「議員定数1割削減」は小手先の議論にすぎない!「中選挙区制復活」をベースに抜本改革せよ

衆院議員定数1割削減を含む連立政権合意書を報道陣に示す自民党の高市早苗総裁(右)と日本維新の会の吉村洋文代表=2025年10月20日(写真:共同通信社)
自民党が圧勝した2月の衆院選後初の衆院選挙制度協議会が4月16日に開かれた。現行の議員定数465から約1割に当たる45削減で合意し、今国会での法案提出を目指す自民・維新に対し、比例代表の大幅削減を警戒する野党は反発を強める。だが、衆院選前は中選挙区制を視野に入れた抜本改革の議論が超党派で進んでいた。その中心人物だった福島伸享前衆院議員が経緯を振り返り、「小手先の議論」に警鐘を鳴らす。
得票率と乖離する小選挙区比例代表並立制の歪み
衆議院の選挙制度改革をめぐる議論は、今年2月の衆院選までは、歴史的な抜本改革へ向けた機運が盛り上がり、一定の結論を出し得るところまで機が熟しつつあった。
しかし、現行選挙制度の下で自民党が圧倒的な議席を得たことで同党内の声はしぼみ、日本維新の会に引きずられて定数削減だけを先行する小手先の議論になりそうな気配が漂っている。
ここで現行制度の問題点とこれまでの議論をあらためて整理し、なぜ抜本改革が必要なのか、私の考えを述べておきたい。
2月8日に行われた第51回衆議院議員選挙は、自民党が比例名簿を超える議席を他党に譲っても316議席と、全議席数の3分の2を超える圧勝となった。一方、比例区の絶対得票率(全有権者数に占める得票の割合)は20.37%、相対得票率(全投票者数に占める得票の割合)で見ても36.72%にすぎない。選挙区ベースでは確かに自民党の得票率は49.1%に及んだが、議席数はそれをはるかに上回る85.8%を得ている。
つまり自民党の圧勝は、現行の小選挙区比例代表並立制の選挙制度がもたらした結果であると言える。
小選挙区比例代表並立制は、リクルート事件を契機とした「平成の政治改革」において、政治腐敗の根源である「お金のかかる選挙」から政党本位・政策本位の選挙に転換し、政権交代が起こりうる政治を目指して導入された。
だが、導入から30年が経ち、得票率と乖離した極端な結果を生む現行制度が、むしろ日本政治の停滞と政治家の劣化を招き、弊害の方が大きくなっているのではないかと私は考えている。
無所属で出馬した今回と前回の選挙では、「令和の政治改革」として企業団体献金の廃止と並んで選挙制度の抜本改革を訴えてきた。2024年6月には、私自身が呼びかけ人となって「政治改革の柱として衆議院選挙制度の抜本改革を実現する超党派議員連盟」(以下「超党派議連」)を設立。衆議院の全政党・会派から共同代表が出て、解散前には総勢200名を超える規模となり、私は幹事長を務めた。
与党と野党が固定化、政治家の質は低下
超党派議連では、平成の政治改革に携わった政治家や学識者からのヒアリングを踏まえ、選挙制度について意見交換した。政党の利害が対立しやすいテーマながら、自民党から共産党まで本音で自由闊達な議論ができたのが特徴である。
2024年6月27日と11月22日には、当時の額賀福志郎衆院議長らに対し、全党・全会派からなる選挙制度協議会の設置を申し入れた。これは、2022年に1票の格差を是正する「10増10減」の公職選挙法改正を行った際の附帯決議で、選挙制度について「令和七年の国勢調査の結果が判明する時点を目途に具体的な結論を得るよう努力する」とされたことに基づく。

第1回の衆院選挙制度協議会。左から2人目が筆者の福島氏。1人おいて逢沢座長=2025年1月29日(筆者提供)
これを受けて、「衆議院選挙制度に関する協議会」(以下「協議会」)が設置され、選挙制度改革に長く携わってきた自民党の逢沢一郎議員が座長に就任。私自身も会派「有志の会」を代表してメンバーに入った。実質的な議論に入った25年2月13日の第2回会合で、私は「平成の政治改革の目的と効果の検証をやるべき」と述べた上で、二つの点を指摘した。
