「優秀な人ほど先生にならない」教師を目指した真面目な女子大生→夢を捨てて“金髪ギャル”に大変身…東大院卒ギャル(26)が大学で気づいた“教育の残酷な真実”〉から続く

 偏差値30台から東京学芸大学を専攻首席で卒業し、東大の大学院で日本画を研究。その後、社会人1年目でギャルになった由女さん(26)。もともと美術の先生を目指していた彼女がギャルに目覚めた意外な理由から、教職をめぐる問題、また日本画の魅力についても聞いた。(全3回の3回目/1回目から読む)

【変わりすぎ!!】一流企業に入社→社会人1年目で“金髪ギャル”に大変身した由女さん26歳の“最新ショット”を見る


由女さん ©志水隆/文藝春秋

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就職して1年目にギャルデビューした“きっかけ”

――東大の大学院で修士課程を修了後、民間企業に就職されたそうですね。

由女さん(以降、由女) ドクターまで進んだらもっといろんな研究ができるのはわかっていたんですけど、28歳ぐらいまで学生として過ごすのが怖かったんですよね。

 研究室のエースの人がやっとストレートで博士課程を修了できるレベルなんで、私が行ったら何年もかかるだろうと思って、就職しました。ちなみに、先輩の落合陽一さんは飛び級して博士号をとったそうです。

――そして、就職して1年目にギャルデビューしたそうで。

由女 去年の1月になりました。というか、1回目の金髪ブリーチをしてギャルに舵切りをしたのがその時ですね。

――社会人1年目のタイミングでギャルになろうと思ったきっかけは?

由女 東大の院生だった時、今の会社にインターンで入ってたんですけど、めっちゃ環境が良かったんですね。アプリのデザインをする部署で、周りは女性社員ばっかりで。上司も素敵だったからいいなと思って入社したのに、いざ入ったらその部署ごとなくなっちゃって。

――ちなみに企業名をお聞きしていいですか。

由女 ◯◯◯(編注:誰もが知る大企業)です。

「心労が大きかった」社会人1年目でぶつかった壁

――一流企業ですね。

由女 自分はデザイナーとして働こうと思って入ったのに部署ごとなくなっちゃって、法人向けアプリの開発から進行まで全部やることになったんです。

 初のプロジェクトで法人相手の責任を全部背負うのは心労が大きかったし、自分がやりたいことなのかもわからなくなっちゃって、悩んでいました。

――社会人1年目で壁にぶつかったというか。

由女 それまでは壁にぶつかってもうまくやってきたけど、初めて舵取りに失敗した感じがしちゃって。

 この会社にい続けて自分が納得できる人生を歩めるのかと本当に悩んでいた時、TikTokで『nuts』のまぁみちゃんを見て、「これだ」と思ったんです。

「世の中にはこういう人がいるんだ」まぁみちゃんのSNSを見て衝撃を受けたワケ

――『nuts』は、ゼロ年代初期に刊行され、2020年にデジタルで復活したギャル雑誌ですよね。その専属モデルに憧れてギャルになろうと?

由女 『nuts』のまぁみちゃんを見て、こういう人生になりたかったなというか、「何で私はこれになれなかったんだろう」と思ったんですよ。

――『nuts』自体は読んでたんですか。

由女 まったく知らなくて。テレビもなかったし雑誌も全然読んだことがなかったので何も知らなかったんですけど、SNSで「ちゃおっすぽいーん」を見てまぁみちゃんに行き着いて、世の中にはこういう人がいるんだと、衝撃を受けました。

――“こういう人”とは……?

由女 なんかもう、“かわいい”がすべてじゃないですけど、“かわいい”が資本の人たちがいて、“人に愛される”という仕事があるんだと思ったんです。

――ちなみに東大にギャルはいましたか。

由女 自分の周りには一切いなかったですね。ギャルを維持するにはメンテが必要ですけど、そういう時間がないんですよ。

――勉強や研究が忙しくて?

由女 自分のいた研究室の学生は皆、「週刊連載の漫画家」って言われるような生活を送ってたんで、おしゃれとかそういう時間は一切なかったですね。

 一番忙しい時は、20時間研究と論文執筆して8時間寝て、また論文執筆20時間みたいな生活で。そうやって1日28時間とか30時間の生活を繰り返して、1週間が6日になるような感じだったんです。

ギャルの世界観への憧れから「1年間だけ頑張ってみよう」

――過酷ですね。

由女 3日連続レインボーのセーターを着続けている後輩を見て、「レインボー、ごめんな。何もしてやれなくて」と、心の中で謝ったのを覚えてます(笑)。

――昔からギャルに憧れはあったんですか?

由女 小さい時から不良とかギャルの世界観に憧れはあったんですけど、親から「勉強しろ」と厳しく言われていたので叶わず。グレたい気持ちもありましたしね。

 大学3年の時にへそピアスはあけたんですけど、ギャルになりきれなかったというのがあったんで、まぁみちゃんを見てすげえ思い悩んで。

 それで調べてみたら、『nuts』にはオーディションがあってド素人でも受けられたのと、年齢制限が25歳までで、ちょうど自分が25歳だったこともあり、1年間だけ頑張ってみようと思ったんです。

ギャル化をはじめて半年後に受けたオーディションの結果は?

