勝ち負けを超える、本当にプロレスが楽しい。獣神サンダー・ライガー″最後の自己紹介″前編
令和になってはじめての正月、1月4・5日。その日、ひとりのレジェンドが現役生活に幕を下ろす。平成の始まりとともに東京ドームでデビューを飾り、そして新時代の訪れと時を同じくして東京ドームを最後にリングから降りる−−。その名も、獣神サンダー・ライガー。リングの内外でプロレス愛を炸裂させ続けてきたひとりのレジェンド覆面レスラーは、テンカウントゴングを数ヶ月後に控えるいま、何を思うのか。ライブドアニュース編集部が獣神サンダー・ライガーにインタビューをした。

― ライガーさんは覆面レスラーじゃないですか。だから表情とかはわからない。でもすごく喜怒哀楽、感情が伝わってきます。それはかなり珍しいというかすごいなと思っていまして。そもそもなぜライガーさんは覆面をかぶることを決意したのですか。



獣神サンダー・ライガー(以下ライガー) もともとは素顔で試合をしていたんですけどね、そうすると雑誌とかに自分の顔が載るじゃないですか。それがすごく嫌でね。周りの皆さんからは表情が出ているからいいんだよと言われる。でも、僕は嫌だったんですよ。自分の顔にコンプレックスがあって。僕の若いころだから、高田延彦さんとか前田日明さんとか、そんな人たちの中で俺はこんな顔で嫌だなあって(笑)。だから、覆面の話が来た時はぜひやらせてください、と。プロレスだけですからね、覆面で試合ができるのは。

― でも、覆面なのに感情がビンビン伝わってきますよね…。

ライガー そうですかね(笑)。別に意識しているわけじゃないんですけどね。ただひとつ言えるのは…、僕はプロレスが大好きだってこと。本当にプロレスを楽しんでいるだけなんです。もちろん辛いこともありますよ。練習だって辛いし、試合に負けたら悔しいし。だけど、そういうことも含めてとにかく楽しい。本当にプロレスが楽しいんですよ。

― その楽しんでいる気持ちが、見ている方にも伝わってくるということでしょうか。ではライガーさんにとっての「プロレスの楽しさ」というのは?

ライガー すべてがダイレクトじゃないですか。つまらない試合をしたらブーイングをもらって、いい試合をしたら拍手をもらって。ましてや勝って褒めてもらったら嬉しいし、負けたって「いい試合だった、次頑張れよ」と。お客さん、全然知らない人ですよ? そんな人たちがオレたちを見て喜んだり怒ったり感動したりしてくれるという。そりゃ楽しいに決まっているって(笑)。



― 自分の知らない人から声援をもらうってたまらないですね。

ライガー だからね、最近「差し入れでこういうものは困る」みたいなことを言っている人がいるじゃないですか。あれは信じられないね。だってね、買ってくれる人は働いてお金を稼いで自分で店に行って選んでわざわざ会場まで持ってきてくれるんですよ。それに対して、「これは困る」とか言えるわけがない。ただただありがたい。まあそういうことでね、たとえ負けたってやるだけやって、お客さんにも「次頑張れよ!」って言ってもらって。いや〜楽しいですねえ(笑)。

― ただの勝ち負けではない、お客さんと一緒になって感動を作っていくところというか…。

ライガー そうそう。お客さんにどれだけ満足して帰ってもらえるか。今日の試合はすごかったなあと思って帰ってもらえるか。オレたちはそこに全てを注いでいるんで。ちょっと前は地方に行くとお客さんが500人とかそういうこともいっぱいあったんです。そういうときに、うちの真壁(刀義)が「次にここに来た時は倍のお客さんを入れましょう。そういう試合をやりましょう」と言うんです。お客さんが少ないからといって気の抜けた試合をしたら絶対ダメ。そんなときこそ最高の試合をする。そうすると、次に来ると500人が800人、1000人になるんです。

― そういう思いが今の新日本プロレスの盛り上がりを生んでいるのですね。

ライガー 他団体のレスラーに言われて頭に来たことがあるんです。「新日本プロレスは会社も大きくてお客さんも入るからいいですよね」って。いやいや、お前らそれをキープするためにどれだけしんどい思いをしているのがわかっているのか。何もしなくてお客さんが入ってくれるならそんな楽なことはない。2回目、3回目、どんどんお客さんの期待を上回っていかないとダメなんだから。

