この宇宙は、投影された幻にすぎないのか…いま、もっとも信頼できる最新物理理論「ホログラフィー原理」が明かす、驚愕の真実

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物理学者たちが長年追い求め、そしていまだに未達成である「四つの力の統一」を説明できる可能性をもった、物理学の最新理論「ホログラフィー原理」。それは「重力が司っているこの世界は、じつは重力とは関係ない力とその力を受けて運動している物質からなるホログラムの像のようなものである」というもの。

量子力学よりもさらに不思議でつかみどころのない最新理論を、人気の物理学者である橋本幸士教授がわかりやすく解説した『ホログラフィー原理とはなにか』(講談社・ブルーバックス)が刊行されました。

この記事シリーズでは、本書の解説から、とくに興味深いトピックを厳選して、ご紹介していきます。

*本記事は、『ホログラフィー原理とはなにか 宇宙と素粒子を統一する最新理論』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

現代物理学が答えようとしている「究極の問い」

「空間はどうやってできているのか?」

こういった、哲学的にも読める「問い」に、人類は科学で答えようとしています。そんな時代に生きているみなさんや私は、幸運でしょう。

「モノは何からできているのか?」といった問いは、その起源を古代ギリシャや古代インドにまで遡(さかのぼ)ることができ、そして現代科学によるその最善の答えは、「現時点では17種類の素粒子からできていると確認されている」ということでした。

しかし、「モノ」が入る容器である「空間」そのものは、どうやってできているのか?好奇心に駆動される科学者が到達した究極の問いは、今、現代物理学によって、答えられようとしているのです。

このたび筆者が刊行した『ホログラフィー原理とはなにか』では、今世紀に入り大変多くの素粒子物理学者・宇宙物理学者たちがこぞって研究をしている、物理理論「ホログラフィー原理」について解説します。ホログラフィー原理とは、「空間はどうやってできているのか?」という問いへの答えを提供する、最新の理論物理学です。

物質と力、そして空間・時間は、「幻」

ホログラフィー原理(またの名を「ホログラフィック原理」もしくは専門的には「AdS/CFT対応」とも呼ばれています)とは、ホログラム写真のように宇宙ができている、という仮説です。ここでいう宇宙とは、この世界のすべて、つまり物質と力、そして空間・時間を表します。

ホログラム写真は、平面の写真なのに、立体的に浮き上がって見えますね。宇宙も、まるでホログラム写真のように、本当は2次元なのに、3次元的に立体的に見えている、という考え方が、ホログラフィー原理です。

空間は、ホログラムとしてできている、と考えるのです。これを「空間が創発する」と研究者は呼んでいます。一般の方向けに、よりくだけた言い方では、「宇宙は幻」ともいえるでしょう。

このような奇想天外な考え方が出てきたのは、じつは前世紀からの「物理学の宿題」に起源があります。

ミクロの物理学とマクロの物理学の矛盾

宿題は、ミクロの物理学とマクロの物理学を、お互いに矛盾がないようにする、というものでした。

ミクロの物理学とは、ハイゼンベルクとシュレーディンガーがおよそ1世紀前に創り上げた「量子力学」です。原子や原子核、素粒子のようなミクロの世界を支配する方程式として、完全に確立しており、そこからのズレを示す実験結果は今までいっさい、ありません。

一方でマクロの物理学とは、アインシュタインがこれまたおよそ1世紀前に創り上げた「一般相対性理論」です。太陽系、銀河系、そして宇宙全体のような、重力が支配するマクロの世界を支配する方程式として、完全に確立しています。同じく、ズレを示す実験結果は何一つありません。

しかしながら、これら二つの物理学の両方を取り扱うような状況を考えると、これらは矛盾していることが、計算により理論的に示されています。

マクロとミクロなんだから別に気にしなくてもいいじゃないか、とみなさんは考えるかもしれませんが、そうはいきません。なぜなら、宇宙は太古の昔にビッグバンから始まったことが知られており、つまり宇宙ははじめはミクロだったからです。宇宙の始まりを知るには、この前世紀からの宿題を解決せねばならないのです。

量子重力理論を完成させる理論

量子力学と一般相対性理論を統一する理論を「量子重力理論」と呼んでおり、これはまだ完成されていません。

ホログラフィー原理は、その宿題を解決できる仮説として、非常に多くの研究者が研究している考え方であり、量子重力理論の最も有望な候補です。宇宙が、そして空間が、まるでホログラムのようにできているーーホログラフィー仮説は、トホーフト、サスキンド、ホーキングやマルダセナ、といった理論物理学者たちによって創り上げられ、数学的にも大きな理論体系として整備されつつあります。

『ホログラフィー原理とはなにか』では、ホログラフィー原理とはなにか、なぜそれが宿題を解決するのか、そして空間が創発する仕組み、これらを説明します。

ホログラフィー原理は、まだ完成していない量子重力理論であるため、本書ではとくに、大学院で学ぶような物理学の最新の考え方をふんだんに用います。最新の物理学を知るためには、その土台を説明する必要があるからです。

なるべく噛み砕いて、その考え方を知ることができるように、解説を工夫しました。あなたが本書を読み終えるときには、最先端の物理学の現場でどのようなことが起こっているのかを感じられていることでしょう。

さあ、最新の物理学の旅に、出発しましょう!

では、さっそく「この世界は、何からできているのか」についての考察と、素粒子物理学の現時点における、その答えについての解説をお届けします。

ホログラフィー原理とはなにか 宇宙と素粒子を統一する最新理論

この宇宙は2次元から立ち上がるホログラムのようなものなのか。相対性理論、量子力学、超ひも理論のさらに先にある、新しい理論を、人気物理学者が、わかりやすく解説。

【続きをよむ】じつは、このからだは「たった5種類の素粒子」の集まり…人類数千年にわたる問い「この世は何からできているのか」…素粒子物理学の、「現時点での最新回答」がこちら