「パスタバル MIKIYA’s 自由が丘」にて

「娘がこのお店の近くの幼児教室に通っていたんです。娘を迎えに来た帰りや待ち時間にママ友たちと、みんなで一緒にパスタを食べ、育児話に花を咲かせていました。憩いの場所ですね」

 東京・自由が丘のイタリアン「パスタバル MIKIYA’s 自由が丘」をこう紹介したのは、櫻井淳子。『ショムニ』(フジテレビ系)シリーズで「魔性の女」を演じ、『特命係長 只野仁』(テレビ朝日系)にも出演し人気を博した彼女だが、実際の性格は真逆だと分析する。

「ボーイッシュな女の子だったので、魔性の女の役が多かったのは、自分では意外でした」

 櫻井は17歳のときにスカウトされ、芸能界に入った。

「高校2年の休日に、埼玉から原宿の竹下通りに遊びに行ったらスカウトされたんです。

 芸能界に興味はなかったので、当時の事務所の社長に『もし売れなかったら、事務所で社員として雇ってください』と直談判しました。

 高校で簿記を学んでいたので、事務所の経理スタッフになるつもりだったんです。高校3年生のとき、進路を学校に提出する際も “就職先” として事務所名を書きました」

■「京都」の現場で自分の甘さを痛感

 デビューから2年後、昼帯ドラマ『誘惑の夏』(1993年、東海テレビ・フジテレビ系)で初ヒロインを務めた。

 1話30分、全65話という “昼ドラ” の撮影は過酷を極めた。

「台本をまとめて渡されて、1週間で5話分を撮影するんです。各話を同時に撮影するので、自分が何話のどのシーンを演じているのか、わからなくなるほどの忙しさ。放送を見て、初めてシーンの繋がりを理解したなんてこともありました。

 でも、過酷な現場を経験して、初めて『女優でやっていけるかも』と思いました。おかげさまで視聴率もよく、この作品に出演した後からいろいろなオーディションに受かり始め、仕事がまわっていくようになったんです。女優という仕事を続けていきたいと実感した作品です」

 清純派女優というイメージが強かった櫻井の転機となった作品が『ショムニ』シリーズだ。当時25歳だった櫻井は、魔性の女子社員・宮下佳奈を演じた。

「プロデューサーも賭けというか『淳子で佳奈ってどうなんだろう?』という感じでキャスティングしてくださったんです。それまで妖艶な役というのは経験がなかったので、妖艶さを研究というか、勉強しました。

 ふだんは歯を見せて豪快に笑うほうだったのですが、この役のために鏡を常に前に置き、控えめな笑顔の作り方、手を顔に持っていくなどの妖艶な所作をひとつひとつ考えていきました。

 あと、目に力を入れて顔の表情を意識しながらお芝居するというのは、常に心がけていました」

 同作で魔性の女というイメージが世間に広まり、同様の役柄のオファーが殺到した。

「女優として妖艶な魔性の女というイメージの広がりは嬉しかったのですが、自分自身とかなりギャップがあったので、くすぐったい感じもありました。

 当時、初対面の方に必ず言われたのが『ドラマの印象と全然違う』という言葉。ちょっと期待と違い、がっかりされている感じもありました(笑)。あの衣装とメイクがないと、魔性の女にはなれなかったんですよ」

「事務所の経理スタッフになるつもりでした」と笑う櫻井淳子

 次の転機となったドラマが2002年から始まった刑事ドラマ『おみやさん』(テレビ朝日系)シリーズだ。8シーズンにわたり警察官・七尾洋子を演じ、櫻井は役者として多くのことを学んだという。

「『おみやさん』で渡瀬恒彦さんとご一緒させていただいた時期は、自分の未熟さを知り、多くを学びました。それまでヒロイン的な役が多く、周囲にチヤホヤされていた部分もあったんです。

 ところが『おみやさん』の京都の現場では、すべてを自分でやらなければならないし、厳格なルールがありました。

 たとえば撮影現場にも、呼ばれて入るのではなく、自分から時間前に入る。そういったことも知らないまま現場に入ったので、自分はこれまで甘い考えで仕事をしていたと思い知らされたんです」

 共演の渡瀬さんとの間には、今でも忘れられないエピソードがあった。

「寒い現場で撮影を待っているとき、あまりに寒すぎて『寒い、寒い』と連発してたんです。そうしたら渡瀬さんに『寒い寒いと言うな!』と厳しく怒られました。

 渡瀬さんは寒空の中、撮影準備にいそしむスタッフを見ながら仁王立ちしていたんです。『スタッフが働いている時間だから』と椅子にも座らずに……。待ち時間も照明さんと話し合ったり、演技以外の部分にも真剣に関わっている渡瀬さんの姿に感銘を受けました。

 それまでは現場でそんな役者さんを見たことがありませんでした。ただ演じるだけでなく、現場全体を考え、役者として撮影スタッフの負担を増やさないことも大切。そこまで意識できなくては駄目だ、と渡瀬さんや京都の現場では学びました」

■あらためて大人の悪女を演じたい

『おみやさん』に出演中、櫻井は30歳で結婚、愛娘も誕生した。

「20代、30代と現場を駆け抜けてきた感じでしたが、子供が出来て意識が変わったんです。子供のそばにいる時間を増やしたいと思うようになり、『おみやさん』をシーズン8で卒業させていただきました。その時期から仕事をセーブして子供中心の生活になりましたね」

 子育てをする過程で女優としての意識にも変化があったという。

「子育てをして仕事のペースを落として、台本をじっくり読む時間ができたんです。より時間をかけ、役にさらに愛情を持てるようになりました。台本をいただくと『この主人公はこういうお母さんだから、このように育ったのだろうか』とか、深い部分まで想像して読み込むようになりましたね」

 成長した娘は、櫻井の大ファンだという。

「中学生の娘がいるのですが、本当にママっ子で私のことを大好きなんです。どの作品を観ても『きれい、かわいい、ママが出ていて嬉しい』と言ってます。作品の感想というか、出ている私に対する気持ちなんですけど(笑)」

 今年でデビュー30周年を迎えた櫻井。これからどのような役を演じるのだろうか。

「20代は悪女や妖艶な役が多くて、30代以降はコミカルな役や、元気いっぱいの女性。最近は落ち着いたお母さん役が増えてきましたが、あらためて悪女役を演じてみたい。『何を考えているのかわからない』ような大人の悪女を演じられたら嬉しいな……」

 櫻井淳子は、一瞬、妖艶な表情を見せた。

さくらいあつこ
1973年1月5日生まれ 埼玉県出身 17歳でスカウトされ、1991年、ドラマ『葡萄が目にしみる』(フジテレビ系)でデビュー。1993年、昼ドラ『誘惑の夏』(東海テレビ・フジテレビ系)で初ヒロイン。『ショムニ』シリーズ(フジテレビ系、1998年〜2003年)など話題作に出演。2022年公開予定の映画『ラストサマーウォーズ』に出演する

●パスタバル MIKIYA’s 自由が丘
住所/東京都目黒区自由が丘1-26-20 笹川ビル2F
営業時間/11:30〜20:00(L.O.19:00)
休み/年末年始
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、記載の営業時間、定休日が変更になる場合があります。

写真・野澤亘伸 ヘアメイク・佐藤トモコ

(週刊FLASH 2021年9月28日・10月5日号)