本田望結×肝っ玉ヒロインが最強すぎる! 『きさらぎ駅 Re:』は“明るいホラー”の傑作
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、最寄り駅まで徒歩50分の土地に生まれた佐藤が『きさらぎ駅 Re:』をプッシュします。
参考:本田望結が新たに主演、永江二朗が監督を続投 映画『きさらぎ駅 Re:』初夏公開決定
……期待していた以上に面白かった! 本田望結が物語の中で見せる胆力には驚かされ、『バイオハザード』のアリスがふと重なる瞬間すらあった。都市伝説ホラーと聞いて、もっとテンプレ的な展開だろうと油断していたが、安易な元ネタ再現にとどまらず、ループものとしてのギミックが物語に巧みに組み込まれていて、きちんと怖くて、しっかり面白い。元ネタを知っている人にも、初見の人にも自信を持っておすすめできる一作だ。
そもそも「きさらぎ駅」とは、2004年にネット掲示板「2ちゃんねる」へ投稿された、実在しない駅に迷い込んだという体験談をめぐる都市伝説。書き込み主は「新浜松発の電車に乗っていた」と語っており、この情報から、舞台となったのは静岡県を走る遠州鉄道ではないかと推測されている。
深夜、電車に乗っていた投稿者が辿り着いたのが「きさらぎ駅」という謎の無人駅。見知らぬ風景、聞き慣れない地名、不穏な展開。投稿者は携帯でリアルタイムにスレッドに書き込み続け、やがてその声は途絶える……。この伝説がなぜこれほどまでに多くの人の記憶に残っているのかといえば、それが物語というより“体験”として語られたからだと思う。2001年生まれの筆者も例外ではなく、中学生の頃にこの話を友人に聞かされてゾッとした記憶がある。普段ほとんど電車に乗らない生活をしていたのに、「うっかり居眠りしたら、きさらぎ駅にいってしまうかもしれない」という妙な恐怖が頭のどこかに刷り込まれていたほどだ。
そんな本作は、2022年に公開された映画『きさらぎ駅』の“その後”を描いた続編にあたる。前作で主人公を演じた恒松祐里に代わり、前作で宮崎明日香役として登場していた本田が主演を務めている。とはいえ、設定的には明日香の視点を深掘りするような内容になっており、前作とのつながりを意識しながらも、今作単体でもしっかり楽しめる構成になっているのが嬉しいところだ。より濃密に物語の世界観に浸りたいという方は、前作を予習しておくのもアリかもしれない。
■「アネゴ」と呼ばずにはいられない本田望結の貫禄 さて、本田望結演じる宮崎明日香に話を戻そう。繰り返すが、彼女の強さは常軌を逸している。無免許で獣道さながらの山道を駆け抜け、ためらいなく石を振りかざすその決断力は、まさにアクション映画のヒロイン級。もはや「アネゴ」と呼ばずにはいられない貫禄だ。しかも、その豪胆さに引っ張られるように、最初は怯えていた仲間たちも徐々に「きさらぎ駅」に動じなくなっていく。アネゴの背中を追ううちに顔つきが変わり、やがては「こんなもんか」と涼しげに構える彼らの姿は、ホラーの緊張感にコミカルな軽やかさを絶妙にミックスしている。
さらに本作の魅力を際立たせているのが、「明るいホラー」という演出だ。筆者はいま、夜の電車内でこの原稿を書いており、そこでふと気づいたのは、「きさらぎ駅」はずっと“昼”だということ。ずっと明るいホラーを観続けているこの感覚は、『ミッドサマー』の白昼の狂気にも通じるものがある。
そして、この楽しさを損なわず最後まで飽きさせないのが、82分というコンパクトな尺。加えて、舞台となった遠州鉄道は実在しているため、鑑賞後に“聖地巡礼”として沿線を訪れ、「きさらぎ駅」にたどり着けるか試してみるのも都市伝説ホラーならではの一興かもしれない。(文=佐藤アーシャマリア)
