TikTok、反中動画を検閲か。「5月にポリシー変更済み」の説明も
女子学生から中年男性、さらにその上の世代にまで人気が広がっている短尺動画共有プラットフォーム「TikTok」ですが、これが中国生まれのサービスだということは意外と知られていないかもしれません。

The Guardianは、TikTokの運営元である Bytedanceがモデレーター向けに配布している詳細なガイドライン資料にて、天安門事件やチベット独立支援など中国の外交政策に都合の悪い動画を検閲するよう指示していると報じました。TikTokが検閲対象としている内容の大半はガイドラインの「差別発言と宗教」の規定部分に含まれ、たとえば天安門事件と同様のものとしては1998年のインドネシアでの暴動、中国が支援していたカンボジアのポル・ポト政権による大虐殺なども含まれます。また世界各国のリーダーも、特定の人物がリストにまとめられて検閲対象になっているとのこと。さらに、宗教関連では中国政府が禁止した法輪功に関連するものなどが含まれます。

もしこのような内容を含む動画をTikTokに投稿した場合、一部コンテンツはガイドライン違反としてフラグを立てられ、サービスから完全に削除されます。また投稿したユーザーにもアカウント取り消しなどの措置が及ぶ可能性があるとのこと。

一方で、検閲対象となる内容を含むものの問題性の度合いが少ないと判断された動画の場合は、削除まではされないもののやはりそれ用のフラグを立てられ、アルゴリズムによるキュレート対象から外され、人々の目に触れる機会が少なくなるよう操作されます。これにはユーザーが検閲されているのに気づきにくくする意図も含まれるとThe Guardianは説明しています。

気になるのは、ガイドラインが検閲対象としている各国リーダーの一覧。マハトマ・ガンジーやバラク・オバマ、ドナルド・トランプ、ウラジミール・プーチンらが含まれているのはわかるものの、北朝鮮の3代にわたる指導者らも含まれているほか、日本の安倍晋三総理大臣の名前も記されているとのこと。そして中国の習近平国家主席までリストに入っているのは、批判する内容の動画が流通するのを抑えるためでしょうか。

なお、ByteDanceは、5月にガイドラインを廃止したとThe Guardianに対して主張しており、現在では地域固有のモデレーターとポリシーの両方を用意して、より「ローカライズされたアプローチ」をコンテンツモデレーションに採用していると続けています。

しかし、Washington Post紙は先週、今月初めに行われた調査から香港の「逃亡犯条例の改訂案に対する抗議デモ」に関連する動画がTikTokでは見つからないことを伝えました。これは中国の意向に沿った検閲が、インターネットを通じてじわりと世界進出していることを示す例と言えるかもしれません。