一点目は、「二大政党・政治勢力による政権選択を行えば、本当にいい政治になるのか」ということだ。
小選挙区比例代表並立制の下では自民党を中心とする与党が割れることはめったになく、一方の野党は細かい政策の違いで分裂していく。野党第一党は自民党批判票が自動的に入るため、その座に安住してしまう。野党第二党以下はその野党第一党を目指して、自民党とではなく野党第一党と争うため、制度導入の目的とは逆に与野党が固定化して政権交代を起こさせなくしているのではないか、と問題提起した。
二点目は、小選挙区制度になってよく言われる「政治家の質が低下した」問題だ。
政治家の作られ方、国のリーダーをどう生んでいくのかという観点から現行制度を検証しなければならない、と提起した。一票の格差是正や比例重複制度の見直しといった小手先の修正ではなく、小選挙区をベースとする現行制度そのものを改革する必要性を訴え、立憲民主党を除く多くの政党から賛同を得た。

「選挙制度と議員定数は一体のもの」と確認した2025年11月18日の協議会。左が筆者の福島氏(筆者提供)
「選挙制度改革なき定数削減」では意味なし
学識者ヒアリングなどを経た6月19日の協議会では、逢沢座長から「理想の選挙制度を追求する大きな議論と、現行制度をベースに個々の課題解決を検討する議論を並行して進めてはどうか」と提起があった。これにより、単なる区割りの見直し等の小手先の検討ではなく、小選挙区比例代表並立制そのものを見直す議論にまで及ぶことが明確になった。
だがその後、自民党総裁選で選挙制度改革を公約とし、超党派議連の顧問も務めた石破茂首相が退陣。10月21日に高市早苗政権が誕生する。
高市氏自身の選挙制度改革への考えは不明だったが、新たに連立を組んだ日本維新の会との連立合意書には、大きな話題となった衆議院定数の1割削減とともに、「小選挙区比例代表並立制の廃止や中選挙区制の導入なども含め検討」という項目が盛り込まれていた。
強気で定数削減法案の年内採決を主張する維新に対し、協議会の逢沢座長は〈身を切る改革、イコール議員定数削減ではない。(略)自民・維新でいきなり削減は論外です〉と自身のXに投稿し、選挙制度改革なき定数削減に否定的な立場を明確にした。11月18日の協議会でも「選挙制度と議員定数は一体であり、最終的には協議会で決める」と各党派が確認した。
こうした流れを受けて、超党派議連では具体的な選挙制度改革案を議論する機運が盛り上がってきた。平成の政治改革の中心となった佐々木毅・東大名誉教授の後継でもある谷口将紀・東大教授や中北浩爾・中央大教授からヒアリングを行うと、意外にも両先生の提案には共通点があり、理論上は中選挙区比例代表制がベストだとしながら、いくつかの具体案を提示してくれた。
特に谷口先生が提案した「都道府県別非拘束式比例代表制」は、目から鱗の優れた制度だった。
人口最小の鳥取県の定数を3として都道府県を単位とすることで、1票の格差を是正するための区割り変更が必要ない。比例代表制といっても非拘束式とすることで「党より人物」でも選ばれる事実上の都道府県単位の中選挙区制度であり、かつての中選挙区のような同じ政党内での足の引っ張り合いを少なくできるという。
政治改革の大きなうねりを予感させたが…
その後、12月5日の超党派議連では各党派から政党として正式に意思決定したものや私案も含めた具体的な選挙制度改革案を持ち寄ってディスカッションした。
自民党は中選挙区連記制を前提とした各都道府県の定数配分案。立憲民主党も中選挙区連記制の下での選挙区割り案。国民民主党は党として正式決定した中選挙区連記制案。公明党は谷口先生の提案した都道府県別非拘束式比例代表制。れいわ新選組も都道府県別非拘束式比例代表制。日本共産党からはブロック別比例代表制について説明があり、日本維新の会も中選挙区連記制を軸に検討しているとの発言があった。
