マルシィは新たな決意とともに横浜アリーナへと進む 初の日本武道館、笑顔と涙が交差した万感のステージ
マルシィが初となる日本武道館の単独公演『マルシィ one man live 2025 “with your daily”』を開催した。
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2022年のメジャーデビューから約3年で到達した武道館でのワンマンライブは、マルシィにとって大きな目標の一つ。この公演が発表された際に吉田右京(Vo/Gt)は「結成してから、今に至るまでのマルシィをしっかり届けられたらと思います」とコメントしていたが、初の武道館で3人は、これまでの軌跡をダイレクトに体現してみせた。(チケットは即完売。それに伴い、全国各地の映画館で生中継された)
開演前のSEは静謐なピアノ曲。18時10分に客席の照明が落とされ、大型のLEDスクリーンに淡い色合いの映像ーー街並、海、空、桜の花ーーが投影される。ステージの中央にスポットが当たると、そこには吉田右京の姿が。ギターの弾き語りから始まったのは「Drama」。吉田右京、フジタタクミ(Ba)、shuji(Gt)の3人がマルシィとして初めて作った楽曲で、記念すべき初・武道館ライブは幕を開けた。
「4月12日『マルシィ one man live 2025 “with your daily”』、はじめます」(右京)という最初の言葉に導かれたのは、「プラネタリウム」。青のレーザーが会場を照らし出し、爽やかなアッパーチューンによって観客のテンションが一気に上がっていく。「武道館、いけますか!?」と笑顔で叫ぶ右京の表情も印象的。エンディングで右腕をグルグルと回す姿からも、このライブにかける強い思いが伝わってきた。さらに鋭利なギターリフを軸にした「牙」へ。冒頭からエッジーな曲を続け、武道館を心地よい高揚感で包み込んでみせた。
アコギの素朴なSEが流れ、右京がタイトルコールした瞬間、さらに大きな歓声が巻き起こる。再生数1億回を突破し、ロングヒットを記録している代表曲「ラブソング」だ。ドラマティックな旋律、生々しいバンドサウンド、そして〈これからずっと愛を伝えるよ〉というフレーズが広がり、豊かな感動が会場を包み込んだ。爽やかさとエモさが共鳴するステージは、まさにマルシィの真骨頂。吉田右京の歌を際立たせるshuji、フジイタクミの演奏も素晴らしい。ステージを凝視し、じっくりと耳を傾けるオーディエンスの姿も強く心に残った。
「すごいな、日本武道館。知ってくれている人も多いと思うけど、マルシィは数年前から武道館を目標にしていて。みんながマルシィと出会ってくれて、好きになってくれて、ここに集まってくれて。みんなのおかげだし、連れてきてもらったなと思っています。ありがとうございます」
「僕らにとって、マルシィにとって何年経っても思い出す宝物のような時間にしたくて。みんなにとってもそういう時間になったらいいなと思うし、全力でマルシィを届けていくので、よろしくお願いします!」
エモさがたっぷり込められた右京のMCの後は、「ミックス」。LEDにカラフルな映像が映され、ハンドマイクの右京は「日本武道館、めちゃくちゃ楽しみにしてた人!?」とオーディエンスに呼びかける。shujiがギターソロを弾きはじめると、吉田が背後から軽くバックハグ。当然、「キャー!」という歓声が巻き起こる。さらに疾走感溢れる「恋焦がれて」を重ね、オーディエンスのテンションはさらにアップ。メンバー自身もこの大舞台を全身で楽しんでいるようだ。
ここからは色とりどりの感情を描いた楽曲が続く。まずは「ラズベリー」。楽曲のテーマとリンクした照明のなかで〈振り向いてほしくて/私だけ見ていてよ〉という切なすぎるフレーズが広がる。波音のSE、都会の夕暮れの映像とともに奏でられたのは「凪」。“君”がいなくなった状況を少しずつ受け止めながら、凪のような悲しみに包まれる主人公を描いた歌詞がゆったりと響き渡り、ノスタルジックな気分に包まれる。
2度目のMCでは、メンバー全員がコメント。「4年前くらいからメンバーのなかに“武道館に立ちたい”という思いが芽生えて。みなさんのおかげだと思っています」(shuji)「武道館は聖地。ここでマルシィの音楽を届けられるのがうれしいし、これだけの人数が集まってくれて感激です」(タクミ)という言葉に大きな拍手が送られた。
