ヒグマ急増の春、出くわさないための準備と遭遇した時の対処法…札幌市街地で目撃情報
札幌市中央区の市街地で14日、クマの目撃情報があり、市は今年度初めてとなる痕跡調査を行った。
4月は、春の訪れとともにヒグマの目撃情報が増える時期。冬眠明けから繁殖期にかけての遭遇は特に危険で、注意が必要だ。出くわさないための準備と遭遇した時の対処法を、専門家に聞いた。(井上大輔)
札幌西署によると、14日午前5時45分頃、同市中央区宮の森にある病院の職員が、建物西側の山の斜面に、体長約2メートルのクマらしきものを目撃し、警備員を通して110番した。クマらしきものは病院から20メートルほどの山の斜面を北に向かって移動していったという。
市は、同日午前9時半から約1時間かけて、市職員ら9人態勢で痕跡調査を実施したが、クマの体毛や足跡、フンなどの痕跡は見つからなかった。
市環境共生担当課は「冬眠明けのクマが、山に出てくる時期になっている。山に入る時は十分に注意してほしい」と呼びかけた。
子連れには注意
道警によると、今年のクマ目撃に関する通報件数は、4月12日時点で105件。過去5年間の件数を月別でみると、約半数を4〜7月が占めており、4月から急増する傾向にある。
ヒグマの生態に詳しい北海道大学の下鶴倫人教授(野生動物学)によると、冬眠明けのクマは、少ないエサを求めて山を歩き回るため人に遭遇する機会が増える。5〜7月は繁殖期で親離れの季節でもあり、縄張り争いに敗れた若いクマが広範囲を移動することもある。若いクマは警戒心が薄く、人里に近付いてしまうケースも多いという。
また、「子連れのクマとの遭遇には、特に注意しなければならない」と下鶴教授は指摘する。繁殖期には、雄グマが母グマとつがうために子グマを殺そうとすることがある。そのため、雄を避けて母子で山の中を移動する場合があり、遭遇リスクが高まるという。
遭遇を避けるには
登山や山菜採りなどで、人が山に入る機会が増えることも、遭遇率を高める要因の一つだ。避けるためには「人間の存在をクマに知らせるのが一番大切」と下鶴教授は話す。
まずは、クマ鈴を身につけたり定期的に手をたたいたりして、音で居場所を伝える。草の動きや臭いなど、周囲の状況に気を配ることも大切だ。特に山菜採りの最中はかがんで作業することも多く、クマの接近に気付きにくいので注意したい。
また、ヒグマは冬の間に命を落としたエゾシカの死体を食べることがある。シカの死体があったり、肉が腐ったような異臭がしたら、すぐにその場を離れるように心がける。
遭遇したら
遭遇に備え、クマ撃退スプレーも携帯しておきたい。カバンの中ではなく、利き手側のベルトに取り付けるなどしてすぐ取り出せることが重要だ。
遭遇してしまったらどうすべきか。ヒグマは逃げるものを追う習性があり、時速50キロ以上で走ることができる。
知床財団の金川晃大さんは、「最もやってはいけないのは、背を向けて走って逃げること。目をそらさず、ゆっくりと後ずさりして距離を取るように」と呼びかける。立ち木や岩などの障害物を間に置くように後ずさると良いという。
ヒグマは、突進の途中で止まり、地面をたたくなどして後退する「威嚇突進行動」を取ることも多い。撃退スプレーを噴射する際は有効射程まで十分引きつけてから目と鼻をめがけて一気に噴射するようにする。
もし襲われたら、首の後ろで手を組んで首を守り、うつぶせになって顔と腹部を守る。
金川さんは「人間とヒグマが共生するためにも、正しい知識を身につけ、必要な準備を整えてほしい」と話した。
