【インターハイ】着実に力を付ける注目の大分・柳ヶ浦高校。守備を引っ張る外園兄弟やエースの八尋らが語る初戦の帝京長岡戦やベスト8への想い
そんなサッカー部を取りまとめるのは有門寿監督。3年生の学年主任を務めながらチームを率いている。
そう口にしつつ、ピッチ脇で選手たちの練習を見守る有門監督は、時折特定の選手に「無理するなよ」と声がけしていた。聞くと、コンディションに問題を抱えている選手だとのこと。最終的に選手個人の判断を優先させつつも、いつでも練習を止められるような声がけだった。
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有門監督の視線の先で実際に選手たちを指導していたのは山本隼斗コーチ。山本コーチは中津東高校在学中に3年連続で高校選手権に出場した経験を持つ。特筆すべきは、キャプテンとして出場した3年時の高校選手権93回大会において、1回戦で青森山田にPK戦で競り勝つ番狂わせを演じたひとりだということ。
「インターハイは人生がかかっている大会。進路を切り拓くためにも何がなんでも勝たせてあげたい。自分たちも青森山田に勝ってますし、チームがひとつになりまとまれば不可能でないことを証明できました。あの時の感動をこの子たちにも味わせてあげたいと思っています。帝京長岡は僕が高校1年生の選手権で負けた相手なので、リベンジできるように頑張ります!」
そう話す山本コーチと有門監督は、中津東時代には選手とコーチの立場でともに全国を戦った間柄でもある。そうした縁もあり、有門監督が柳ヶ浦の監督に就いた際に、山本さんにコーチの就任を要請。今に至っている。今年が6年目となる有門監督体制の柳ヶ浦は、昨季の第102回高校選手権で18年ぶりに大分県代表に返り咲き、同校2回目の出場を果たした。また今年2月に行なわれた令和5年度の新人戦でも優勝。直近の大分県内では無双状態が続いている。
そんな柳ヶ浦が練習会場としている平成令和の森スポーツ公園は、人工芝のグラウンドが整備されており、フルサイズのサッカーコートで練習が可能だ。この練習場は宇佐市内の団体であれば無償で借りることができるとのことで、柳ヶ浦は火曜日と金曜日に借りているという。
柳ヶ浦では部活も体育の授業として認定されており、単位が取得できるということで学校からの支援体制も整っていると言える。平成令和の森スポーツ公園で練習するAチームは、マイクロバスに乗れるだけの人数で構成されているとのことで、それ以外の部員たちは高校のグラウンドで練習しているという
あまりないという2日間のオフが明けた7月9日の練習はインターバル走でスタート。規定の時間内でピッチの横幅を走りきるという練習で、きつそうな表情を浮かべつつ、チームメイトを励ます声が部員の間から出ていた。インターバル走で負荷を掛けたあとも、山本コーチの練習は走らせる内容で継続。
続いて行なわれたのは、選手を攻守に分けた、ハーフコートでの速攻の練習。攻撃側が5枚。守備側は3枚に、プレスバックして2枚が後追いで守備に加わるという設定だった。攻撃側はプレスバックの2選手が戻るよりも前にシュートを終わらせた方がよりゴールの可能性が上がるということで、手数を掛けず、シュートまでいくという意識が働いていた。カウンターをシュートで完結させる練習という側面と、心肺的な負荷をかける両方の目的が込められた練習だった。
ちなみに3枚の守備側は、時間を掛けさせてプレスバックの2選手が戻るまで我慢できれば失点の可能性を大幅に減らせる。そういう意味で守備側はいかに遅らせることができるのかが問われていた。
全体練習の最後は、フルコートよりも一回り小さめのピッチ(縦はペナルティエリアを除いた長さで、幅はペナルティエリアのサイズ)での7対7にGKを入れた練習だった。プロの川崎フロンターレでも同じピッチサイズでの練習はよく見られるが、シーズン中の川崎は基本的にGKを含めた11対11の設定で行なっている。
同じピッチサイズであれば、プレーする人数が少ない方がカバーするエリアは広がるということで、選手個々の負荷は高くなる。フィールドサイズは小さいが、選手も少ないため、選手たちは走ることが求められる。当然、オフ明けというタイミングを考えてのもので、意図的に負荷がかかるように設定されたものだと山本コーチは話していた。