――『nuts』モデルになるための“ギャル化”だったんですね。そのために手始めにしたことは?

由女 オーディションが「ミクチャ」という配信媒体で行われるんですけど、「ミクチャ」上の投げ銭の金額で最終面接に進めるかどうかが決まるシステムだったので、まずは「ミクチャ」でファンを増やして、自分を応援してくれる土壌を作ることからはじめました。

――戦略的にやっていったんですね。

由女 ギャル化をはじめて半年後にオーディションがあって、決勝では2位になったんですけど、最終面接で落ちました。

――最終面接がきっかけで事務所に所属されて、タレントとして活動されているんですよね。

マネージャー 事務所の事情を話すと、「『nuts』のオーディションにめちゃくちゃおもろそうな子が出てます」という話が上がってきて。

 で、『nuts』のオーディション結果がどうなったとしても、うちの事務所に所属してほしい、と要望をしてたんです。

『nuts』の撮影に参加して“悲しさ”を感じた理由

――憧れの『nuts』の撮影にも参加されたそうですが、モデルの方たちとコミュニケーションが難しいと感じることも?

由女 「今日は何で来たの?」って他のモデルの子に聞かれた時、「今日は補填です」って返したら、「ホテン?」ってなったことがあって。そういう時はちょっと悲しさはありますよね。

――悲しさですか。

由女 知らなかった頃には戻れないんだと。得た知識を捨てることはできないんで、上とか下じゃないんですけど、これは不可逆的なものなんで。

――今後もギャルとしてアップデートしていきたい?

由女 そうですね。整形もしたんですけど、自分は“かわいい”が資本の人ではないので、なりたいものになるためにはそういう手段も必要かなと思ってやりました。まあ、自分の頭の大きさを測ってみたらめっちゃ平均値だったんですけど、これはもうご愛嬌というか。

 そもそもあの濃いギャルメイクが似合うっていうのは、もとがいいんですよね。日本画も線画とか輪郭がきれいじゃないと、その上に美しいものを作っていくことはできないんです。

 だから自分も、その土台を今後も作っていきたいと思ってて。宇宙飛行士も羽生結弦も同じ人間のはずだから、頑張ったらなれるはずだ、みたいな。生まれ変わったらこうなりたいじゃなくて、生まれ変わる前になりたいんです(笑)。

「パーティに謎に呼ばれたり…」ギャル化に対する会社の“意外な反応”

――ギャルになってみて、会社での反応はどうですか。

由女 会社は熱烈な歓迎ですね。本当に喜ばれてますね。

――具体的にはどう喜んでくれてるんですか。

由女 上司が偉い人たちに、「うちの部下のギャルがプロダクトのデザインしてくれたんです」って、話してくれてます(笑)。あとは別部署が対応している企業のパーティに謎に呼ばれたりとかもありました。

 会社の皆が熱烈に受け入れてくれたことで、もうちょっとこの会社で頑張ってみようと思いましたね。

――逆にギャル化したことでネガティブなことはありましたか。

由女 あんまりないんですけど、サマーインターンに来た学生に通報されたことはありますね。こんなヤツが社員でいていいはずがない、みたいな(笑)。

――街なかでポートレート撮影をお願いされたりするそうですが、ギャルになってから声を掛けられやすくなった?

由女 逆ですね。声は掛けられなくなりました。「写真を撮りたい」みたいな人はいますけど、ナンパはなくなりましたね。

――ギャルになる前の方がナンパはされたと。

由女 そうですね。「このぐらいだったらイケるわ」ってなめられてたんじゃないですかね(笑)。ナンパの本質はたぶんそこだと思うんで。

――黒髪の方が嫌がらせや痴漢に遭いやすいというのはよく聞きます。

由女 たぶん、それです。ギャルになってから痴漢に遭わなくなったという話は他のギャルの子から聞いたこともあります。

やっぱりいつかは日本画を仕事にしたい

――ギャルになってからSNSでの反応は変わりましたか?

由女 美術界隈じゃない人で、私の絵画に共感してくれる人も現れ出して。

 ギャルになる前の学生時代もSNSに作品を出してたんですけど、コメントをくれるのは展示会に来てくれた人が中心だったんで、ちょっと道が開かれつつあるなって。

――閉じている日本画の世界を変えたいというのが、由女さんの問題意識でしたよね。

由女 そうですね。やっぱりいつかは日本画を仕事にしたいんですよ。日本の中で、“日本画”が存在してることをもっと知らしめることができたらうれしいなと。

 今は隠れてしまいがちですけど、自分は、日本人の感性とか美的な価値観に尊いものがあると思ってるんで。

――「ギャル」も今や日本文化になりつつありますよね。

由女 ギャルは歌舞伎のようなものだと思っていて、ハレとケの伝統に地続きな文化として、これからも賑わせていきたいです。

撮影=志水隆/文藝春秋

(小泉 なつみ)