高橋成美

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フィギュア解説

 3月16日放送の「しゃべくり007」(日本テレビ系)に、元フィギュアスケート選手の高橋成美(34)が出演したことが話題になっている。元スピードスケート選手の高木菜那と共にゲストとして登場した彼女は、生まれてから一度も彼氏がいないことを話したりして、自身の恋愛事情についてもあっけらかんと告白していた。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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【写真】独自カット…天真爛漫な“ポーズ”を決める高橋成美さん

 高橋が大きく注目されるきっかけになったのはミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート中継である。元ペア日本代表としての競技経験を持つ彼女は、今大会で「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一組の演技を伝える解説者として注目を集め、その熱量の高い語り口や、競技の魅力を身体感覚ごと視聴者に伝える言葉が評判になった。

高橋成美

 その反響はスポーツ中継の枠内にとどまらず、その後は多くのバラエティ番組にも出るようになった。解説者として一時的に話題になっていたという段階を超えて、テレビタレントとして活躍の場をどんどん広げている。

 高橋成美はソチ五輪日本代表であり、2012年の世界選手権では日本ペア史上初となる銅メダルを獲得した。日本のフィギュア界は長く男女シングル中心に語られてきたが、その中でペアというマイナー領域の最前線を切り開いてきた先駆者である。

 現在は松竹芸能に所属し、慶應義塾大学総合政策学部卒で7か国語を操るという知的なバックボーンも持っている。アスリートや解説者としても実績がある上に、タレントとしても魅力的な人物なのだ。

 しかも、彼女の強みはハイスペックな肩書を感じさせない明るいキャラクターにある。メディアに出ると7か国語を学んできたことや、名門校出身であることが紹介され、視聴者はそのことに驚かされる。しかし、彼女はそこで「賢い人」として振る舞って、視聴者の手の届かない存在になるようなことはない。

 むしろ、小柄でエネルギッシュな身体性、リアクションの大きさ、ストレートな感情の出し方などを発揮して、厳しい勝負の世界に身を置いていたアスリートとは思えないほど、温かく柔らかい雰囲気をかもし出す。そこに多くの視聴者が魅了されている。

マルチな能力

 今のテレビでは、1つのジャンルに特化している専門家だからといって、次々に仕事が舞い込むわけではない。ワイドショー、情報番組、クイズ、トーク、バラエティの垣根がなくなり、それぞれが地続きになっている現在では、専門性を持ちながらも、場の空気を壊さず、必要に応じてイジられたり笑いを取ったりもできる人が重宝される傾向にある。

 その点、高橋は専門家としてフィギュアの話をすることができる一方で、常にテンションが高く、明るく、バラエティ系の企画にも前向きに取り組める。知識が豊富でクイズ番組などにも適応できる上に、体力勝負のロケ番組にも向いている。幅広い分野のバラエティ番組に適応できるマルチな能力を持っているのだ。

 高橋成美のタレントとしての本質は「元アスリート」でも「インテリ」でも「天然キャラ」でもない。それらを全部含んだ「サービス精神の強い表現者」であるところに価値がある。

 高橋成美が多くの番組に求められている理由は、単に直近の五輪で解説者として話題になったからではない。それは単なるきっかけに過ぎず、それ以前からバラエティの仕事は少しずつ増えていた。彼女が求められているポイントは、専門性の高さ、言語感覚、知性、感情表現、リアクションの良さ、そして少し不器用で愛嬌のある人柄が高密度に同居していることにある。

 いくつかの顔を持っていて、番組や企画の性質に合わせてキャラクターを微調整できるのも、タレントとしては強みになる。彼女はアスリート系タレントの新星として、すでにブレーク寸前の状態にあると言えるだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部