― それをライガーさんや新日本プロレスのレスラーたちはやってきた。

ライガー 恐竜と同じですよ。恐竜ってデカくて強いけど、餌がなくなるとパタっと一番最初に死んじゃう。オレたちも同じで、レスラーだけじゃなくて社員もみんな必死にやっている。そういうことをわかっているのかどうなのか、勝手なことを言うなって思うんだよね(笑)。



― 新日本プロレスのそうした伝統のようなものは、ライガーさんたちが受け継いできたものですよね。

ライガー 若い頃にアントニオ猪木さんの付け人をさせてもらっていたんですけどね、よく言われたのがプロレスラーは馬鹿じゃできない、と。わかるかお前?と言われたんですけど、全然わからねえ(笑)。でも今の歳になると、わかってくるんです。猪木さんもそうだし、坂口征二さんとかマサ斎藤さん、長州力さん、藤波辰爾さん。いろんな先輩方が言っていたことってこういうことだったんだなと。

― 例えばどんなことを…。

ライガー 猪木さんがリングサイドで若手の試合を見ているときに、横にいると「お前ならこの場面どうする」「この会場の雰囲気をどうする」と聞かれるんですよ。でもデビューしたばかりのオレがわかるわけないじゃないですか。だから「わかりません」というと、事細かに教えてくれるんです。まあ、笑ってごまかされることもよくあったんだけど(笑)。そういうところから、単に試合に勝つ負けるだけじゃなくて、雰囲気をどうつくっていくか、見せていくかという意識が植え付けられたのかなあと。あとは、マサ斎藤さん。「お前はできる技を全部出さないと気が済まないのか?」と怒られて。



― それではダメ、ということですか。

ライガー ねえ、そう思いますよ。いろんな手練手管を使って試合に勝ってお客さんも喜んでいる。だからそれでいいんじゃないですかと。でもそうじゃないんですよ。ただ単に技をやればいいというわけじゃない。例えば極端な話、ヘッドロック。お客さんが帰るときに、「あいつのヘッドロック凄かったなあ」と印象に残さないとダメなんです。お客さんの印象に残る技を選ばないとダメなんだということですね。若いころはまったく意味がわかりませんでしたけどね(笑)。


(ライガー選手がロメロ・スペシャルを繰り出している場面。観客が盛り上がる技のひとつで、プロレスに詳しくない人でも知っている人が多い技。 写真提供:新日本プロレス)

― 勝ち負けを超えた部分のプロレスの魅力を伝えていくという、まさにプロ意識ですね。それが今のライガーさんや若い選手たちにも受け継がれているということでしょうか。

ライガー ただ勝ち負けだけだったらアマチュアなんですよ。オレたちはプロだから。もちろん相手もプロのレスラーなんだから得意技を見せたいと思っても簡単にはかけさせてくれないですよね。そうするとお客さんがブーイングしたりして。そうやって会場を盛り上げる。猪木さんが言っていましたよ。「掌にお客さんを乗せて転がせ、喜怒哀楽ぜんぶ作ってやるんだ」。そういうことだよね。指の先っちょまで神経を尖らせて。ミスタープロ野球の長嶋茂雄さんが三振するときのポーズの練習をしていたっていう話があるでしょ。この話にも感銘を受けましたね。こういうのがプロなんだ、と。オレたちはプロとしてリングに上がっているんだから、お客さんを絶対に満足させないといけない。そのためにはできることはなんでもする。それがレスラーなんですよ。

(後編に続く)
【後編】カッコよく自分らしく引退、若手レスラーへの愛。獣神サンダー・ライガー″最後の自己紹介″(11月2日12時公開)

撮影:森カズシゲ/文:鼠入昌史/編集:ライブドアニュース

<大会情報>
イッテンヨン チケット情報・対戦カード
https://www.njpw.co.jp/tornament/197798
イッテンゴ チケット情報・対戦カード
https://www.njpw.co.jp/tornament/197799
イッテンヨン・イッテンゴ 特設サイト
https://www.wrestlekingdom.jp/