コーヒーの実を摘むミドファームの道仙信也さん=和歌山県日高川町

 人口約8700人の和歌山県日高川町で、1人の移住者がコーヒー農園を開き、1月、初収穫を迎えた。看護師と兼業で農園を営む道仙信也さん(41)は「コーヒーを、梅やミカンのような和歌山を代表する特産品にしたい」と意気込む。(共同通信=寝占泰志)

 県中部に位置する日高川町。コーヒー農園「ミドファーム」の周囲には、ミカン畑や田んぼが広がる。約300ヘクタールのハウスには、コーヒーの中でも希少価値が高く、風味のバランスが良いとされるアラビカ種の代表的なティピカという品種の木が150本並ぶ。

 1月中旬、苗を植えてから2年目で初めて収穫することができた。赤黒く熟したコーヒーチェリーから取り出した種子がコーヒー豆となる。「純粋にうれしかった。喜びをかみしめながら収穫した」と笑顔を見せる。

 岡山県倉敷市出身の道仙さんは、大阪府で看護師として働いていたが、2021年、和歌山県出身の女性と結婚し移住を決意。夢だったコーヒー農園を開くことにした。

 農業の知識ゼロの状態で始め、知り合いからノウハウを学びながら2024年に開業。現在も看護師の仕事を夜勤で続けながら、農家の仕事もこなす。「看護師が患者の体調を観察するように、農家は植物の状態を観察する。二つの仕事には、共通したやりがいがある」と道仙さん。

 ミドファームでは、コーヒー豆を発酵させる過程で県工業技術センターが熊野古道の土壌で採取した酵母菌を使用し、“県産”としての特徴をアピールする。きっかけは、ある日訪れたカフェの店員との会話。「外国人観光客から『国産のコーヒーはないか』と尋ねられる」という話を聞き、国産コーヒーがインバウンド(訪日客)に需要があると考えた。

 試行錯誤の末、ほどよい苦みの豆ができたという。道仙さんは「雑味のない新鮮な味わいをぜひ体験してもらいたい」と願う。

 さらに「地域の人に支えられた分、この恩を返したい」と後進の支援や休耕地の再興にも励んでいる。

 ◎国産コーヒー豆

 国産コーヒー豆 日本で消費されるコーヒー豆の大半は輸入品が占める一方、豆の価格は高騰している。そんな中、国産に注目が集まっており、沖縄や小笠原諸島などで栽培されている。国産の実態を把握している沖縄コーヒー協会によると、5年ほど前から国産の栽培がブームになっており、2024年12月〜2025年2月には約8〜10トンが生産されたという。

看護師と兼業で農園を営む道仙信也さん=和歌山県日高川町

ミドファームで初収穫を迎えたコーヒーの実=和歌山県日高川町

和歌山県日高川町「ミドファーム」