福軒」は、なぜ1年にも満たないタイミングで閉店ラッシュを余儀なくされたのか。
大量閉店「天下一品」の“後釜”としてオープン
ことの始まりは2026年3月28日のこと。「伍福軒」の公式サイトのお知らせ欄にて、川崎店が3月27日をもって閉店することが通知された。この時はまだ余裕もあったのだろうか、〈なお伍福軒は下記店舗にて営業しております。お近くへお越しの際は、ぜひご利用ください。〉という文言と共に、営業中の9店舗が案内されていた。
ところが、そこから事態は急転する。4月22日、28日、5月15日と立て続けに〈○○店閉店のお知らせ〉という通知が投下されていく。当初あった案内文も消えてなくなり、最後の大船店閉店(6月15日予定)を伝えた後に更新はストップしている(5月25日時点)。
いち早くこの異変に気付いたのは、ラーメンビジネスに携わっている者や、ラーメンフリークたちだろう。素人からすれば「なぜチェーン店とはいえ、全国展開もしておらず、たった10店舗しかない店に興味を持つのだろう?」と不思議がるかもしれない。
実はこの「伍福軒」、界隈では有名な話だが、昨年6月末に大量閉店が報じられた「天下一品」の“後釜”としてオープンしたという、特殊な経緯があるのだ。
全国に200近い店舗を展開している「天下一品」は、大きくわけると「天一食品商事」いわゆる本部が運営する直営店と、フランチャイズ店とに分けることができる。ちなみに、グループ全体のうちフランチャイズ店は約9割を占めている。
昨年6月末に大量閉店「天下一品」も、このフランチャイズ店にあたり、その運営会社こそ冒頭に出てきたエムピーキッチンホールディングス(以下、エムピーキッチン)だった。そして、閉店となった10店舗の跡地にそのままオープンしたのが件の「伍福軒」というわけだ。
魁力屋による「買収」を機に…
かくして「伍福軒」はチェーン店として小規模ながら“天下一品の後釜ラーメン店”として2025年のオープン以来、注目を集めていたのである。
では、なぜそんな店が今回、全店閉店に追い込まれたのか。その理由を考察する前に、背景として「なぜエムピーキッチンは根強い人気を誇る『天下一品』の店舗を閉め、同じ場所で『伍福軒』として再スタートを決めたのか」を知る必要がある。ラーメン業界に詳しい外食コンサルタントが解説する。
「つけ麺チェーン『三田製麺所』なども運営しているエムピーキッチンですが、ここ数年は経営不振に陥っていました。そんな中、同社の買収案が持ち上がります。買収先は『京都北白川 ラーメン魁力屋』を運営する株式会社魁力屋です。
実際、昨年11月にM&Aが成立するのですが、その前にエムピーキッチンにはやるべきことがあった――それが『天下一品』を手放すことだったのです。ご存じの人もいるかと思いますが、『魁力屋』と『天下一品』はどちらも京都発祥、しかも本店が同府の一乗寺にあるラーメンチェーンであり、いわばライバル関係なのです。
傘下に入るにあたって、『天下一品』があっては示しがつかない。そこでM&Aが行われる直前となった6〜7月、業態転換という形で新ブランド『伍福軒』を急遽立ち上げたというわけです」
さまざまな思惑の下に生まれた「伍福軒」。近年、急速に勢力を拡大している「魁力屋」グループの資本力をもって、さらなる成長が期待されたわけだが……。簡単にそうは問屋がおろさないのが、ラーメン業界である。
閉店後、跡地には何ができるのか?
当初は「伍福軒」、また同じくエムピーキッチンが運営していた「三田製麺所」も、M&A後、店舗数を徐々に増やしていくのでは、という見方があった。ところが前者は何度も伝えているように全店閉店、後者も買収前に全国52店舗あったのが、今も50店舗(3月末時点)と横ばいのままで、新たな傘下1号店すら出てきていない状況だ。
この理由について、前出のコンサルタントは「株式会社魁力屋の直近の業績が、想定より悪化傾向にあることが関係しているのではないでしょうか」と分析する。
「5月14日に発表された2026年12月第1四半期(1〜3月)決算によれば、同社の連結経常利益は5600万円の赤字に転落しています。たしかに本決算は、M&Aに伴うのれん償却費が大きく影響していることは考慮されるべきですが“本業で稼ぐ力”の指標となる売上営業損益率が、前年同期7.1%から−0.3%へと大きく悪化している点は懸念材料です。
とはいえ、メイン業態である『魁力屋』単体の業績はそこまで悪くない。となると、せっかく買収した『伍福軒』や『三田製麺所』などエムピーキッチン系の業態が足を引っ張っていると言い換えることもできる。今回、『伍福軒』全店が閉店するということですが、おそらく『天下一品』の時と同様場所はそのまま、より業績の良い『魁力屋』へと業態転換を図るのではないかと予測できます」
気になる「伍福軒」の後釜について、冒頭とは別となるエムピーキッチンの担当者に話を聞くと「閉店後の跡地に何ができるかは、現時点では何も話せないが、目途が立てばリリースする予定はある」といった、“含み”のある様子だった。
本命の「魁力屋」か、対抗として同じグループの別業態か、はたまた“大穴”新業態で打って出るのか――。
【後編記事】『閉店ラッシュの伍福軒「やはり天下一品の代わりは荷が重かった」オープン直後から《低評価レビュー》目立った理由』につづく。
【つづきを読む】閉店ラッシュの伍福軒「やはり天下一品の代わりは荷が重かった」オープン直後から《低評価レビュー》目立った理由
