なぜ テバ はアスリートと靴を作るのか。エンゲージメントを150%高める秘訣

記事のポイント
テバはアスリートと協力し実地テストを通じた製品開発プログラムであるTBAを推進している
開発過程をSNSで発信することでブランドへの関心を高めエンゲージメントの大幅増に成功した
極限環境のフィードバックからマス向け製品を作りアウトドア分野での存在感確立をめざしている
テバはアスリートと協力し実地テストを通じた製品開発プログラムであるTBAを推進している
開発過程をSNSで発信することでブランドへの関心を高めエンゲージメントの大幅増に成功した
極限環境のフィードバックからマス向け製品を作りアウトドア分野での存在感確立をめざしている
マラソンおよびウルトラマラソンランナーのマイケル・ワーディアン選手は、大半の人が想像もつかない形で2026年の幕を開けた。7日間で7大陸7つのマラソンを走破したのだ。一方、同じアスリート仲間でトレイル/マウンテンランナーのエリン・トン選手は、南北アメリカ大陸最高峰のアコンガクアで、新たなスピード登頂記録を樹立した。2人に共通するのは、どちらもテバ(Teva)のシューズを履いて成し遂げた点だ。
製品開発の全工程にアスリートを巻き込むテバの新プログラム
ワーディアン選手とトン選手は、「テバ:ビューロー・オブ・アドベンチャー(Teva’s Bureau of Adventure:以下、TBA)」プログラムに参加するアスリート7人のうちの2人だ。これはテバのトレイル用およびハイブリッド型のシューズ開発にあたり、店頭に並ぶ前にアスリートたちが実地テストを実施し、製品作りにも関与する取り組みだ。テバがアスリートに試作品を送り、アスリートがフィードバックし、テバが改良を加える工程を繰り返す。アスリートはその過程でSNSに進行状況を記録し、ブランドへの関心を高める。テバは今秋にもアスリートデザインによる新たなTBAのシューズを発売する準備を進めており、2027年にはさらなる発売計画もある。
2025年に始まったTBAは、テバが長年アスリートと協力関係を培ってきた歴史に根差した取り組みだ。同社は1980年代から、ラフティングをする人やランナーに依頼して、シューズを実際の環境に持ち出してもらい、天候や反復使用に対する耐久性の検証を依頼してきた。TBAはこうした取り組みの進化版であり、開発の初期段階や最終段階だけでなく、途中の各段階でも知見を得る狙いだ。テバには、各チェックポイントにアスリートを関与させることで、より高品質な製品につながるとの期待がある。
ホカの圧倒的な成功に続くべく原点回帰を図るテバの戦略
TBAのおかげで、テバとアスリートのコラボレーションは、「より早い段階から始まり、より長く続くようになった」と、同社先進コンセプトおよびイノベーション担当ディレクターを務めるザック・パリス氏はModern Retailに語り、さらに同氏は「現在進行中の作業が、2030年頃に出る製品に影響を与えるだろう」と付け加えた。TBAを通じて設計された製品は、TBAとの関連性を持たせてマーケティングを行うが、TBA自体はテバのサブブランドではない。トン選手によれば、TBAのアスリートたちは、マス市場に応用できるあらゆるシューズの技術もテストしている。
テバは、ビーチサンダルに面ファスナーを貼り付けたラフティングリバーガイドの工夫が出発点だ。2024年に40周年を迎えた同社は現在、ベテランアスリートも初心者も同様に耐久性のある製品を求めていることを踏まえ、市場シェア拡大の期待をTBAに賭けている。テバでグローバルゼネラルマネージャーを務めるリー・コックス氏はModern Retailの取材に応え、TBAがアウトドア分野におけるテバの存在感確立に「間違いなく貢献している」とし、「トレイルと水辺が私たちの最優先分野であり(中略)ブランドを体験してもらえる製品づくりをしたい」と語った。
テバは親会社デッカーズ(Deckers)傘下のブランドのひとつだ。姉妹ブランドのホカ(Hoka)とアグ(Ugg)を合わせると、デッカーズの会計年度2026年第3四半期売上の98%を占めた。しかし常にそうだったわけではない。
デッカーズは2002年にテバを6200万ドルで買収し、10年でマウンテンバイクやロッククライミングなどのアクティビティ向け製品で支持を広げた。2002年には、テバが米国マウンテンランニングチームの冠スポンサーとなり、同年から2012年にかけ、米コロラド州ベイルで開催される「テバ・マウンテンゲームズ(Teva Mountain Games)」のスポンサーも務めた。
2012年、デッカーズはホカを買収した。報道によれば買収額は110万ドルだ。当時ホカの売上高はおよそ300万ドルだった。コックス氏は、その後デッカーズがホカに「全力投球」し、大きな成功を収めたと語る。なお同氏はかつて、ホカでグローバルマーケティングおよびセールス担当バイスプレジデントを務めていた。ホカは会計年度2025年に、売上高22億ドルを達成した。一方テバは、まだ同様の爆発的成長を遂げるに至っていない。