炎天下の練習だったが、標高の高さと風が少々出ており、かろうじて過ごしやすさがあったが、それにしても高校生とはいえ大変そうで、練習の終盤には足をつる選手も出るほど。そうした日々の鍛錬の成果をどう全国大会で出してくれるのか、楽しみにしたい。
全体練習後に話を聞かせてもらったのは、昨年の高校選手権を経験した外園優心(ほかぞの・ゆうと)キャプテン。外園キャプテンは練習前のドリンクの準備を率先してやっており、ピッチ外の行動でもチームを引っ張っていた。彼はCBとしてチームを最終ラインから支えている。
「守備は自分ひとりで奪うのも大事なんですが、声で(周囲を)動かして自分だけじゃなくて全員で奪いにいくっていうところをしたいですね。サッカーは自分ひとりじゃ勝てないと思っているので。声で動かして、前の選手、横の選手を見ながらやりたいです」
そう話すキャプテンがディフェンスへの思いを新たにした試合があったという。
「九州大会の神村学園戦で大量6失点してしまって。ゴール前の守備強度にこだわらないといけないなと、改めて思いました」
神村学園戦は前半を1−1で折り返した後半開始早々、失点してしまい、浮足立ったチームを最後まで落ち着かせることができなかったと振り返る。その経験を踏まえ「もっと自分の良さを突き詰めていきたいです」と口にしていた。
さらにインターハイに向けて、「勝ちに行きます」と力強く決意した。
「思い出作りじゃなくて、勝ちにいきます。自分たちはベスト8という目標を掲げているので、まずは1回戦。帝京長岡戦は、神村学園みたいに誰もが、『長岡が勝つ』と思っているはずなので、自分たちはその予想を超えていければなと」
そのために意識しているのは、神村学園との対戦を踏まえた走力やゴール前の質だと話す。
その外園の2学年下の弟も今年GKとして柳ヶ浦に入学している。外園湊心(そうた)だ。
外園兄弟の父・慎二さんは大分高校在学中にGKとしてプレー。3年時には、第81回高校選手権に出場している。その父と同じポジションでプレーしている外園湊はGKだった父の存在について「その影響もあります」と語る。部員数の関係でGKは中学時代から始めたとのことで、得意なプレーは「ロングフィードと、1対1です。一瞬の速さは結構あるかなと思います」とアピールする。
そんな外園湊のインターハイでの目標は「無失点です」。また、初戦の帝京長岡戦については「最後は気持ちなので、常に声を出して、声で守りたいです」と熱い言葉を残した。現在80キロある体重を5キロから10キロ絞りたいと話していたが、本大会までにどこまで身体をベストな状態にできるのか、楽しみなところである。
一方、チームの得点源は、八尋馳(やひろ・はせる)だ。プロの練習にも参加したことがあるというストライカーは本大会に向けて伸ばしたい部分を次のように述べている。
「もっと走れないといけないですし、技術的なところでは継続して、体力的、技術的なところで成長していきたいなと思います」
そのうえでインターハイでは点を取りたいと意気込んだ。
「自分でも最近しっかり点を取れていますし、チームとしてもやっぱり得点っていうのは求められているところだと思うので。FWは点取ってこそのFWなんで。全国でも、相手がどこでもしっかり取るっていうところをやりたいなと思います」
そんな八尋が見る柳ヶ浦は「全員、自我があって、求められているものがある」チームだという。ただし「その自我が試合中に全部出てしまうと、一体感がなくなるので」とのことで「そこはしっかりまとまって、しっかり声かけ合って、チームとして一体感を維持して、そのうえで選手一人ひとりの特長を活かせるようにやれれば、正直戦えると思っています」と話していた。
そんな柳ヶ浦は初戦で戦う帝京長岡にどう対抗するのか。八尋は「自分たちは初戦に対して100パーセントとかそれ以上の力でやらないと勝てないと思うので」と覚悟を口にしていた。
ちなみに八尋は昨季の高校選手権を経験したひとり。
「あの経験があったから全国のレベルを知れたし、自分たちはまだ勝てる状態じゃないと感じたので」
そう当時の経験を振り返る八尋は「去年から出てる選手は、その基準をこのチームにもたらせるようにやってます」と話していた。
そんな八尋の話を聞いて分かったのは、柳ヶ浦には全国での経験が少しずつ蓄積されつつあるということ。そして全国的には無名の高校は、今まさに成長の途上に入ったばかりだということ。全国の経験を継承しつつある柳ヶ浦が臨むインターハイはどんな大会になるだろうか。
取材・文・写真●江藤高志
