「I’m donut ?」など行列店の仕掛け人が明かす、大人気店が続々生まれる「ヒットの法則」

ベーカリー『AMAM DACOTAN(アマムダコタン)』、生ドーナツ専門店『I’m donut ?(アイムドーナツ ?)』、ベーカリーカフェ『daco(ダコー)』(「o」は本来は上に横棒が入る)と人気店を次々と生み出しているシェフが、オーナーでもある平子良太(ひらこ・りょうた)さんだ。2025年5月には、平子さんが手がける新感覚のスイーツ「シュークルーラー」のテイクアウト専門店『Cream or Cruller(クリーム オア クルーラー)』が東京・渋谷にオープンした。止まるところを知らない勢いの源になるものとは一体何なのか。平子さんに訊いてみた。
ベーカリーではなくイタリアンが出発点だった
平子さんは1983(昭和58)年、長崎県生まれ。パン職人ではなく、もともとはイタリアンのシェフとしてキャリアをスタートさせた。

「高校卒業後に長崎のホテルで働いたのちに上京し、イタリア料理店や和食店で修業を重ね、料理人としての経験を積みました。その後、姉が営むアンティークショップの買い付けを手伝うためフランスへ渡航し、車で全土を巡る旅に出たんです。帰国後はイタリア料理店で料理長を務めたあとで独立し、2012年、福岡に『パスタ食堂ヒラコンシェ』をオープンしました。親しみやすいフランスの田舎食堂をテーマに、地元の人に愛されるお店だったのですが、建物の立ち退きのために惜しまれながら食堂は2022年に閉店することになったんです」
当時、お店で提供していたパンをもっと多くの人に届けたい。そんな想いから、2018年に食堂と並行して福岡にベーカリー『AMAM DACOTAN』をオープン。丁寧に焼き上げられたパンの美味しさは噂が噂を呼び、徐々に注目を浴びる存在となっていった。
『I’m donut ?』のヒットと念願の海外進出
平子さんが展開する店舗の中でも代表的なのが生ドーナツ専門店『I’m donut ?』。現在のドーナツブームを牽引していると言っても過言ではない。2022年3月の東京・中目黒の1号店オープン以来、現在国内に6店舗を構え、今なお行列が絶えず、夕方には売り切れる。人気の秘密は、国産の数種類の小麦粉をブレンドしたこだわりの生地にカボチャを練り込むことで生まれる、ふわふわを超えたシュワっとした食感にある。
「もともと『AMAM DACOTAN』で使用していたブリオッシュ生地を焼く以外に活用できないかと考え、試しに揚げてみたら生地が爆発的に膨らみ、外はカリッと、中はシュワっととろけるような新しい食感だったことから “生ドーナツ” と名付け『I’m donut ?』 として専門店をオープンいたしました」
ちなみに店名『I’m donut ?』の最後についているクエスチョンマークだが、従来のドーナツとは異なり、揚げているのにまるで生のような食感から「私ドーナツなの?」とドーナツ自身が自問自答している様子を表現しているのだとか。
そして2025年4月22日には、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイに海外1号店がオープンした。



「海外初出店にニューヨークを選んだのは、ドーナツの本場であるアメリカの中でも常に人が集まり、活気と多様性溢れる街だからです。そこから納得できる物件と空間、そして自信を持って商品を提供できるクオリティに達するまで3年、ついにオープンすることができました」

現地ではシグネチャー(代表的な)商品である生ドーナツをはじめ、日本酒を使った「Sake Cream」などの9種のニューヨーク店限定メニュー、さらに現地の食文化やニーズに合わせたヴィーガンドーナツなども揃う。
【店舗データ】
店名:『I’m donut ? times square』(アイムドーナツ ? タイムズスクエア・ニューヨーク店)
住所:154 West 45th Street (between Sixth and Seventh Avenues), NY, NY 10036
営業時間:10時〜16時 (売り切れ次第終了)
定休日: 月・火
公式サイト:https://www.imdonut.nyc/
新店は新感覚スイーツ “シュークルーラー” 専門店
2025年5月2日に東京・渋谷にオープンした新店は、テイクアウト専門店『Cream or Cruller(クリーム オア クルーラー)』。シュークリームとフレンチクルーラーをかけ合わせた新感覚スイーツ “シュークルーラー” だ。



「こだわったのは食感です。シュー生地の軽さに加えて中をしっとり、底面をキャラメリゼすることで外はカリッとさせることを追求しました。その食感を存分に楽しんでもらうために、クリームは別にして生地自体の味を楽しんだり、ディップして味を変えたりと自分好みの味にアレンジできるのが特徴です」
【店舗データ】
店名:『Cream or Cruller』(クリーム オア クルーラー)
住所:東京都渋谷区神南1-8-11
営業時間:11時〜19時(売り切れ次第終了)
定休日:不定休(公式Instagramでお知らせ)
公式Instagram:https://www.instagram.com/creamorcruller
徹底した世界観の先にあるのは「高揚感」
商品は可能な限り自家製で、毎朝ひとつひとつ丁寧に手作り。全ての店舗への材料や味へのこだわりはもちろんだが、空間づくりにおいても平子さん自ら物件を探し、内装も一部手掛ける。さらにスタッフのユニフォームや店内に流れるBGMに至るまで、彼の徹底した世界観が貫かれている。
「例えば『AMAM DACOTAN』の店舗は “石の街にある小さなパン屋さん” がコンセプトで、石の上に1日100種類以上の商品を一番美しく見える角度で陳列しています。また、『I’m donut ?』のユニフォームは、RPGの『ドラゴンクエスト』の僧侶をイメージしていて、以前から親交のあった人気スタイリストの大森●佑子(ようこ、●はにんべんに予)さんにデザインをお願いしました」


「どの店舗も “架空の世界” がテーマ。お店に一歩足を踏み入れた瞬間から、物語の主人公になったような気持ちを五感で楽しんでもらいたいです」

今後も国内外問わず出店は続いていく予定だという。最後に今後の目標や平子さんにとってのゴールについて訊いてみた。
「目標やゴールは特にありません。お店に足を運んでくれたお客さんにワクワクしてもらいたい、自分も常に楽しみながらやっていくだけです」
五感をフルに使って自らが常に心を躍らせながら追い求めるその “高揚感” は、自然と私達買い手にも伝わっていく…それこそがヒットを生み出す何よりの原動力なのかもしれない。
文・写真/香海楓
かい・かえで。ファッション誌営業、ライフスタイル誌編集を経て、フリーランスの編集&ライターに。古着と海外セレブと食べ歩きが好きで、日本であまり知られていない世界の料理を食べるのが趣味。好物はアメリカのファンネル・ケーキ。


