真の5Gがスタートへ!  5G SAの超低遅延や超多接続を実現するネットワークスライシング技術

写真拡大 (全4枚)

●いよいよ運用が始まった5G SA
KDDIは2月21日、法人向け「5G SA」の商用提供開始を発表しました。
現在「AbemaTV」の一部の配信で実証を兼ねた運用が行われており、今後は他社への提供や個人向け運用も計画しています。
個人向けの5G SAは2022年夏頃の運用開始を予定しているとのことです。

同様に、ソフトバンクは2021年10月から、NTTドコモも2021年12月から5G SAの法人向け運用を開始しており、
楽天モバイルを除く大手通信会社各社が5G SAの商用提供を始めたことになります。

5G SAの「SA」とは「5G Stand Alone(5Gスタンドアローン)」という意味で、5G通信のコア設備から基地局まで、すべてが5G専用の設備で運用されることを意味します。

これまでの5G通信は、厳密には「5G NSA」と呼ばれるもの。
「NSA」とは(Non Stand Alone(ノンスタンドアローン)の略称です。
電波を飛ばす基地局こそ5G設備を用いていますが、そのコア設備は4G通信用の設備を流用したものでした。

5G SAは何が画期的で、私たちの生活をどう変えてくれるのでしょうか。


5G SAとは何か


5G通信がスタートする時、通信各社は4G通信と比較した際のメリットとして以下の4つを大きく掲げていました。

・超大容量
・超高速
・超低遅延
・超多接続

これまでの5G通信では「超大容量」と「超高速」はある程度実現されていました。
しかしながら、「超低遅延」と「超多接続」は、コア設備が4G通信用のものを流用していたために十分には実現されていませんでした。

つまり、5G NSA方式は「表面上だけの5G通信」の状態だったと言えます。

これに対し、5G SA方式ではコア設備からすべて5G専用となり、超低遅延や超多接続にも対応できるようになります。
このことから、5G SAは「真の5G」とも言われています。


ネットワークを完全に5G用にすることで、すべてのメリットを享受できるようになる



●5G SAによってネットワークスライシング技術が花開く
それでは、5G通信が5G SA方式になることで、私たちの生活にはどのような恩恵があるのでしょうか。
例えば以下のようなものが挙げられます。

・オンラインゲームやクラウドゲームの遅延がより少なくなる
・通信が混雑する時間帯でも快適にオンラインサービスを利用できる
・人が多く集まる商業施設でも快適にコンテンツやサービスが利用可能になる

通信の遅延が少なくなることは、一般的な動画配信や音楽配信ではあまり恩恵がありませんが、数ミリ秒の速さを競うオンラインゲームなどであればその恩恵は多大です。

混雑する時間帯などでもオンラインサービスを快適に利用できるかどうかは、
「ネットワークスライシング」と呼ばれる技術の運用に掛かっています。

ネットワークスライシングとは、1つの設備の中を、

・動画配信用
・IoT機器用
・一般回線用

このようにように用途に応じて仮想的に複数の設備に分けることです。
仮想化された設備はそれぞれに干渉や影響を受けにくいため、例えば一般人による通話やインターネット利用によって回線が混雑した場合でも、動画配信をスムーズに行うことができるという仕組みです。

5G通信の特徴となっている「超大容量」や「超低遅延」は、すべてを同時に満たすことは非常に難しい技術でもあります。
そのため、

・動画配信用には遅延が大きくても良い超大容量の回線を割り当てる
・IoT機器向けには通信量が小さい代わりに超低遅延の回線を割り当てる

このように使い分けることが重要なのです。
そして、5G SAのコア設備であれば、これが実現可能になるということです。


1つの通信回線を複数の回線として仮想的に分割(スライス)して運用するから「ネットワークスライシング」と呼ぶ



●2022年は5G飛躍の年へ
「5G通信の大本命」と呼ばれなら、コア設備の導入や調整にかなりの時間を要した5G SAですが、今後は通信機器(コア設備)の交換や増設を加速させ、将来的には通信各社ともに5G NSA方式をすべて置き換えていく予定です。

これまでの5G通信というと、「4Gよりもちょっと速いだけ」というイメージが強くありました。実際、そのような特徴しか発揮できていなかったのが事実です。

しかしながら、5G SAの運用開始によってそのイメージは大きく変わってくるでしょう。

安定した動画配信やIoT機器の安定運用は、5G SAのネットワークスライシング技術を利用者となるパートナー企業がどこまで活用できるのかに掛かっています。
だからこそKDDIは、法人向けの5G SAを個人向けに先駆けてスタートさせました。

通信各社による5Gの商用運用が2020年春にスタートしてから、もうすぐ3年目を迎えます。
5Gはようやく1段目のロケットを外し、2段目のロケットへと点火しました。
ここから5Gの本当の飛躍が始まります。




執筆 秋吉 健