5割超が喜怒哀楽をあえて出さない?感情ミュート社会「出さない方が楽」「最後に泣いたの覚えていない」

喜び、怒り、哀しみ、楽しみ…人は日々、様々な感情を抱きながら生きている。そんな中、現代で新常識として定着しつつあるのが「感情ミュート社会」。
【映像】感情ミュートの20代女性がお笑いライブを見ている様子(実際の映像)
感情ミュート社会とは、喜怒哀楽などの感情を、あえて他者に出さないようにする社会のこと。名付け親である、博報堂生活総合研究所の調査によると、過半数を超えるという。ハラスメントのリスク回避や効率重視が進む中、感情は出さないほうがいいという空気がある一方で、「人間らしさが失われるのでは?」といった懸念の声もあがっている。
感情を抑える人たちが増えることで、どのような社会になっていくのか。『ABEMA Prime』では、感情ミュート社会について当事者とともに考えた。
■「出さない方が楽」中学時代のいじめ、家庭環境からミュートを選択

実際に感情を出さないようにしているユイさん(20代)は、そのきっかけについて、「中学時代のいじめから、出さない方が楽だと気づいてからは出していない」。
さらに家庭環境にもきっかけがあったといい、「夫婦喧嘩が多い家庭だったので、(両親が)常にイライラしているので、自分が感情を出すと怒られるっていう環境だったので出さなくなった」と振り返る。
感情を抑えることで人間関係の悩みは減ったものの、デメリットも感じている。「ポジティブな面も伝わらなくなっているので、怖い人、冷たい人だと拒絶されちゃうのはマイナスだ。出さないようにしすぎて、出したいけれど出ないという感じになっている」と現在の心境を明かした。
1人でいるときも大笑いすることはなく、サプライズなども苦手だという。現在の状態については「変わりたい気持ちと、このままでいいという気持ちが半々だ」。最後に泣いたのはいつなのかと聞かれると、「もう覚えてない」と答えた。
■「心を通わせなくていい」身を守るための処世術

自身の身を守るための処世術として感情をミュートしている恵子さんは、感情を出さないことで「余計なことを言われなくなったり、仕事がしやすくなったりした」とメリットを感じている。一方で、デメリットは、「自身の感情がわからなくなり、体調の良し悪しがわからなくなる時もある」。
しかし人と心を通わせることについては、「感じなくていいと思っている。気づいたらそういう風になっていた」と語る。
ネガティブな感情があっても表には出さず、自分の子どもに対しても「出さない」と決めて接しているという。「自分は出さない方がいい。出そうとしていた時期もあったと思うが、今は自分がそういう性格になっている」と、あえて感情を抑える生き方を選択している。
■感情の出し方は多様であって良い

調査によると「感情ミュート」を実践する人は56%に上る。博報堂生活総合研究所の松井博代氏は背景にある3つの変化を説明した。1つ目は労働環境の変化だ。対人労働の増加により、負の感情が招く衝突や損失を避けることが、円滑な社会生活の処世術となっている。2つ目は人間関係の変化で、SNSの普及により可視化された「相手を傷つけるリスク」や「自身への批判」を回避する狙いがある。3つ目は効率思考だ。感情の表出に伴う心的労力や時間を「対話コストが高い」と捉え、省エネ化が進んでいる。
一方で、相手に対しては「気持ちを出してほしい」と望む人が6割を超えている。これについては「自分はリスクを取りたくないが、相手がどう思っているのかを探るのは大変なこと。素直に出してくれると嬉しい、という寂しさを感じている側面もあるのではないか」と推察した。
また、SNS上でスタンプやネットミームを用いて感情を表現する人が多い点について、「自分の言葉で言うと責任が重すぎるが、既存のフレームを使うことで責任が軽くなり、出しやすくなる。自分オリジナルの感情を対面で出すのは難しいが、テキストコミュニケーションではニュアンスを追加しやすい」との見方を示した。
ユイさんも対面では感情が出にくいものの「テキストや絵文字は使える」。そして今後の生き方については、「嬉しい、楽しいは出したい」「明日から1つずつ声に出していこうと思う」と前向きな姿勢を見せた。
松井氏は「感情の持ち方や扱い方、出し方はもっと多様であって良い。ユイさんのように、表に出ていないが感じていないわけではないのも1つの表現だ。面白ければ笑わなきゃいけないといった風にならない方がいい」とした。
(『ABEMA Prime』より)
