木村草太「蟻川恒正先生の謝罪広告事件の評釈とは?」


法学者の蟻川恒正先生がかつて謝罪広告事件の評釈をしました。
5月12日の「武田砂鉄ラジオマガジン(文化放送)」では、東京都立大学教授で憲法学者の木村草太が評釈について語りました。
木村「私の知る名解説に蟻川恒正先生の謝罪広告事件の評釈があります。
これは何かというと、この事件は名誉棄損事件の加害者側に強制的に謝罪文を出させることが思想良心の自由という憲法上の自由の侵害にならないかということが問題となりました。最高裁は多数派の意見は『ごめん』と書いた文章を出させるだけで、本心では謝る必要はないから思想良心の自由は侵害されないと言いました。
最高裁としては上手いことかわしたと思っていたのでしょうけど、憲法学者としては思想良心の侵害ではないかと正面から反発し、いずれも一歩も引かない状況となったわけです。しかし、この最高裁の判決には個別の意見や反対意見がありましたが、去年、当時は見落とされていた意見に注目が集まりました。
入江俊郎という裁判官が強制して嫌々出す謝罪文というのは謝罪にならないだろうとツッコむ個別の意見を書いておりまして、最近になって蟻川先生が、その重要性を発見する評釈を書いたわけです。入江裁判官の言う通り、謝罪というのは心の底から言うから意味があるのであって、無理矢理『ごめんなさい』と書いた文章を公表させても謝罪とは受けとられません。最高裁は思想良心の自由という論点を避けようとして謝罪という行為そのものを台無しにしてしまったわけです」
