松井大輔の言葉に「何度もハッとさせられました」。流経大柏MF安藤晃希のドリブルがアップグレード「2枚目の動きが見えていた」
そのドリブラーが今年、最高学年を迎えてさらに進化を遂げようとしている。
プレミアリーグEAST第2節の昌平戦。【4−3−3】のインサイドハーフで起用されると、33分に圧巻のプレーを見せた。
中央左でボールを受けると、「最初、相手の間合いが遠かったので、相手の届く範囲に入ってきたら仕掛けようと決めていました」と右アウトサイドでボールを突きながら晒すことで、相手が飛び込んでくるのを待った。
そして自分に食いついてきたのを確認すると、それでできたスペースに左足でグラウンダーのクロス。これに飛び込んでいたFW金子琉久がフリーで冷静にゴールに蹴り込み、チームに先制点をもたらした。
プレーは一瞬だったが、そこには安藤の実に質の高い判断が2連続で盛り込まれていた。
その後、足がつった影響で61分に交代したが、チームは3−0と完勝。試合後に話を聞くと、安藤は「あの先制アシストこそ、リーグ開幕前に掴んだ大きな成長の証だと思います」と胸を張った。
「選手権までの僕だったら、目の前の相手しか見ずに仕掛けていて、もしかしたら2人目で奪われていたかもしれないし、アシストもゴールもできていなかったかもしれません」
何が彼をここまで変化させたのか。そのきっかけは3つあった。1つ目は、今年の流通経済大柏は昨年のように幅を使った攻撃メインではなく、選手たちの距離感がグッと近づいたスモールフィールドを形成して、ワンツーや3人目、4人目の動きを駆使して崩していくサッカーに変化したこと。2つ目が、そのうえで安藤のポジションがサイドハーフからインサイドハーフになったことにあった。
「昨年のようにワイドで張って仕掛けるのではなく、常に周りに選手が出入りするなかで、背後で受ける動き、ライン間で受ける動きをやらないといけなくなりました。受けて、仕掛けるではもう遅かったりしますし、以前より簡単に1対1の状況が作れるようになって、より一瞬の判断を求められるようになった。だからこそ、それに対応できるように練習から工夫していました」
そして3つ目のきっかけは、元日本代表の名ドリブラーである松井大輔氏からもらった“金言”だった。
3月に松井氏が流通経済大柏のグラウンドに訪れ、1日トレーニングを指導する機会があった。そこで安藤は「自分のドリブルに必ずプラスになると思った」と、一言一句聞き逃すまいと耳を傾け、一挙手一投足を見逃さなかった。
「松井さんの言葉で何度もハッとさせられました。特に『縦に仕掛けたいのだったら、相手と同列に並んでから縦に行く。並ばないのだったら、相手の間合いに入った瞬間に少ないタッチでカットインやフェイントを仕掛けて逆を取れ』という言葉はストンと腑に落ちました。
確かに僕が縦に抜けられる時って、相手との距離が近くなって、スピード勝負で勝った時。それに最近は縦を警戒されて切られることが多いので、相手の間合いに入った瞬間に勝負すれば、そこで中を切っているなら縦、縦を切っているなら中、はっきりしない状況であれば、切り方が甘い方を選んで仕掛けることを意識するようになりました」
【画像】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介!
今までは自分の間合いで強引に勝負に行っていたところが、相手の間合いを意識するようになり、かつボールを受ける前、受けた直後と駆け引きを増やしたことで、ドリブルの引き出しは一気に増えた。
「相手の横、同ライン、近いライン、正面のライン、横のラインなど相手がどこにいるか、どのタイミングで間合いに入るか。僕の中ではボールを受けた時に、相手に手が届く距離にきたら仕掛けることを意識するようになりました。こうしてオフとオンの部分で駆け引きをすることで、見える世界が広がる。今、実感しているのは2枚目の対応も見るようになっていること。今日のアシストも2枚目の動きがはっきりと見えていたので、最善の選択をすることができたと思います」
安藤のドリブルはワンランク、ツーランク上にアップグレードされた。3つのきっかけを成長に変えた彼には今、Jクラブのスカウトから熱視線を注がれている。
「ドリブルをもっと進化させていきたいし、チームの中で必要不可欠な存在になりたい」
まだまだこんなものではない。その真っ直ぐな瞳の先には、より武器を研ぎ澄まして、相手を切り裂いていく自分の未来像がはっきりと描かれている。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
