Image: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

太陽系において木星に次いで大きい、巨大なガス惑星である土星。その周囲には神秘的な環がぐるりと囲んでおり、また274にもおよぶ衛星が存在します。

そんな土星の環に関する新たな研究結果が発表され、話題となっています。

土星の環、2つの衛星の衝突で生まれた?

今回学術誌「The Planetary Science Journal」で発表された論文では、土星の環が形成された経緯や、土星最大の衛星「タイタン」の奇妙な軌道についての研究結果が記されています。

研究の結果、2つの衛星がはるか昔に衝突したことでタイタンが誕生し、またその衝突の影響により土星の環ができた可能性があるんだそう。

探査機カッシーニが残した謎

土星探査に大きく貢献したのは、1997年に打ち上げられ、2004年から約13年間にも及んで土星本体や環、衛星などの探査に臨んだ宇宙探査機「カッシーニ」でした。この探査機から得られたデータでは、それまで天文学者たちが抱いてきた通説に疑問を投げかけるようなデータもあったんだとか。

たとえば、土星の数多くある衛星のいくつかは、奇妙で偏った軌道を持っていること。計算式とは一致しないものがあったり、土星の環については予想よりもはるかに若いものだったり、といった内容です。

さらに言えば、土星の質量が予想以上に中心部に集中していることもわかりました。土星の軌道運動についても、まだ解明されていない部分が多いことが示唆されてきました。

2022年、こうした不一致が生じた原因について、ある天文学者の研究チームが説を提唱します。それが「もし1億年ほど前に衛星が1つ失われていたとしたら?」という説でした。この仮説を検証するため、今回の研究は行なわれたわけです。

シミュレーションだと、ハイペリオンが消える

1億年前と言えば、土星の環が形成され始めたとされる時期。コンピュータのシミュレーションを使い、この失われた可能性のある衛星が土星に十分接近して環を形成し得たかどうかを検証したといいます。

研究チームはこのシミュレーションで一貫して現れる異常に着目したところ、あることに気づきました。

「土星の主要衛星の中で最も小さいハイペリオンが、この土星系の歴史について、最も重要な手がかりを与えてくれました」と述べるのは、今回の研究の筆頭著者でSETI研究所の研究者であるマティヤ・チュク氏。

氏によれば、シミュレーションで軌道が不安定な余分な衛星を1つ追加すると、このハイペリオンが消滅してしまうという結果が繰り返し現れたんだとか。

Image: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
カッシーニが捉えた土星の衛星「ハイペリオン」

この結果から、「タイタンを形成する前の衛星が、より小さな衛星と合体したことでタイタンが生まれたのでは?」という可能性を指摘しています。タイタンにはクレーターがほぼないことも知られていますが、その理由も2つの衛星が合体したから、ということで説明できるそう。

また「合体前に小さな天体がタイタンの軌道を乱していたとすれば、タイタンが楕円軌道を持つことも理にかなう」と付け加えています。

加えて、タイタンのこの楕円軌道が土星の内側の衛星を不安定化させることを発見。土星の環が形成された理由についても、タイタンの軌道の影響を受けて他の小衛星の軌道が不安定になり、極端な経路を辿って大規模な衝突が起き、環が形成されるに至ったのでは、と伝えています。

研究チームは「2034年にタイタンに到達する予定のNASAの探査ミッション「ドラゴンフライ(Dragonfly)」によって得られる最新のデータで、この仮説を検証できるはず」と期待を寄せています。