なぜ優秀な人ほど「すぐ否定する人」を信用しないのか
森七菜さん主演の映画『炎上』が、公開から連日満席で話題だ。歌舞伎町・トー横に集う若者を描いた本作で監督・脚本を務めるのは、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
天国から地獄へ
私は32歳のとき、10日間の有給休暇を使って『そうして私たちはプールに金魚を、』という映画を作りました。
自分が良いと思ったもののみを突き詰めたその作品で、なんとサンダンス映画祭でグランプリを受賞することができ、夢見心地で帰国しました。
どんどん国内での上映が決まり喜んでいたのですが、上映が始まると、すぐに目が覚めることになります。
シネフィル(映画通)のおじさま方から、こんな感想をたくさんいただいたのです。
「ただのMVだよ」
「こんなの映画じゃない」
ギギギギギ! 作っているときはある程度こういった感想が来ることは覚悟していたのですが、国際評価を経由していても、たくさんこの周辺の感想をいただくことになったのでした。
本気だからこそ、喰らってしまう
人はそれぞれ好みも評価軸も違いますから、賛否が出て当たり前です。
しかし作り手というものは繊細なので、やっぱり喰らっちゃいますよね。
全力で作ったものですから、そうであればあるほど、喰らっちゃうものなのです。
作るときに一番怖いのが、この観客から出る「否」の意見かもしれません。
もちろん、「否」の意見にも種類はさまざまです。一つひとつの意見に、参考になる、勉強になることは隠れています。
だから私はなるべくたくさんの人の感想を聞きたい。エゴサも全部したい。
フィルマークスで書かれたクチコミも全部読みます。喰らうけど! でも聞きます。読みます。
絶対に受け付けてはいけない種類の意見
でもひとつだけ、この手の「否」だけは受け付けてはならないというものがあります。
それは、先ほども書いたこの否定意見です。
「こんなの映画じゃない」
他の若い監督も、いや若い監督であればあるほどご年配の観客の方に、このような感想を言われることがあると聞きます。
これを枕詞として「映画とはこういうもの」ということを新人監督にレクチャーする感想が続くのです。
本当に! ありがたいありがたい! ありがたいお言葉! ありがとうございます!
もちろんありがたいご意見ではあるんですけど、作り手としては……。
無視しましょう! 無視無視!
あなたが、誰かのそんな言葉にダメージを受ける必要はありません。むしろ、
そんな浅はかなことを言ってくる人がいたら、思いっきり軽蔑したっていい!
私は強くそう思います。
それはその人が映画の懐の深さを信じていないことを証明しちゃってるわけですから。「どんまい!」と、心で言ってあげましょう。
そんな評論よりも、作り手が嘘なく作って「これは映画だ」と発表した作品のほうが尊いのです。
あなたが「これって映画なんじゃないか?」と思い、「これは映画です!」と宣言すれば、誰からも否定される筋合いなく「映画」であると言えるのです。映画は、最高なのです。
私は「映画の懐は海より深い」と信じています。これはただの自己肯定感の高さからの防衛反応ではありません。ちゃんとロジックがあってのことです。
