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「何もしないから」と言われてホテルについていったが、半ば強引に性交渉する流れとなり、その後連絡が来なくなりました。法的手段をとれませんか? そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は「話がしたいだけ」という相手の言葉を信じてホテルについて行ったそうです。ところがホテルにつくと、相手から「強く押される」など半ば強引に求められ、交際することを前提として渋々性行為に応じたそうです。

しかし、その後相手は音信不通に。騙されたと感じた相談者は、相手に対して謝罪や慰謝料の請求などの法的手段を取りたいと考えているそうです。法的にはどう考えられるのでしょうか?

●刑事責任を問うのは基本的に難しい

令和5年(2023年)に改正された不同意性交等罪(刑法177条)は、「暴行・脅迫を受けた」「酩酊状態を利用された」「予想外の事態に直面させられて恐怖・驚愕した」「同意しない意思を全うするいとまがなかった」など、法で定められた一定の事情がある場合に成立します。

今回のケースでは、「強く押されて」とあるため、その意味が問題になります。

これが物理的な意味で「押され」たものであれば、程度によっては同条の暴行にあたる可能性もあります。ただし、同条の暴行は、反抗できなくなるほどの強さであることが求められるので、かなり強度のものである必要があります。

次に、説得や交渉という意味での「押され」たということであれば、予想外の事態に直面させられて驚愕したとか、同意しない意思を全うするいとまがなかったなどの評価ができるかが問題となります。

ただし、相談者の方は交際の約束を前提として、性行為自体には渋々ですが同意しています。具体的な事情にはよりますが、「交際の約束が嘘だった」としても、実務上は177条の要件のいずれにも当たらないと判断される可能性が高いと思われます。

●民事責任を問うことも難しいと考えられる

民事(損害賠償)についても、基本的には難しいと考えられます。

「既婚者が独身と偽って長期間交際した」などのケースでは、貞操権侵害として損害賠償が認められることがあります。しかし、そのようなケースでは、多くの場合、婚姻が前提になっているなどの事情があります。

今回のように、婚姻ではなく「交際する」という約束が前提の場合は、貞操権侵害による損害賠償請求が実際に認められたケースと比べると、請求は認められにくいといえます。

「性行為はしないと言われてホテルに行った」ことも問題となりますが、本件では、そうはいっても成人男女が二人でホテルに行くことに同意しています。

そのうえで、最終的に性交渉については了承しているそうですので、最初にこのように言われたということで刑事上、民事上の責任を追及することは難しいと考えられます。

●法的手段をとりたいなら弁護士に相談するのがおすすめ

このご相談では、「交際を前提」にしていたから性行為を了承した、という話と、「強く押された」から「渋々同意した(せざるを得なかった)」という話が出てくるのですが、両者は性交渉に対する同意のプロセスとしてかなり異質と思われ、それぞれの具体的な事情をより詳細に確認する必要があります。

ご相談の事情だけを前提にすると、一応性交渉について同意をしていることを踏まえると、刑事上、民事上の責任を追及することは厳しい事案といえますが、専門家により詳しく事情を確認してもらう必要があるでしょう。

具体的な事情によって結論が変わる可能性がありますので、法的手段をとりたいのであれば弁護士に相談することを強くおすすめする事案といえるでしょう。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)