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スムーズに株式投資を行うには、投資候補をあらかじめ絞っておくことが重要です。しかし、ネットやSNSで「儲かる」といわれた銘柄をなんとなく追いかけ、気づけば証券会社のお気に入りリストが100銘柄ほどに膨らんでいる……という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、中野稔彦氏の著書『株をやるなら逆指値』(フォレスト出版)より、リストに入れるべき「推し銘柄」とその理由についてみていきましょう。個人投資家の28歳会社員と著者の会話形式を交えて解説していきます。

〈登場人物紹介〉

【教わる人】藤 進太郎(とう・しんたろう)

会社員(28歳)。NISAは2年前に始めたけれど、日本株投資にもチャレンジしてみたいと思っている。ただし、資金がないので、30万円でスタート。失敗したくないと、中野株式スクールの門をたたいた。

【教える人】ナカノ先生

中野 稔彦(なかの・としひこ)先生。大和証券で資金運用、資金調達、子会社上場、M&Aなどあらゆる株式業務を担当。退職後は、個人投資家の育成に努めており、「株式投資は資金回収こそがミッション」をモットーに日々、生徒指導にあたっている。

証券会社のお気に入りリストは「推し銘柄」に厳選しよう

進太郎:リストにのせる銘柄の条件って、何でしょう? 私はどうしてもテーマ株とか「上がりそうに見えるもの」に気を取られてしまいます。

中野氏:私は「推し銘柄」と呼んでいますが、商売でいえば売れ筋の定番商品と同じ。よく売れて、大量の仕入れにも適応できる商品を指す。回転売買に向いているから、安定して利益を得られるんだ。

進太郎:「売買のしやすさ」で考えるんですね。

中野氏:そう。この銘柄は上がるか下がるか? ではなく、売買しやすいかどうか。株式市場における強さで考えるんだよ。

推し銘柄とは、株式市場で大量に売買しやすい銘柄を指します。具体的には、以下3つの条件を満たす銘柄です。

(1)1日の売買代金が最低5億円以上

(2)時価総額が1000億円以上

(3)発行済株式数が5000万株以上

1日の売買代金とは、株式市場において流動性の高さを示す指標です。要は出来高が多いため板が厚く、売買注文が成立しやすい銘柄のこと。1日の売買代金が最低でも5億円以上あるのが基準です。

(2)と(3)の時価総額と発行済株式数は、多額の資金投入に対応できるかどうかを示し、銘柄の規模感を表す指標でもあります。特に売買代金(出来高)の多さは極めて重要な基準となるため、必ずチェックするようにしてください。

では、なぜこれらの「流動性(売買のしやすさ)」や「規模感」が重要なのでしょうか。

一定規模の銘柄は、海外投資家に選ばれやすい

理由はシンプルで、流動性や規模感が一定以上ある銘柄は、海外投資家や機関投資家などの投資対象になるからです。

現在、日本の株式市場を牽引しているのは海外投資家で、彼らの資金規模は最低でも5000億〜1兆円規模。1銘柄につき、数十億〜100億円程度の資金を費やしていると推測されます。

だから、1日の売買代金が5億円以下で、発行済株式数が数百万程度の銘柄だと、彼らの資金投入で一気に株価が動いてしまう。かといって投資資金を5億円以下にすると、今度は投資効率が悪くなる。つまり、売買代金が5億円に満たない規模の銘柄は、どれだけ有望であっても海外投資家の投資対象にはなりえません。

「海外投資家の投資候補にならなくてもいいじゃないか。日本の投資家もいるんだから」と思うかもしれませんね。しかし、現在の日本株市場で中長期的に株価の上昇をもたらしているのは海外投資家です。

東証プライム売買シェアの「7割」が海外勢

実際に日本の株式市場の投資状況を見てみましょう。2024年度の東証プライム市場(現物株)の1日の平均売買代金は5兆円程度。このうち、およそ7割の売買を海外投資家が行っています。

[図表1]東証プライム市場の売買代金シェア(1日の平均売買代金5兆円程度) 出典:『株をやるなら逆指値』(フォレスト出版)より抜粋

日本の個人投資家の売買のうち信用取引が7割を占めています。長期投資ができない構造です。そのため個人投資家主体の銘柄の相場も持続力が乏しいのです。

一方、中小規模な銘柄が揃うスタンダード市場やグロース市場の売買は日本の個人投資家が半数を占めています。ただし、この「個人投資家」の7割は信用取引トレーダーである点に注意が必要です。

[図表2]東証スタンダード市場の売買代金シェア(1日の平均売買代金2000億円程度) 出典:『株をやるなら逆指値』(フォレスト出版)より抜粋

[図表3]東証グロース市場の売買代金シェア(1日の平均売買代金1800億円程度) 出典:『株をやるなら逆指値』(フォレスト出版)より抜粋

総裁選の最中に高騰した「助川電気工業」が“短命”だったワケ

多くの信用取引トレーダーは短期間での利益を狙うため、平均的な保有期間はだいたい1週間。したがって、信用取引トレーダーが大量に購入して一時的に株価が跳ね上がったとしても、そういう銘柄の上昇は長続きしません。

たとえば、2025年10月の総裁選の最中に、大きく高騰した助川電気工業(7711)というスタンダード銘柄があります。高市現首相は政策で核融合炉の早期実装を目指すとしていたため、首相選出が濃厚になったタイミングでこの助川電気工業の株が一気に高騰。売買代金も一時は10億円以上に及んでいました。

しかし、助川電気工業の時価総額は366億円で、発行済株式数は587万株(いずれも2025年11月21日時点)。株主構成を見るとほとんどが個人投資家で、海外投資家が投資できる規模ではなかったため、私は「すぐに下がるだろう」と予想。案の定、株価高騰は長く続かずにすぐ下がりました。

グロース銘柄やスタンダード銘柄の買い手の半数を占める信用取引トレーダーは、「買ってすぐに売る人」たちなので、このような現象がよく起こります。そう考えると、スタンダード市場やグロース市場で積極的に売買される銘柄があったとしても、中長期にわたり株価を維持するのは難しい、と考えるのが自然です。

一方で、海外投資家の大半は機関投資家です。購入した銘柄は中長期にわたり保有し、投資対象として有望と判断したら、さらに追加で大量の資金を投入します。結局のところ、相場にうねりをもたらし、株価の大きな上昇トレンドを支えているのはこうした海外投資家なのです。

店頭に並べる商品を考える時、もっとも需要のある商品から仕入れるのは商売の基本といえます。株式投資も同じで、買い手(投資家)のボリュームゾーンを占める「海外投資家」に需要がある銘柄から仕入れておくのは、基本中の基本と言えるでしょう。

中野 稔彦

橋本-investment

代表取締役