鈴木亮平

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「リブート」強し

 プライム帯(午後7〜同11時)の民放冬ドラマが中盤から終盤に差し掛かっている。数多くの人に観られているのはどの作品か。視聴率ベスト5を見てみると、評判高い作品が順当に上位に揃っている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 民意を表す視聴率のベスト5を見てみたい。2月第2週(9〜15日)のデータである。初回の視聴率も付記する。数字の浮沈が分かる。5年半前からテレビ界もスポンサーも使っていない世帯視聴率も念のために記す。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)

(1)TBS「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)
※15日放送の第4回は個人6.5%(世帯10.3%)
※1月18日放送の初回は個人8.4%(世帯13.3%)

(2)テレビ朝日「おコメの女−国税局資料調査課・雑国室−」(木曜午後9時)
※12日放送の第6回は個人4.0%(世帯7.1%)
※1月8日放送の初回は5.7%(世帯10.0%)

(3)テレビ朝日「再会〜Silent Truth〜」(火曜午後9時)
※10日放送の第5回は3.5%(世帯5.9%)
※1月13日放送の初回は個人3.8%(世帯6.8%)

「リブート」は視聴率が落ちてきたものの、まだ他を寄せつけない。ドラマ制作者によると、49歳以下に絞った個人視聴率(コア)も断トツである。

鈴木亮平

 主人公は真面目でお人好しのパティシエ・早瀬陸(松山ケンイチ)。顔を整形し、死んだと聞いた警視庁刑事・儀堂歩(鈴木亮平)に成りすましている。儀堂は悪徳刑事と言われているが、素顔はまだ分からない。

 早瀬の目的は妻・夏海(山口紗弥加)を殺した犯人を突き止めること。夏海は2年半前から失踪していた。儀堂の恋人を自称する幸後一香(戸田恵梨香)が協力するが、彼女が敵か味方かも不明だ。

 夏海は反社会的企業・ゴーシックスコーポレーションで会計コンサルタントをしていた。幸後はその後任。儀堂は同社に捜査情報を流していた。真面目な早瀬には縁遠い世界だった。

 2年半前、この会社から10億円が横領された。夏海が消えたのと同時期である。早瀬はその金を見つける。儀堂が借りたトランクルーム内にあった。夏海の運転免許証とスマホも見つかった。夏海を殺したのは儀堂か。

 一方で本物の儀堂が生きていた。儀堂の妻・麻友(黒木メイサ)に本人から電話があった。次に幸後の前に現れる。今度は儀堂が同じ顔になった早瀬に成りすまし、ゴーシックス社の隠し金庫から金品100億円を奪った。

 この会社の代表・合六亘(北村有起哉)は100億円を奪ったのは早瀬だと決めつける。防犯カメラに映っていたのは儀堂だから、仕方がない。2人は見分けが付かない。やはり疑われた幸後は消えた10億円の真相を語る。儀堂と夏海、顧問弁護士の犯行であり、儀堂が夏海を殺したという。

 早瀬が本物の儀堂でないことは合六に理解してもらった。だが、幸後と一緒に100億円の金品を取り戻さないと合六に殺される。儀堂を見つけられるのか。

 引っ掛かるのはトランクルームにあった10億円である。儀堂は手を付けていない。儀堂が夏海を殺したのは事実なのか。また儀堂は妻の麻友を事件から遠ざけようとしている。本当は早瀬と同じく、家族思いなのではないか。

 2位の「おコメの女」は東京国税局のアウトサイダーたちが悪質な脱税を次々と摘発する物語。やはり数字が下がったが、全ドラマの中で相対的に上位であることに変わりはない。そもそもドラマの視聴率は大抵、中盤で下がる。

 主人公は腕利きの国税調査官・米田正子(松嶋菜々子)。東京国税局にある複雑国税事案処理室(通称・ザッコク)の実質リーダーとして脱税の摘発に取り組んでいる。

 米田は怖い物なし。妥協もしない。モットーは「正しく集めて、正しく使う」。下手をすると、硬くて近寄りがたいキャラクターになってしまいそうだが、大好きな日本酒を嬉々として飲んだり、ザッコクの4人のメンバーにご飯を炊いて食べさせたりするから、魅力的な人物になっている。松嶋の当たり役が増えた。

 第6回は政治家の裏金づくりをしている大物国税OBを摘発した。政治家や国税の現役職員と結び付いているので、厄介な相手だった。それでも裏金から流用した7億円でカードゲームの超レアカードを購入していた事実を掴み、12億8465万円をがっぽりと追徴課税する。

「再会」は本格派

 3位の「再会」は評判通りの高順位。原作が江戸川乱歩賞を受賞した同名ミステリー小説だから、本格的な推理を堪能できる。35歳男女4人の人間模様にも引き込まれる。

 スーパー店長・佐久間秀之(小柳友)が拳銃で射殺された。殺したのは4人の中の誰か。その拳銃は23年前、小学6年生だった4人が隠したものだからである。銀行強盗犯に撃たれて死んだ警察官・清原和雄(弓削智久)の拳銃だった。

 4人とは主人公の刑事・飛奈淳一(竹内涼真)、ヘアサロン経営者の岩本万季子(井上真央)、殉職した清原の息子で建築士の清原圭介(瀬戸康史)、会社役員の佐久間直人(渡辺大知)である。