さらに右京がライブタイトルの“with your daily”について言及。福岡で開催した初ワンマンのタイトルが“for you”だったこと。今もマルシィの軸は変わっておらず、自分たちの音楽が大切なものに気づくきっかけになったり、どん底の1日でも聴いてもらえるような曲を届けていきたいと思っていることーー。そう、日記のようにリスナーの生活に寄り沿う楽曲こそが、マルシィがこんなにも多くのリスナーを魅了している最大の理由なのだ。
「後悔したり、痛みを知ることで、誰かに優しくしたり、寄り添えるんじゃないかなって」(右京)
そんな言葉に導かれたのは「アリカ」。会いたい、愛したいという後悔をストレートに描いた哀切な歌詞がオーディエンスの心に突き刺さっているのがはっきりとわかる。その直後にヘビィな音像が鳴り響き、不穏な雰囲気を携えた「ピエロ」を披露。喜怒哀楽、曲によっていろんな感情を体感できるのもマルシィのライブの魅力だろう。スラップを交えたベースプレイ、エッジーなギターソロもカッコいい。
ここからライブは後半へと向かう。「アイラブ」ではポップなサウンドに乗って観客がタオルを回しまくり、幸福感に溢れる空間が出現。さらに歌詞をスクリーンに映して演奏された「未来図」では、〈酸いも甘いも/抱き締めて〉の大合唱が起こり、さらに強い一体感が生まれた。特に〈僕達だけの愛の形と幸せを/二人だけで作っていこう〉というフレーズでは、バンドとオーディエンスの関係性とも強く重なっていたように思う。
さらにリリースされたばかりの新曲「フリージア」、“あなたのペースで進めばいいよ”という思いを込めた「エール」、「今日いちばんの声を聞かせてくれますか?!」(右京)という煽りからはじまった「大丈夫」、そして、離れた街で暮らす“君”への感情を綴った「ワスレナグサ」と様々な時期の楽曲を連ねる。
「次の曲、一緒に照らしてもらえますか?」(右京)の言葉に呼応し、観客がスマホのライトをかざしたのは「願いごと」。無数の白い光が武道館を照らす美しい光景が生まれ、右京が感極まって歌えなくなってしまい、オーディエンスが代わりに歌声を響かせるシーンは、マルシィと観客の結びつきの強さを証明していたと思う。
「こんなつもりじゃなかったんだけど」と涙を浮かべながら右京は、改めて観客に話しかけた。
「みんながいてくれるからマルシィがあるし、音楽をやっている理由になっています」
「このバンドで人生を賭けて、みんなの人生に関わって、寄り添っていけるバンドになるので。よかったらこれからもついてきてください」
マルシィをやっている理由、この先の活動に対する決意をはっきりと言葉にした右京。それは言うまでもなく、観客全員の心に強く刻まれたはずだ。
その直後に演奏された「プレゼント」も、この日のライブの大きなハイライトだった。ライブバンドとしての力を証明するダイナミックな演奏、ひとつひとつの言葉を手渡すようなボーカル、楽曲のストーリーとリンクした映像も含め、まるで1本の映画を観終わったような充実感があった。
ラストは「最低最悪」。ブルー、ピンク、パープルのレーザーが飛び交い、観客は楽しそうに身体を揺らし、手を挙げる。心地よい空間が広がり、ライブ本編はエンディングを迎えた。
アンコールを求める声が響き渡るなか、スクリーンには新たなライブの告知が。2026年1月9日、10日に行われる横浜アリーナ2Days公演がアナウンスされると、会場はすさまじい歓声で包まれた。
ステージに上がったメンバーはそれぞれ感謝の気持ちを伝え、「幸せの花束を」を披露。〈他では見せない表情を見せ合える/二人という居場所に/ずっと君と僕で〉というラインもまた、ライブにおけるバンドとファンの関係を映し出していたと思う。
最後のMCで吉田は、マルシィの成り立ちや軌跡について語った。もともとは自分のためだけに曲を書いていた、バンドをやろうと思ったけどメンバーがなかなか見つからなかった、人を介して知り合ったベースのタクミが「Drama」を褒めてくれた、shujiのギターを聴いたとき「この音だ」と直感で思ったーー。
「1回しかない人生、マルシィをやっている人生でよかった。ガラガラのライブハウスの頃から歌い続けてきた曲です」と紹介されたのは、「絵空」。まるで星空のようなライティングとともに奏でられたこの曲は、初の武道館ライブの素晴らしさを象徴していた。
前述した通り、来年1月に横浜アリーナ2Days公演も決定。記念すべき初の武道館ライブをやり遂げた3人は、バンドとしてさらなるスケールアップを果たすはず。ファンと寄り添いながら、自らの音楽の世界を広げ続けているマルシィ。この先、彼らが生み出す楽曲やライブシーンをたくさんの音楽ファンと共有したいと思う。
(文=森朋之)

