愛知・一宮『中華そばとチャーハントレーニングセンター』のチャーラーがなぜ完璧なのか。カギは「提供タイミング」にあった!
チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第62回も前回に引き続き、愛知県一宮市へ。愛知・岐阜・三重で店舗展開している人気チェーンによるトレーニングセンターのチャーラーです。
チャーラーは、同時に出てこそ完成する
チャーラーの優良店は、味もさることながら提供タイミングでわかると思っている。何度でも言おう。チャーラーとはチャーハンとラーメンのセットだが、ひとつの料理だからだ。
チャーハンまたはラーメンが先に出されて、それを食べ終わる頃に2品目が運ばれてくることも少なくはない。これではいくらおいしくても興ざめである。チャーハンとラーメンが同時に提供されることが理想だが、2品目は1分、遅くても2分以内には出してほしい。
店主がワンオペで切り盛りしている店にとってはハードルが高いかもしれないが、2人、3人とスタッフがいる店であればチームワークでカバーできるだろう。
2025年11月、愛知県一宮市にオープンした『中華そばとチャーハントレーニングセンター』は、その名の通り、チャーラーを作り、提供するという調理のオペレーションや接客、業者への発注業務など店舗運営を学ぶ場である。しかも、実際に客を入れて店舗として営業しているのだ。
運営しているのは、岐阜県岐阜市に本店を構え、愛知・岐阜・三重に店舗展開している『岐阜タンメン』。愛知県在住の筆者にとっては馴染み深いが、その名を初めて聞く人もいると思う。

「岐阜タンメン」(890円)。豊富に揃うトッピングと辛いタレで自分好みの味にカスタマイズできるのが魅力だ
名物の「岐阜タンメン」は、ニンニクの風味を効かせた塩ベースのスープに、炒めた白菜とキャベツ、豚肉をたっぷりとのせた1杯。「野菜増量」や「味玉」、「肉増量」など豊富に揃うトッピングや、丼中央にのる「辛いタレ」の調整で好みの味にカスタマイズできるのも人気の秘密だ。
筆者も何度か足を運んだことがあり、「岐阜タンメン」の味は言うまでもなく、スタッフの接客がとても心地よかったことが印象に残っている。

『中華そばとチャーハントレーニングセンター』外観。営業時間は11時〜15時(日・祝休)だが、いつも店の前には行列ができる
『中華そばとチャーハントレーニングセンター』に話を戻そう。店内に入ってすぐ券売機があり、その上に掲げられた「トレーニングセンターとは」と赤字で書かれた看板が目を引く。
「トレーニングセンターとは新人が調理や接客の基礎を学ぶための研修店舗です。通常店舗とは異なり、新人による営業のため不慣れな点もありますが、温かく見守ってくださるお客様への感謝を込めて、特別価格でご提供しています」とある。

店の壁に貼られた研修店舗であることが書かれた看板。店で奮闘する新人を応援したくなる
えっ、特別価格!? 券売機でメニューをチェックしてみると、なんと「中華そば」は400円! 半チャーハンが付く「半チャンセット」、つまりチャーラーにいたっては500円!
正直、安すぎる。ここまで下げて大丈夫なのかと心配になるレベルだ。
注文したのは、もちろん「半チャンセット」。食券を購入して店内へ入ると、元気なスタッフにカウンター席へ案内された。きっと、客の動きをしっかりとチェックしているのだろう。声かけのタイミングも完璧だ。

鶏ダシベースのスープで味わう「中華そば」。丼一面を覆う背脂がイイ仕事をしている
5分も経たないうちに中華そばが目の前に。そして、ほぼ同時に半チャーハンが運ばれた。これ、これっ! 求めていたのはこの時間差だ。完璧すぎる。これが新人の手によるものだというのだから、なおさら驚く。
500円でも妥協なし、むしろ完成度は高い
では、まず中華そばから味わってみることにしよう。
澄んだ醤油スープに、鶏ガラの旨みがじんわりと広がる。派手さはないが、飽きない味だ。表面に浮かぶ背脂がコクとほのかな甘みを補い、全体をまとめている。
麺はストレートで、するりと喉を通るタイプ。チャーシューやメンマといった具材も含め、いわゆる町中華の中華そばを丁寧に再現したような仕上がりだ。
中華そばの余韻を残しつつ、チャーハンにレンゲを入れる。はらりとほどける米粒は油でしっかりコーティングされているのに、重さは感じない。味付けはややしっかりめで、刻みネギやニンニクなどで作った香味油がアクセントになっている。これもまた、誰もが好きな町中華の味だ。

具材のカマボコが映える「半チャーハン」。提供はセットのみで、単品注文は不可
チャーハンは自動調理器、いわゆるロボシェフで調理をしている。新人でもベテランでも誰が作っても一定のクオリティを保つためだろう。それにはまったく異論はない。おいしければよいのだから。
ただ、ロボシェフは時間通りに仕上げてくれるが、提供するのは人。厨房内を見渡して、今やるべきことを瞬時に判断しているからこそ、絶妙なタイミングでチャーハンが提供されたのだ。
そして、中華そばと合わせて食べる。やはりこれがチャーラーの真骨頂。口の中に中華そばのスープの旨みを残しつつ、再びチャーハンへ。もうレンゲを持つ手が止まらない。気がつけば、あっという間に食べ終えていた。いやー、おいしかった!
この満足度で500円はやはり安すぎる。人件費を考えれば、決して余裕があるとは思えない。それでも続けるのは、ここで育った人たちが配属先の店舗を支えるからだろう。目先の利益ではなく、長い目で見た投資。その結果として、客は安く食べることができるし、店は人材を育成する。この500円は、ただ安いだけのチャーラーではない。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。