現場のリアルな声が製品の信頼性と真正性を底上げする
「『テバが本当にアドベンチャーブランドだった頃に戻そう』と我々は決めた」とコックス氏は語り、「1984年当時は『冒険』をテーマにし、急流での課題解決が中心だった。(中略)デッカーズとしての目標は、最終的にテバブランドが持つ潜在力を最大限に引き出すことだ。それはエンドユース向けの製品作りから始まる」と付け加えた。
投資銀行ニーダム・アンド・カンパニー(Needham & Company)でデッカーズを担当するシニアアナリストのトム・ニキック氏は、年末までにテバがデッカーズの売上高の2〜3%を占めると予測する。同氏がModern Retailに語ったところによれば、TBAのような取り組みは、「即効性はないが、やがて大きな潮流となる」。さらにニキック氏は、ホカにまだ伸びしろがあるものの、数年前のように前年比50%の成長を見せているわけではなく、「そのことが親会社にとって、テバにもっと目を向ける余地が生まれるかもしれない」と指摘した。
こうした成長戦略のカギとなるのが、アスリートからのフィードバックだ。ワーディアン選手とトン選手、そして他のTBAアスリートたち5人は、遠征先から電話したり、時には直接会ったりなどして、ストラップの長さからフィット感まで、あらゆる点について知見を提供する。靴ずれができれば報告し、ソールの溝についても要望を出す。「舗装路、トレイル、山で確実に機能すると分かっている形に製品を作り込める」とトン選手は語る。
2025年のこと、ワーディアン選手が100マイル(約160km)の耐久レース「ハードロック(Hardrock)」を走るさなか、現地にいたテバ幹部にストラップが長すぎると伝えた。「テバ関係者のひとりがストラップを切り、フランケンシュタインのように組み直してくれた」とワーディアン選手は振り返る。「フィードバックを大切にするブランドは多いが、実際に調整を行い、より良いやり方を模索するブランドがあるのは、ひとりのアスリートとして実に大きな肯定感を覚える」。
そうした点について、テバ自身にとっても好ましいことだと、調査会社サカーナ(Circana)のフットウエアアナリストであるゴールドスタイン氏は指摘する。アスリートをデザインに関与させることは「製品開発の強化にとどまらず、ブランドの信頼性と真正性も高める」と同氏はModern Retailに語った。ニキック氏も、極限環境のアスリートにテストしてもらうのは、テバにとって「完全に理にかなう」とし、「製品がピラミッドの頂点のニーズを満たせるなら、ほかもすべてうまくいくはずだ」と説明した。
真面目に不真面目な取り組みが生むSNSでの圧倒的なエンゲージメント
とはいえテバとしては、TBAアスリートたちが記録を打ち立て、極寒に耐えている一方で、楽しさの感覚を失いたくないと同社幹部らは強調した。実際、「Bureau of Adventure」という名称は、モンティ・パイソンのエピソード「バカ歩き省(The Ministry of Silly Walks)」から着想を得たものだ。テバのパリス氏によれば、TBAとは「真面目に不真面目」なプログラムであり、アスリートは競技で勝利する以外に、あらゆる場所に出て行っても良い。また、トン選手のハイヒール型トレイルシューズや、ワーディアン選手の「スパークルポニー」仕様のアベントレイルシューズのように、アスリートは特注シューズをリクエストできる。コックス氏は「時に収益のことは気にせず、ただかっこいいものを作りたいだけのこともある」と語った。
トン選手とワーディアン選手は、それぞれ特注シューズについての動画や、ワシントン記念塔の周りを走るなどのテバ製品で行った数々の活動をSNSで発信してきた。これはテバにとって成果につながっており、2025年第1四半期は、テバのSNS総エンゲージメントの74%が、TBA主導のストーリーテリングによるものだった。テバにおいてアスリート投稿は、非アスリート投稿と比べてインタラクションが150%多かった。
テバ幹部らは「長期的な関係とパートナーシップを築く」ことをめざし、TBAプログラム拡大の意向を示した。パリス氏は「毎年チーム全体を総入れ替えするのではない」として、「築き上げる過程で、コアとなる仲間を少しずつ加えていく」と説明した。
当面テバがめざすのは、「壮大な『冒険』のための、最高の製品を作ること」だとコックス氏は述べ、「テバに30年間在籍してきた人たちが口にするのは、『ここでやりたかったことが、ようやくできる』。だからこそTBAは重要なのだ」と語った。
[原文:Brands Briefing: Teva’s athletes are testing products in extreme conditions, on all continents]
Julia Waldow(翻訳:竹内杭/ガリレオ、編集:京岡栄作)
