餃子の王将社長射殺事件「事件の黒幕」と呼ばれた男のいま

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会社を乗っ取られた

事件から9年のときを経て実行犯の逮捕にこぎつけた京都府警だが、当然、最終的な狙いは「黒幕」を明らかにすることだ。

田中幸雄容疑者(56)が逮捕された10月28日、京都府警の刑事部長らが会見を開き、真っ先に発表したのは、王将が過去に行っていた「不透明な取引」の捜査だった。実際、翌29日には、その取引相手とされる人物が任意で事情聴取されている。

「警察が言う『不透明な取引』とは、王将創業家と関係の深い、福岡のゴルフ場経営者・X氏(70代後半)への資金流出のことです。大東隆行社長(当時72)が射殺されてから2年あまり後の’16年3月、王将の第三者委員会は93ページに及ぶ調査報告書を発表。その内容は、約260億円ものカネが王将からX氏に流出し、そのうち約170億円が未回収であるというものでした」(全国紙社会部記者)

不動産業やゴルフ場経営などを手掛けてきたX氏は、部落解放同盟の大物の異母弟として知られ、資金トラブルに見舞われた美空ひばりの最後の後見人とも言われる人物だ。’70年代後半に創業者である加藤朝雄氏との知己を得たとされ、以来、X氏は反社組織などと王将との間で生じたトラブルの解決を手助けしてきたという。

そうした王将との浅からぬ関係があるゆえに、実行犯の逮捕を受けて再び注目を集めているX氏。「黒幕」と呼ばれた当の本人は現在、どんな生活を送り、何を思うのか。田中容疑者が逮捕される数ヵ月前に会社を閉じ、自宅も売却したとの情報があり、「逃亡した」とも囁かれていたが……。

「福岡のゴルフ場に絡む一件で、Xさんは『詐欺にあって会社を乗っ取られている』と主張している。金銭的な面で自宅を売却したようで、普通に福岡に暮らしています」(王将関係者)

今回の実行犯逮捕以前から、X氏は頻繁に警察からの事情聴取を受けている。事件発生から5ヵ月後の’14年4月初めに京都府警捜査1課から事情聴取を受け、’16年1月には殺人容疑で家宅捜索までされているという。

X氏の知人はこう語る。

「たびたび聴取は受けているようで、『(京都府警の)捜査担当者が変わるたびに、またイチから話を聞きたいと刑事が来る』と愚痴っていました。聴取に対し一貫してXさんが主張しているのは、『自分は断固として無実である』ということです」

公判は維持できるか

では、本当の「黒幕」はどこにいるのか。王将創業家と関係が深かったX氏は、こんなことも語っているという。X氏の知人が続ける。

「’05年頃、王将は中国の大連への進出を始めましたが、『日本から行った幹部が現地の中国人と大きなトラブルを抱えていた』と言っていました」

また、王将から取引を切られた業者が自殺したこともあったという。

もちろんこれらの証言の真偽は不明だが、X氏を「黒幕」とする捜査の先行きが厳しいのもまた事実のようだ。

「京都府警と福岡県警は合同捜査本部を設置しましたが、両者の間にはかなり温度差があります。京都府警はX氏の『黒幕説』をいまだ諦めていない様子ですが、福岡県警はX氏の聴取を通じて新たな証拠を見つけ出すのはかなり難しいと考えています。事件から9年間、さんざんやってきたわけですからね」(福岡県警捜査関係者)

では、今後の捜査の焦点はどこになるのか。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう語る。

「これまでの発表に嘘はないと思いますが、警察が持っているカードをすべてオープンにすることはありません。現場でタバコの吸い殻が発見され、事件発生から2年後にそこに残されたDNAが田中容疑者と一致したことがわかっています。ただ、これはあくまで工藤会系の暴力団幹部が現場にいたというだけ。おそらく警察は、吸い殻を捨てた人間が実行犯であることを結びつける決定的な証拠を持っているんでしょう。これは未確認情報ですが、実行犯が逃走に使用したバイクのハンドルから、硝煙反応に加え田中容疑者のDNAが検出されたという話も入っています。いずれにせよ、犯行を立証できるから警察は逮捕した。その証拠は、公判で明らかにされていくことになります」

実行犯と黒幕、両面から捜査は進められていく。未解決と思われた「餃子の王将社長射殺事件」。その全容が解明される日は来るか。

『FRIDAY』2022年11月18日号より