【LFWレポート】金高騰でも売れるロンドン発 ジュエリー 。その秘密は「制作過程」にあった

記事のポイント 金と銀の価格高騰が続くなか、ロンドン発ジュエリーブランドの需要は落ちず、ゴールド製品の購入が増えた。 制作工程を可視化する展示手法が、価格の正当性を補強し、クラフトの価値を再評価させる戦略として機能する。 ロンドンは国際ブランドの進出も相次ぎ、ジュエリーハブとして存在感を高めながら市場拡大が続く。
過去1年間で金と銀の価格が大きく変動するなか、インディペンデント系ジュエラーは価格設定、利益率、メッセージングの迅速な判断を迫られてきた。そしてロンドン・ファッション・ウィーク(以下LFW)を活用して彼らは、誰もが欲しがるスタイルを披露し、業界の価値と安定性をアピールした。ウーズ、値上げでも購買意欲は衰えず
創業5年のジュエリーブランド、ウーズ(The Ouze)の創業者、トビー・バーノン氏は、「素材価格の変化後も自社製品への需要は鈍らなかった。むしろ、価値設定の精度を高めている」と語った。ウーズは、スターリングシルバー、9金、18金のリング、ペンダント、イヤリング、オーダーメイドの婚約指輪を制作しており、ダイヤモンドや原石のサファイアの使用も多い。シルバーの定番スタイルは通常250〜400ドル(約3万7500円〜6万円)から、ゴールドリングは重量や石により900〜3000ドル(約13万5000円〜45万円)の価格帯で展開する。オーダーメイドの婚約指輪は、素材に応じてもっと高額にもなる。金価格の最初の急騰に関して、「直面した問題は、仕入れの請求額が上がり、利益が昨年を下回ったことだ。最近の原材料の価格を反映させるため、1月のコレクションで値上げしたばかり」とバーノン氏は述べた。「買い時」を問う顧客心理と駆け込み需要
顧客は価格調整を予想していた。「『今が買い時か?』と尋ねる人が多かった」と同氏は語る。「ジュエリーの価格がニュースの見出しになり、大手メディアでの掲載も少しプラスに働いた」。同社は、スクラップメタルを持ち込んだ買い物客に対して割引を提供しており、顧客を呼び込むと同時に、現在切迫している利益率のキープにもつながった。顧客はさらなる価格上昇を懸念し、実際には過去のシーズンよりもゴールドジュエリーの購入が増加した。LFWで打ち出した「プロセス重視」のコレクション
同社は、LFW期間中にコレクション「ザ・プロセス・イズ・ザ・ポイント(The Process Is the Point)」を発表した。「われわれはこれらのプレゼンテーションを、単なる展示ではなくインスタレーション(空間芸術)のように扱い、あとからジュエリーが続く形をとる」とバーノン氏は語る。「完成品だけでなく、ジュエリー制作のプロセスを見せたかった」。制作過程の可視化が「価格の正当性」を補強
完成品は、ワックス模型や制作途中と思われるパーツと共に展示された。「ジュエリーは10回ほど溶かし、数回磨いてようやく完成する」と同氏は語る。「しかし完成に至るまでには、実験や失敗、サンプル制作など、たくさんの過程がある」。金のグラム単価が市場にあるなかで、こうした透明性が、なぜその作品にこの価格がつくのかを改めて補強する。バーノン氏はジュエリー制作を音楽にたとえて、演奏の前に何時間も準備する点と同じだと述べた。ショースペースには楽譜が掛けられ、両者のプロセスの類似性が表現された。
LFWで披露されたウーズのインスタレーション形式のプレゼンテーション
ロンドンのジュエリー業界全体が公式スケジュールで存在感を拡大
ロンドンのジュエリー業界全体も、ウーズと同様にLFWの注目の的となる。グッドエッグス・エージェンシー(Good Eggs Agency)の共同創業者、アイダ・ピーターソン氏は、この勢いはここ数年で築かれてきたと語る。「英国のジュエリーシーンは、しばらく前から静かに成長を続けてきた」と同氏は述べる。「この1年、LFWの公式スケジュールに、ジュエリーカテゴリーと非常に才能豊かなデザイナーたちが登場する、ショーとプレゼンテーションの両方が加わり、より中心的な役割を担うようになったのは喜ばしい」。注目ブランドの台頭とコラボレーション戦略
スケジュールに名を連ねたほかのジュエリーブランドには、オクティ(Octi)、サマンサ・スー(Samantha Siu)、コンプリーテッドワークス(Completedworks)がある。一方、彫刻的なイヤリングやゴールドヴェルメイユ、通常300〜1500ドル(約4万5000円〜22万5000円)の高級な金製品で知られるコンプリーテッドワークスは、今回特に注目度の高いプレゼンテーションのひとつを行った。そこで女優のジェマイマ・カークはショーのパフォーマンスで注目を集めた。またコンプリーテッドワークスは、LFW期間中、ノブ・ホテル・ロンドン・ポートマン・スクエア(Nobu Hotel London Portman Square)でポップアップストアを開催し、2月21日にはアシックス(Asics)とのコラボレーションスニーカーも発表した。この流れはタイムリーだとピーターソン氏は述べる。「シモーネ・ロシャ(Simone Rocha)やチョポヴァ・ロウェナ(Chopova Lowena)をはじめとするレディ・トゥ・ウエア(プレタポルテ)のデザイナー同様、ロンドンのジュエリー作品は大胆で独創的であり、ほどよいユニークさを備える。ミニマリズムから離れつつある今、特に時代性に合っている」。国際的なプレイヤーも、ロンドンがジュエリーの中心地としての役割を担っている状況に注目する。米国ブランドのファウンドレイ(Foundrae)は2023年に米国外初の店舗をロンドンにオープンし、スピネリ・キルコリン(Spinelli Kilcollin)も2025年、メイフェアに初の海外ブティックを開設した。
「コンプリーテッドワークス」は女優・アーティストのジェマイマ・カークらによるパフォーマンス形式で最新コレクションを発表
