【中村 清志】ジワジワ勢力拡大「田所商店」ついに”山岡屋超え”達成…「令和の味噌ラーメンブーム」けん引、躍進の背景は
味噌ラーメン専門チェーン「麺場 田所商店」をご存じだろうか。同チェーンは数あるラーメンジャンルの中でも味噌に特化したラーメンを提供し、ファンを着実に獲得している。
日本の伝統調味料、味噌を使ったラーメンの定着は、1960年代後半から80年代前半ごろに発生した「札幌ラーメンブーム」にさかのぼる。この時にはチェーン店「どさん子」がブームをけん引、全国チェーンへと成長を遂げた。
そこからしばらくはやや下火にあったが、札幌の有名店「純連」や「すみれ」の系譜を継ぐ個人店の活躍、さらにYouTuber・HIKAKINが手がけたカップ麺『みそきん』の人気が爆発するなどして、再び業界内は味噌ラーメンブームに沸いている。
だが規模感で言えば、「田所商店」の貢献度はそれら以上かもしれない。なぜ同チェーンは全国さらに海外にまで店舗を展開するまでに至ったのか。商品から店舗戦略まで外食業界に詳しい中村コンサルタント代表・中村清志氏が解説する。
【前編記事】『「ネット民がザワつくラーメン店」田所商店が急成長…ファンを生む「二郎や家系との共通点」とは』よりつづく。
「商品すべてが味噌づくし」極端なスタイル
「麺場 田所商店」(以下、「田所商店」)は、こだわりの味噌を手間暇かけて仕込んだ本格スープと、それによく絡む太めの黄色いちぢれ麺が合わさった独自の味噌ラーメンを提供している。また、北海道・信州・江戸前など地域ごとに異なる味噌に対して、『味噌漬け炙りチャーシュー麺』や『肉ネギらーめん』など、豊富なバリエーションが用意されているのも特徴的だ。
サイドメニューにしても、『味噌チャーハン』に『味噌唐揚げ』、『味噌だれで食べる餃子』とすべて味噌づくし。これほど徹底的に味噌に焦点を絞ったラーメンチェーンは他にあるだろうか。この一連の“模倣困難性”こそが同チェーンの商品戦略と言えるだろう。
さて、気になる価格はどうだろうか(店舗によってメニュー表記がバラツキがあるため、「田所商店 武石本店」を参考とした。2026年4月調べ)。
特別なトッピングの無いベーシックな『北海道味噌 らーめん』が830円(税別、以下同)、そのほか信州味噌や九州味噌の『らーめん』も概ね800円台に収まっている。同チェーン不動の一番人気と言われる、香ばしく炙った厚切りチャーシューがドンとのった『北海道味噌 味噌漬け炙りチャーシュー麺』は1310円という値付けだ。
トッピング次第で値段は大きく変わるものの、総じて筆者としては、顧客のリピート率向上に向けて“お手ごろ感”を重視した価格設定と感じた。歯止めがかからない昨今の物価高を受けて、消費者の間でも「ラーメン1000円の壁」を許容する向きがあるが、その中で定番商品が1000円以下で食べられるのは、あくまでも顧客視点によるプライシングなのではないだろうか。
「山岡家」や「天下一品」をも超えて
店舗づくりに関しても、「田所商店」ならでのこだわりを随所に感じることができる。運営元である株式会社トライ・インターナショナルによれば、孫の代から親世代、祖父母世代と3世代にわたって支持される店づくりを徹底しているという。
ラーメン店といえば、どこか油っぽいイメージがまだ根強くある中で、「田所商店」の店内は清潔感があり、女性客やファミリーも快適に食事ができるように設計されている。座席にしても、カウンターとテーブル席のバランスが最適かされており、しっかり一人客需要も変わらず取り込んでいる点は評価したい。
こうした顧客満足度の高さも背景に、田所商店の店舗数はうなぎのぼりだ。関東88店舗を中心に、今年4・5月の出店(予定)も入れると国内194店舗を展開。さらに海外にもアメリカ7店舗を中心に10店舗を展開しており、その合計は202店舗にのぼる。
この規模感がどれほどのものかは、競合他社と比較すればわかりやすい。「田所商店」と同じく関東発祥のラーメンチェーン「山岡家」といえば、こちらは独自の豚骨醤油ラーメンを軸に、ガツンとクセのある味で熱狂的なファンを有する店だが、店舗数は国内198店舗となっている。
つまり、世間の知名度で言えば「山岡家」のほうが上かもしれないが、国内店舗数ではほぼイーブン、海外店舗も含めれば、すでに「田所商店」を上回っている形だ。他にも、こってりラーメンの代名詞「天下一品」(199店舗)や、近年積極的な出店戦略で店舗数を急伸する「魁力屋」(192店舗)をも超えつつある。
となると、次なる相手は「一番好きなラーメンのチェーン店」(LINEリサーチ調査)で1位に輝いたこともある人気チェーン「丸源ラーメン」(239店舗)か――いずれにせよ、群雄割拠のラーメン業界で「田所商店」がどこまで存在感を発揮できるのか、今後に期待したい。
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