25年で半減!? 今後も減少は止まらない? ガソリンスタンドが廃業に追い込まれる理由

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ガソリンスタンドが25年間で半数に減少

 これまで利用していたガソリンスタンド(給油所)が閉店して、給油が不便になったユーザーも少なくないでしょう。

 資源エネルギー庁のデータによると、日本国内の給油所は、2019年3月末時点で約3万か所とされています。もっとも多かった1994年は6万か所を少し上まわっていたので、約25年間で給油所の数は半減しました。

ガソリンスタンドが年々減少している

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 ここまで減った理由を給油所の経営者に尋ねると、以下のように返答されました。

「20年ほど前にはセルフガソリンスタンドの解禁などによって燃料の価格が下がり、薄利多売も加速しました。この後は消防法の改正もあって、ガソリン貯蔵タンクの流出防止対策をおこなう必要も生じています。

 クルマの売れ行きと保有台数は伸び悩みで、燃費が向上したたこともあり、給油量は減っています。これら複数の原因により、給油所の数も減りました」

 もともと給油所は規制で縛られ、自由に設置することはできませんでした。それが1980年代後半から1990年頃に規制が緩和され、給油所の数も増えて、前述の通り1994年には6万か所を超えたのです。

 ここまでは規制緩和が給油所の設置を促しましたが、その後は状況が変わります。1996年に特定石油製品輸入暫定措置法が廃止され、ガソリン、軽油、灯油の輸入が自由化されました。

 1998年には消防法も緩和され、ユーザーが自分で給油するセルフタイプの給油所も営業を開始しました。これらの相乗効果で、燃料の価格が下がり始めました。

 燃料の価格はいろいろな理由で変動しますが、レギュラーガソリン価格は、1995年頃まで120円から130円で推移してきました(当時は消費税抜表示)。それが自由化された1996年以降は110円を下まわり、1997年には100円、1999年には91円まで下がっています。

 1997年4月からは消費税率が従来の3%から5%に値上げされましたが、それでも本体価格が91円なら、税込価格は100円以下です。ユーザーにとっては有り難いことでしたが、セルフスタンドも含めて、給油所の過当競争は一層激しくなりました。

 さらに2011年には、地下の燃料貯蔵タンクからの流出事故を防ぐため、消防法が改正されています。流出対策を施すと500万円から800万円の出費になり、地下貯蔵タンクの入換工事まで実施すれば3000万円から4000万円を要します。

 このように多額の出費が生じると、給油所の存続にも影響を与えるでしょう。複数の事業を手掛ける業者であれば、給油所から撤退することもあり得ます。

 その結果、1994年に6万か所を超えた給油所は、2003年に5万か所に減り、2009年には4万か所、そして今日の3万か所まで急減したのです。

燃費が良いハイブリッド車や軽の台頭でガソリン消費量が減った

 燃料の消費量も減っています。商用車が多く使う軽油はほぼ横這いですが、ガソリンに関しては、2000年代から一貫して減り続けています。

 4輪車の保有台数は、毎年増減を繰り返しながら大きな変化はないものの、新車として売られるクルマの燃料消費量は減りました。

ハイブリッドのパイオニアであるトヨタ「プリウス」(現行モデル)

 2009年に先代のトヨタ「プリウス(3代目)」が登場した頃から、ホンダなど他メーカーを含めてハイブリッドが増えています。

 いまでは日本国内で売られる小型/普通乗用車の内、約40%がハイブリッド(マイルドタイプを含む)や電気自動車など、モーター駆動を併用するクルマになりました。

 また最近は軽自動車の人気も高いです。国内で新車として売られるクルマに占める軽自動車の比率は、1990年頃は25%でしたが、2000年頃には30%まで高まり、最近では40%弱に達します。

 軽自動車の燃費性能も向上しており、10年前と比べると、燃料消費量は約30%削減されています。

 つまりクルマの環境/燃費性能が向上し、燃費の優れた小さなクルマやハイブリッド車に乗り替えるユーザーが増えたことで、ますます燃料消費量が減ったのです。

 クルマの燃費性能は、無限に向上するわけではありませんが、今後も地道な改善は続きます。それによって燃料の売り上げが下がり、給油所がさらに閉店すると、ユーザーは不便を強いられることになります。

 クルマの販売促進も妨げます。給油所のメンテナンスに補助金を交付する事業は既におこなわれていますが、交通インフラの一環として、社会全体で維持していくことも大切でしょう。