「既婚者専用マッチングアプリ」に沼る女性が急増している理由「婚外彼氏と月に1回のデートで発散」「夫とはできないことを…」性的暴行などの事件に発展するケースも…
TBSテレビの50代男性社員が、港区赤坂のカラオケ店で「既婚者専用マッチングアプリ」で知り合った40代の女性に性的暴行を加えたとして警視庁に書類送検された。男性が女性と会うのは2回目で行為を認める一方、同意があったと主張している。今回話題になった「既婚者専用マッチングアプリ」とはそもそもなにか。なぜ利用しているのか。実際の利用者に話を聞いた。
【画像】プロフィール写真はぼかせるものもあるが、実際に会うと…
“既婚者専用マッチングアプリ”誕生の背景に、社会問題×テクノロジー
未婚化・少子化が問題視される日本だが、結婚・出産後も悩みは尽きない。
今や社会問題ともいえる既婚者たちの現状。家で身体も心も満たされない彼ら彼女らは、家の外に恋愛や性行為をする相手を求める。テクノロジーの発達により、Xで「婚外恋愛」のハッシュタグをつけて募集したり、Facebookの既婚者専用の限定グループで探したりすることが容易に可能となった。
しかし、ネットでは相手の顔や性格が見えにくい。既婚者は未婚での恋愛と違い、出会いを求めていると知られてはならないからだ。
そこで誕生したのが、「既婚者専用マッチングアプリ」だった。
今回の事件で「既婚者専用マッチングアプリ」という言葉を始めて耳にしたという声が多数あがった。Xではニュースが配信された後にトレンド入りし、多くの議論を巻き起こした。
「タップル」「with」「Omiai」などの一般的なマッチングアプリでは会員数が1000万人をこえる一方で、既婚者専用では最大手と言われる「既婚者クラブ」でも30万人。この数が多いか少ないかはさておき、リスクを抱えつつも、一定数が利用していることは事実だ。
もうひとつ一般的なマッチングアプリと異なるのが、料金である。一般的なマッチングアプリの男性料金相場は月額3700円だが、既婚者専用は月額4980円~9800円と安くはない。
危険を冒し、お金を払ってまでマッチングしたいと思わせる理由は、なんなのだろうか? 実際に既婚者専用マッチングアプリを利用している男女に話を聞いた。
夫とのレスを機に登録、婚外彼氏と月に一度のデートを
「セフレを探すために登録しました」とまっすぐ語るのは、会社員のミユキさん(仮名・43歳)。
「夫は妊娠中からセックスを拒むようになり、産後は私からなんとかお願いして、してもらっていました。そのうちに1年が経ち、ついに本格的に断られるようになりました。誘っても話をそらされたり、見るからにうんざりされたりされて、悲しくてたまらなくて……。でもセックスはしたくて、既婚者専用マッチングアプリに登録しました」
登録したのは「カドル」と「既婚者クラブ」。どちらも月額料金が高額なせいか、「男性の職業は、結構よさそうな人がたくさんいました」という。
登録するにあたって、身バレなどのリスクは気にならなかったのか。
「自撮りの写真を掲載する義務がないので、身バレのリスクが小さいんです。写真をぼかす機能がついていて、セルフィーをぼかして載せる人が多いですね。そうすれば雰囲気は伝わるので」
気に入った人がいれば、あとは普通のマッチングアプリと流れは同じ。いいね!を押して、お互いにいいね!をし合えば、メッセージ機能が使えるようになる。メッセージを数回やり取りして、仲よくなると、ぼかしていない写真を交換するとのこと。そしてお互い気に入れば、デートへ発展するそうだが……。
「写真を送った瞬間にがっついてくる男性か、急に冷たくなる男性にわかれます。この写真交換で、一気に人柄が見えてきますね」
「アプリを通じて、半年で7人くらいと会いました。夫と別れるつもりはなく、身体の関係だけが目的だったので、『ちょっと話が合って、見た目が合格ラインならいいか』と思い、3~4人とはホテルに行きました。なかにはお茶だけで終わった人もいます」
しかし、どの男性とも長続きをすることはなかったそうだ。一度体を重ねたきり、音信不通になったこともあったのだとか。
「もちろん私も身体の関係が目当てでした。でも、あまりに全員が下心が丸見えで、うんざりしてきたんです」
半年がすぎて辞めようかと思っていた矢先に、今の彼氏と出会ったという。
「お互い子どもがいて、平日は仕事なので、会うのは土日の日中。食事をしてホテルに行く半日コースか、ホテル集合・ホテル解散の3~4時間コースかどちらかですね」
