「高額な定期代を払えるのか」…「本社移転」に産経新聞社員が漏らした本音
大手新聞社の本社が集まる東京・大手町エリア。五大紙の一角である産経新聞社も、国有地の払い下げを受けて以来、約70年にわたってこの地に踏みとどまってきた。丸ノ内線大手町駅の「サンケイ前」という副駅名は、同社の社員の誇りでもあったが、ついにその聖地から去ろうとしていることがわかった。
前編記事『産経新聞が大手町から「都落ち」の衝撃…移転先に決まった「意外な場所」』からつづく。
「会社は高額な定期代を払えるのか」
3月末には主要セクションの幹部が集められ、東京本社を品川シーサイドTSタワーへ移転させる方針が示された。
「時期については、2026年度末までに完了させるという話もあれば、2027年度末までに完了させるという話もあります。大手町に残れるのはデジタル部門の一部のみといわれています。まだ一般社員への正式発表はありませんが、一般社員への説明はないのかと不思議に思っている社員も多いです」(同社の中堅社員)
まさかの「本社移転」に、現場からは悲鳴が上がっている。別の社員が言う。
「『品川への移転』と聞いて山手線の品川駅周辺を想像した社員も多かったのですが、実態は臨海部にある再開発エリア。りんかい線の品川シーサイド駅から徒歩1分、京浜急行の青物横丁駅から徒歩8分という場所です。千葉や埼玉、都内西部に自宅がある社員にとって通勤負担は激増します。『会社は高額な運賃で知られるりんかい線の定期代を払えるのか。結局、近くにある京浜急行の青物横丁駅を使うことになるのではないか』という疑念まで出ています。
深夜業務後の帰宅に関する不安もあります。方面別にタクシーに相乗りして帰宅していますが、神田橋ICが近い大手町に比べて格段に不便になり、帰宅時間は大幅に遅くなることが予想されます。ネガティブな反応ばかりの中、『近くにイオンの旗艦店があるから、フードコートや惣菜コーナーで食費を節約できるじゃないか』といった自虐的な声が出ていることが、いまの会社の悲しい現実を物語っています」
この社員が最も恐れているのは、品川より遠方へ「異動」させられる可能性だ。
「TSタワーに用意されたフロア面積では全部署を収容できないため、一部の部署は千葉県浦安市の工業地帯にある印刷拠点『千鳥工場』へ飛ばされるのではないかと噂されています。最寄りの舞浜駅から歩くと30分とかかるといわれ、丸ノ内線の大手町駅からほぼ直結だったこれまでとは通勤の便利さが雲泥の差になる。誰が『島流し』にされるのか。戦々恐々としています」
「何ら決定した事実はない」
本社移転と並行して、同社が発行するサンケイスポーツの「休刊説」も取り沙汰されたという。
「スポーツ紙の低迷は一般紙よりも深刻です。同じグループの夕刊紙『夕刊フジ』は休刊し、ライバル紙の『東京中日スポーツ』は紙面発行を休止した。同様の運命を辿るのかと動揺が広がっていましたが、3月末の幹部向けの説明会では『サンケイスポーツの紙面発行は継続する』と明言されたと聞いています」(サンスポ関係者)
だが、現場に安堵の色はない。
「昨年、『リストラの鬼』との異名を持つ産経新聞政治部出身の幹部がサンスポの代表に就任しました。新たに、その幹部の右腕としてやり手の政治部出身の社員が、公営ギャンブルの予想などを行い、社内でも数少ないお金を生み出せる部署であるレース部に送り込まれました。当面は紙面発行を維持するにせよ、今後はドラスティックな人員削減が始まるのではないかと身構えています」(同前)
本社移転の事実関係について、産経新聞社に質問状を送ったところ、こう回答した。
「経営は常にあらゆる選択肢を排除せずに議論・判断していますが、移転を含め何ら決定した事実はなく、お答えすることはありません」
冒頭の中堅社員は、こう嘆く。
「年間6〜7%の勢いで部数が減り、WEBでのマネタイズも日経のような成功例には程遠い。読売や朝日のように経営の支えとなる不動産も持っていない。他紙が依然として大手町周辺に踏みとどまる中、産経だけが脱落していく。まさに『都落ち』です。
明るい話題がない一方で、大阪市内での売上は比較的堅調だと聞いています。結局、スリム化を続けて最後は発祥の地である大阪のブロック紙に戻るしかないのではないか。そんな声も漏れています」
五大紙の一角の「本社移転」は、新聞業界全体が直面する本格的な冬の時代の幕開けを物語っているのかもしれない。
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