これを見てもわかるように、各党会派の目指す選挙制度にそれほど大きな違いはない。腹を割って話せば中選挙区制を軸として合意が十分可能な範囲に収まっていると思われた。党派を超えた自由な本音の議論は、政治改革の大きなうねりを予感させるものであった。
ところが12月17日、いよいよ協議会で各党派が立場を表明することになると、流れがやや変わる。国会の正式な機関である協議会では、各党とも複雑な党内事情を反映して慎重にならざるを得ない。
自民党は議員アンケートの結果、「いずれの制度にも懸念や課題が併せて指摘され、慎重な検討が必要」と言い、立憲民主党は中選挙区制や連記制などの問題点を縷々指摘し、抜本的選挙制度改革に後ろ向きな姿勢を示す……といった具合だ。
自民大勝で逢沢座長は更迭、筆者も落選
私からはまず、現行の小選挙区比例代表制の問題を4点挙げた。
政党支持率が低くとも政権批判票が自動的に集まる「野党第一党ボーナス」の問題。野党第一党はそこに安住し、第二党以下は第一党を目指すことによって野党の分裂が常態化し、「永遠の与党」と「永遠の野党」という「ネオ55年体制」ともいうべき状況になっている。 価値観の多様化によって、世界的に二大政党や二大ブロックの選択という考え自体が時代にマッチしなくなっている。 比例重複立候補を可能にしたことで、政治家たちは大政党や人気政党に所属することを目指し、地元や国民よりも政党の方を向くようになった。自らの政治哲学や政治理念を語るのではなく、党の方針をコピーするだけの小粒な政治家が多くなっている。 現行のアダムズ方式に基づく一票の格差是正のための区割りを設定すると、地方の選挙区は減り続ける一方、都市部では区議会議員選挙より狭い選挙区が誕生するなど、同一の政治資金規正法や公職選挙法の下で政治活動を行うことは非合理になる。そして、これらの現行制度の弊害を踏まえれば、抜本改革を目指さざるを得ないと主張した。中選挙区制をベースに、単記制・連記制・比例代表制など複数の具体的な選挙制度を俎上に載せ、専門家の知見を交えながら、それぞれのメリット・デメリットを検討すれば、国勢調査の結果が出る今春までに一定の結論を出すことは十分に可能であると訴えた。
このように、今年に入って急転直下の衆院解散総選挙へなだれ込むまでは、平成の政治改革を超える抜本改革に向けて、丁寧に議論が積み上げられてきたのである。

国会内で開かれた、衆院の選挙制度のあり方を検討する与野党協議会=4月16日(写真:共同通信社)
ところが、衆院選での自民大勝を経て、新年度予算案の審議、緊迫するイラン情勢などで協議会の議論はストップ。協議会の逢沢座長は更迭され、超党派議連の中核メンバーの多くも、私を含めて議席を失った。2022年の附帯決議で一定の結論を出すとした、令和7年の国勢調査の結果が判明するのは、もうまもなくである。
このままでは「民主主義より権威主義の方が合理的」に
今や欧米をはじめとする世界中の民主国家で排外的ポピュリズムが台頭し、既存の政治的枠組みが崩れ、インターネットやAI技術の進展によって選挙の様子は一変し、民主政治そのものが揺らいでいる。
一昨年、私が政治改革特別委員会の調査団として訪問したイギリスやドイツの政治関係者はみな、このままでは民主政治より、ロシアや中国といった権威主義政治の方が統治には合理的だということになってしまうのではないか、と強い危機を持っていた。日本もその例外ではない。
こうした「西欧近代の行き詰まり」ともいうべき状況にあって、どのような政治体制を目指すべきか。平成の政治改革で目指した政権交代可能な二大政党制という目標は果たして今も有効なのか。国民の代表者をどう選び、リーダーとして選抜するのか。政治の本質に立ち返った選挙制度改革の議論が、今こそ求められている。
筆者:福島 伸享