彼とは月に1回のペースで逢瀬を重ねていて、ミユキさんは今の関係に満足しているのだとか。夫に求めなくなったため、期待して裏切られることもなく、夫婦関係はむしろ良好になったという。
一方で、ミユキさんのように心も体も許せる彼氏ではなく、性欲の探求が目的の猛者もいる。
その女性は「SMプレイが好きで、夫とは満足できなくて、アプリで一緒に楽しめる男性を探していた」と語る。
「平日の日中、子どもと夫が出かけている間に婚外彼氏と会っています。車で県外のホテルに行き、現地集合・現地解散。バレないように細心の注意を払っています」
どうやら「ママ友で車のダッシュボードにGPSを仕込まれて、不倫がバレた子がいた」という。危険と常に隣り合わせだが、それでもやめられないのだ。
ヒス嫁に疲れてセカパを探すも、マッチした女性に騙される
「セフレを探すため」と割り切るミユキさんとは対照的に、会社員のアオトさん(仮名・40歳)が登録した理由は大きく異なる。
「セカンドパートナーが欲しくて登録しました。妻はヒステリーで、家に居場所がなく、話を聞いてくれる女性が欲しかったんです」
しかし、半年続けても、デートの成果はゼロ。マッチングはしたが「夫と別れる気はないけど、お金だけ援助してほしい」という、お金目当ての女性ばかりだったらしい。金銭面の負担も大きいため、やめようと決意したのだが……。
「ある女性とマッチングをしました。彼女は僕にいいね!をくれて、顔写真を送ると『タイプです』と言ってくれました。今までは写真送信後に音信不通になる女性が多く、傷ついていたんですよね」
アオトさんは「写真を送ってレスポンスがないと悲しいので『ごめんなさい』の一言でいいから送ってください」と全員に断ってから送っていたらしい。しかし、その場では了解をしても、連絡が取れなくなる女性が多かったのだとか。
「彼女からは『LINEでやりとりしよう』と言われました。女性からLINEの提案をしてくるなんて珍しいな……と思いましたが、『わざわざアプリを開くのも手間だから』と言われて、教えました」
男性側はアプリを使うだけでお金がかかるため、LINEやカカオトークに誘導して、アプリを休会した後にもやり取りを続けるパターンが多い。しかし、女性は無料なので外部ツールに移行するメリットはなく、むしろ身バレのデメリットの方が強いはずだ。
「でもIDを教えると、彼女とは音信不通になりました。そして業者から大量のLINEがくるようになったんです……きっとIDが売られてしまったんでしょうね」
「安くビットコインを買える」と、申し込んだわけでもないのに、いきなり当選の連絡が来たときは信じてしまい、勤める会社の社長に給料の前借りをお願いしたそうだ。付き合いが長く、彼の事情を知っている社長から「すぐにIDを変えろ」と言われて目を覚まし、このときは被害に遭わずにすんだのだという。
今では別のアプリに移行を検討していると話すアオトさん。彼がセカンドパートナーに出会える日は、くるのだろうか……。
もちろん、すべての既婚者男性がプラトニックな恋愛相手を求めているわけではない。セフレを探すために過去に登録していた、経営者の男性もいた。
「既婚者専用アプリは、つまらくなってやめました。セックスをするだけなら、若い子の方が楽だと気づいたんです。既婚者は重かったですね」とのこと。
目的によって、恋活アプリを使い分ける時代なのかもしれない。
――夫婦関係や結婚についての価値観が、変わりつつある。テクノロジーの発達により、職場や地域などのコミュニティに限定されず、アプリで異性と出会えるようになっている。
しかし、出会うきっかけがなんであろうが、そこからの先の進め方は従来の恋愛と同じはずだ。「アプリでマッチしたということは、身体を重ねる同意がえられたも同じ」という勘違いが、今回のような事件を起こしたのかもしれない。
既婚者たちはどう生きるか、それぞれの価値観が試されている。
出典元
※1 令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/15_all.pdf
※2 令和3年 司法統計年報(家事編) 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別裁判所
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf
※3 【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」
https://www.jex-sh.jp/pdf/japan_sex_survey/sexsurvey2024.pdf
取材・文/綾部まと