 死んだ秀之は直人の異母兄。兄弟仲が悪かった。直人のアリバイが崩れ、犯行も自供したので、逮捕されたが、本当は誰かを庇っているようだ。恋心をうかがわせている万季子か。

 淳一にはアリバイがあり、動機もない。万季子と圭介には動機がある。万季子は秀之に恐喝されていた。ネタは万季子の1人息子の万引き。現金30万円を要求されていた。

 万季子は息子の名門中への推薦入学が決まったばかりなので、毅然とした態度が取れなかった。圭介は万季子の元夫で息子の父親。恐喝には一緒に対処したが、自分の再婚を万季子に隠しているので、それが負い目となり、どこか及び腰になっていた。

 万季子と圭介にはアリバイがある。しかし、頭脳派で勘も鋭い刑事・南良理香子(江口のりこ)に万季子のアリバイは崩された。南良は万季子に任意同行を求めるが、拒まれた。やはり万季子が犯人なのか。

 淳一は胸を張れる立場かというと、そうではない。任意同行は拒否できると万季子に入れ知恵した。なにより、南良に心理戦で追い詰められ、23年前に清原の拳銃で銀行強盗犯を射殺したと告白する。

 気になる点がある。まず子供の万引きによる恐喝が動機で殺人まで犯すだろうか。若いころ、不良だった秀之は高校時代の万季子に舐めるような視線を向けていた。

 まだある。小6だった淳一が強盗を撃ち殺せるのか。銃を撃つときには反動がある。清原の所持していたニュー・ナンブM60も銃身が跳ね上がるという。しかも淳一が拳銃を撃ったのは初めてだ。

「未来のムスコ」が上昇

(4)TBS「未来のムスコ」(火曜午後9時)
※10日放送の第5回は個人3.0%(世帯4.9%)
※1月13日放送の初回は3.2%(世帯5.7%)

(5)フジテレビ「ヤンドク!」(月曜午後9時)
※9日放送の第5回は個人2.9%(世帯5.0%)
※1月12日放送の初回は個人5.0%(世帯8.1%)

 4位は「未来のムスコ」。序盤から各メディアの批評家らの間で評判高く、順当に上位に進出してきた。

 主人公は28歳の汐川未来(志田未来)。女優を目指し、10年前に富山県から上京した。小劇団に所属しているものの、メジャーな仕事はない。下積みが続いている。

 大学時代の友人は就職し、管理職になった。結婚した友人はマイホーム購入を計画している。自分だけ取り残された気分だった。「そろそろ限界かなぁ」。

 実社会に目を移すと、未来ばかりがそう考えるわけではない。若いうちは自分だけが置いてけぼりを食っているような心境に陥りがち。どうしても同級生や同年代と自分を比較してしまうから、仕方がない。28歳で十人十色と悟っていたら、かなり老練のイメージがある。

 未来が夢をあきらめようとしていた矢先、目の前に5歳の男の子が現れる。名前は汐川颯太(天野優)。未来を見るなり「ママー!」と、抱きついてきた。未来の息子で、10年後の2036年から来たという。

 パパが未来とケンカして家を出て行ったから、仲直りをさせたくてタイムスリップしてきたという。ケンカした両親を和解させようとするのは子供の本能だ。パパの名前は「マー君」だという。

 未来は最初、一笑に付し、颯太をぞんざいに扱った。しかし落ち込んでいたとき、颯太から「だんない(富山弁で大丈夫)」と励まされ、驚く。自分の口癖である。そうでなくても颯太と接するうち、自然と愛情が湧いてきた。

 颯太が迷子になると、半狂乱になり、懸命に探した。女優を辞めようとしたとき、颯太からプレゼントされた紙工作が目に入ると力が湧き、女優を続けることを決めた。

 マー君の候補者は3人いる。所属劇団の演出家・吉沢将生(塩野瑛久)、劇団の後輩・矢野真(兵頭功海)、颯太の通う保育園の保育士・松岡優太(小瀧望)。

 未来とまだ誰なのか分からないマー君とのラブストーリーである一方、それ以上に「家族とは何か」、「幸福とは何か」と強く問い掛けてくる。未来は夢を追い掛けられる今、幸せなのだ。

 5位の「ヤンドク」は医療物とヤンキー物の融合という離れ業に挑んでいる。主人公は脳神経外科医・田上湖音波(橋本環奈)。元ヤンで、かつては特攻服を着てバイクを乗り回していた。

 破天荒医者の元祖は山本周五郎の『赤ひげ診療譚』の新出去定。心を掴まれる人物だが、知性をうかがわせなくては単なる荒くれ者に思えてしまったはずだ。

 湖音波はどうかというと、元ヤン気質が目立ち、あまり知性を感じさせない。それでも面白い存在だ。橋本の底抜けに明るく快活なキャラクターが観る側を惹き付ける。

 なお、フジテレビ「東京P.D. 警視庁広報2係」、テレビ朝日「相棒 season24」、日本テレビ「パンチドランク・ウーマン ―脱獄まであと××日」はミラノ冬季五輪の特番が編成されたため、放送がなかった。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部