「準備が全くできない」危険なファウル… 見えないルールが生む“ラフプレー”の解釈の齟齬
アドバンテージで流された、神戸MFサンペールの肘打ちが議論の的に…
スポーツチャンネル「DAZN」で毎週配信される『Jリーグジャッジリプレイ』は4日、今季の第11回を迎えた。
今回、番組内で取り上げられたことによって、一層注目を浴びたプレーがある。
それがJ1第8節、北海道コンサドーレ札幌対ヴィッセル神戸の前半40分のシーンだ。センターライン付近でこぼれ球に反応した札幌MF高嶺朋樹がドリブルを開始し、少し運んだところでチャナティップにショートパス。その直後、後ろから追いかけた神戸MFセルジ・サンペールが、高嶺の首下あたりを肘で押してアフターチャージ気味に倒してしまう。主審は、ボールがチャナティップにつながったことでアドバンテージを適用。しかし、今度はチャナティップがサンペールに倒され、そこで札幌がフリーキックを得ることになった。サンペールには口頭の注意はあったが、イエローカードなどの懲戒罰は与えられなかった。
この場面、議論する点は2つ。一つは、アドバンテージで流されたサンペールの最初のファウルは警告または退場に該当しないのかどうか。もう一つは、新ルールによってアドバンテージ適用時に罰則が緩和されることとなっているが、果たしてこのシーンが当てはまるのかという点だ。
まずはアドバンテージが適用されたサンペールの最初のファウルについてだが、今回初出演である東京都サッカー協会審判委員長の牧野明久氏を含め、出演者の4人中3人が「カードが出るほどでもない」と同じ主張を展開。唯一、MCの桑原学氏のみが「(高嶺の)準備が全くできないファウル」で危険ではないかと訴える珍しい形となった。
Jリーグ副理事の原博実氏は、「やっちゃいけないプレーでファウル」と前置きしつつも「絶対イエローかと言われればそうではない」と見解。牧野氏は「前に人がいて、選手を避けるために出した手。ラフプレーになるようなものではない」と、あくまでファウルの質自体は、警告や退場対象ではないという見解を示した。
ただ、パスをした直後に不意打ちのように後ろから肘で首付近を押していることを考えると、やはり非常に危険なプレーでもあることは確かだ。現にツイッター上では「#Jリーグジャッジリプレイで取り上げて」のハッシュタグを付けた投稿で、番組への感想も含めた多くの意見が交わされている。
警告対象である「ラフプレー」の反則は、「反スポーツ的行為」とは別
ここで考えなければならないのは、「ラフプレー」とは何を指すのかということだ。通常、警告が与えられるファウルとして取り扱われているが、競技規則には似たような表現はあるものの、明確な名称の記載はない。そして今回、注意しなければならないのは、「ラフプレー」が他の反則とは異なる取り扱われ方をしているという点だ。
新ルールでは、今回のようにアドバンテージを適用した場合、流した反則が「決定的な機会の阻止(DOGSO)」ならば、退場だったものが「反スポーツ的行為」で警告になり、「大きなチャンスの妨害、または阻止(SPA)」であれば「反スポーツ的行為」で警告だったものがノーカードに緩和されるようになった。しかし、「ラフプレー」の場合はそれに関係なく、ファウルをした選手に警告が示されることになっているという。牧野氏によれば、そもそも「ラフプレー」の反則は「反スポーツ的行為」と別物なのだという。番組では詳細な説明こそなかったものの、「ラフプレー」は選手を危険に晒すプレーであり、警告する必要があるからこそ別で捉えられていることが見えてくる。
番組では、この新ルールも踏まえてその後も議論が展開されたが、最終的には「ラフプレー」ではなく、「大きなチャンスの妨害、または阻止(SPA)」にアドバンテージを適用したとして、主審が示したノーカードのジャッジを尊重することとなった。しかし、「ラフプレー」の説明で不十分な部分もあったこと、議題となったファウルが危険とも取れるプレーであったことが、1人の視聴者として感じたところでもあった。
今回のように明文化がされていないルールに関する事象では、より明確な説明が必要になるのではないか。ファウルの解釈に“幅”があることも踏まえ、今後はさらに理解が深まるような議論が進むことに期待したい。(Football ZONE web編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)
