ゴールを決めた後

写真拡大 (全7枚)

 西日本で初めて誕生したプロアイスホッケークラブ、スターズ神戸。2025-2026アジアリーグでは、1勝39敗、6チーム中最下位に終わった。ただし、平均年齢は25歳くらいと若く、他のチームが28歳前後であることを踏まえると、今後に伸びしろを感じさせるものだった。後編では、将来を見据えたチーム作りや、ファン、地域との関わりなどについて、クラブの代表、黒澤玲央氏に話を聞いた。

紺色のユニフォームがスターズ神戸 (2025年11月29日 栃木日光アイスバックス戦 尼崎スポーツの森)

「若いから弱いではなくて、若いから出るチャンスも多く、成長が見込めるチーム。だから、若い選手には(上を)目指してもらいたい。もちろん(将来は)事業規模を拡大して選手の報酬も上げて魅力あるチームにしていく」。黒澤氏はチームについてこのように語る。

 インタビューに同席したGK小野寺真己選手も「ほかのチームはベテランがいて、若手の出場機会が限られる場合もある。スターズ神戸は若い選手も試合にたくさん出て活躍して、思う存分プレーできる。年齢差もあまりないのでコミュニケーションも取りやすい。言いたいことは遠慮なく言いあえるチーム」と話す。

ホームゲーム最終節では情熱・強さ・大胆さを象徴する「STARS RED」の記念ユニフォームで臨んだ (2026年3月14日 尼崎スポーツの森)

 スターズ神戸と他チームとの大きな違いは、『若さ』だけでなく、選手が多国籍ということ。もちろん他チームにも外国籍の選手はいるが、スターズ神戸には日本、韓国、中国などの選手が所属。トレーニングや試合では、監督・コーチから英語の指示が飛ぶ。もちろん選手同士のコミュニケーションも英語が使われている。

 アイスホッケーの本場は、北米NHL(ナショナル・ホッケーリーグ)。「最高峰リーグを目指してほしい。そこで活躍するためにはホッケーの技術だけではなく語学力も必要」と考えた黒澤氏は、契約(入団)条件の1つに、TOEIC600点以上を掲げる。

「なるべくそういう選手しかとっていない。そうではない選手もいますが、まったく英語を話すことができなかった選手がチームに入り、上達している姿を見ると、やっている甲斐はある。また、韓国人選手が積極的に日本語を勉強する様子などもあった。そういったところで、コミュニケーションはうまくいっていた。細かいところを表現する難しさはあるが、お互い理解しようと向き合っているので、大きな壁になることは少なかった」という。

 またスターズ神戸ならではの特徴として、ホームでの試合が挙げられる。

 関西でアイスホッケーはどちらかというとマイナー競技。アジアリーグだけでなくアイスホッケー自体を初めて見る人も多かった。このため、試合での演出にも力を入れた。例えば、神戸の選手が反則を犯して一時退場となった際には「少し不安を感じさせるような音楽」を。SNSでは「(スターウォーズの)ダースベーダーの曲だ」と話題に上ったこともある。毎試合ではないが、選手入場の際には、地元の中学校や音楽隊による生演奏を取り入れた。「生演奏での選手入場はたぶん神戸だけだと思います」と黒澤氏。

ホームゲーム開幕戦 選手入場時の音楽は、西宮市の中学校・吹奏楽部による生演奏 (2026年11月1日 尼崎スポーツの森)

 そして応援も神戸ならではだという。スターズ神戸のホームゲームでは、開幕戦から小学生が先陣を切って「レッツゴー神戸!」と声を上げ、その輪は次第に広がり、シーズン終盤には大人も加わって公式応援団もできた。黒澤氏は「小学生が声を出して応援してくれるのがスターズ神戸のホームゲームの特徴。他のチームでは大人による応援団が存在しているので、子どもの声での応援はなかなかない」。

 その上で「1年を振り返ると固定のファンがついてくれたことが大きい。来場者としてはひとりだが、その人が友だちを連れてきてくれたりすると、何百人分かのような大きな価値につながる」と話す。

ゴールを決めた後

 チームにとってもファンにとっても初めてのシーズンが終わった。黒澤氏は次のシーズンに向けての動きに奔走している。「今シーズンは神戸での試合が2試合だけだった。多くの人に足を運んでもらい、『こんな面白いんだ!』と感じてもらえたと思う。来シーズン以降はもっとやっていきたい」と話し、ひとりでも多くの観客をホームに集めるための活動に全力を尽くす考えだ。「見たことがないからマイナーな競技と片づけられるのではなく、一度見たら魅力あるスポーツだと気づいてもらえると思っている。皆さん、見たことがないだけなんです。そんな人に足を運んでもらうのが大事」。そのためには地域のイベントなどにも積極的に参加し、クラブの認知度を高めていきたいと話した。

東北フリーブレイズ戦(2026年2月21日 尼崎スポーツの森)

「(イベントで)アイスホッケーのシュートにチャレンジしてもらうと、1打目は進まなくても、2打目で少し前に行った、3打目で目標に届いた、4打目や5打目でパックが少し浮いた……など、成長が1〜2分で感じられる。子どもたちにたくさん体験してほしいし、そこで興味を持って、競技を始めるきっかけになってくれればうれしい。まずは『おもしろいお兄ちゃんがいたな』と選手を覚えてもらい、『かっこいい選手がいたな』とお母さんたちにも応援してもらえれば(笑)。ホームゲームは、神戸も尼崎もリンクと観客席が近いので、顔まで見えますから!」と笑う。

GK小野寺真己選手(左)と スターズ神戸・代表取締役 黒澤玲央氏(右)

 もちろん、成績アップも目指す。成績を上げることは、アジアリーグを戦う上でも重要だ。

「(2025-2026シーズンに)1点差で敗れた試合が12試合あったことを考えると、2年目は5勝以上をまずは目指したい。それくらいレベルアップしなくてはならない」と話す。その上で「アイスホッケーはもちろん大事だが、人間性が豊かで、人として魅力ある選手が増えると、多くの人に応援してもらえると思う」と、メンバーのパーソナリティーにも着目しながら、次のシーズンのチーム編成を整えていくという。

 たかが1勝、されど1勝。その経験をバネに、神戸のファンとともに歩みを始めたプロアイスホッケークラブが2季目のシーズンでどのような飛躍を見せるのか、注目だ。