「コートでもコート外でもプロとして、どうやってやっていくかというのを学べたんじゃないかなと思います」 

 そんな大会終了後のコメントどおり、NBAサマーリーグに初めて臨んだワシントン・ウィザーズの八村塁は、十分に手応えを掴んだようだ。

“NBAを目指す若手選手の登竜門”と呼ばれるサマーリーグの舞台で、ドラフト全体9位でウィザーズに指名されたルーキーは3戦に出場。平均31.7分をプレーし、19.3得点、7リバウンド、1.7ブロックという成績で今リーグのセカンドチーム(=オールスターチームのNo.2)に選出された。


サマーリーグで十分に存在感を示した八村

 とくに、現地時間7月6日のニューオーリンズ・ペリカンズ戦で14得点・5リバウンド、8日のブルックリン・ネッツ戦で19得点・7リバウンド、11日のアトランタ・ホークス戦で25得点・9リバウンドと、試合ごとに得点とリバウンドの数字をアップさせたことは大きい。

「サマーリーグはNBAに入るために(実力を)見せる選手がいっぱい来ている場所。そういう中でもちゃんと結果を出せてよかった」と語った八村の表情からは、安堵と自信が感じられた。

 もっとも、3試合の中では課題とされる部分も見えてきた。初戦では確かに数字こそ及第点だったものの、前半はFGが1/6とシュートがなかなか決まらず、ゲーム全体でも同6/16と精度が高いとはいえなかった。続くネッツ戦でも、第1、第3クォーターは無得点。ほとんどプレーに絡まず”消えている”時間帯も多く、試合後には本人も「反省点が多かった。まだ慣れていない感じはある」と述べていた。

 ホークス戦でも開始当初はなかなかリズムに乗れず、前半は6得点のみ。ウィザーズのガードの選手たちが意識的にボールを渡さない限り、貢献の術を見つけきれていないことは改善点といっていい。このように、いい部分と課題の両方が見えてきた3試合でもあった。

 そんな八村の実力を、サマーリーグが開催されたラスベガスのトーマス&マック・センターに陣取った専門家はどう見たのか。今回のトーナメントを終え、NBA 某チームのスカウトに意見を求めた。

「サイズ、身体能力、多才さゆえに、八村はウィザーズでもすぐにプレーする機会を得るだろう。体格はすでに立派な”NBAボディ”だし、とくにオフェンス面では信頼できる長所が多い。ミドルレンジのシュートは武器になる」

 強靭な体と稀有なバネを持つ21歳は、ドラフト前から「フィジカル面はプロレベルでも問題ない」という評価が多かった。2年目、3年目の選手を相手に当たり負けしなかった今回のサマーリーグで、それは裏付けられた。だからといってこのスカウトも、八村がNBAでもすぐにハイレベルな数字を残せると太鼓判を押しているわけではなかった。

「NBAでの成功のためには、アウトサイドからのシュート力とボールハンドリング能力を示しつつ、ポストプレーもこなし、イン&アウトの両方でプレーできることを証明しなければいけない。サイズ的にはSFとPFの間くらい。NBA では3ポイントシュートが打てる、いわゆる”ストレッチ4(アウトサイドからでもシュートが打てるPF)”としてやっていくことになるのだろう。だとすれば、少なくとも標準レベルで3ポイントシュートを決めることが必須になる」

 ウィザーズは、スモールラインナップ時のPFとして八村に期待をかけている――。そんな声はドラフト直後からあったが、その青写真どおりの働きを見せたのが11日のホークス戦の後半だった。

 前述どおり、この日の八村の立ち上がりは必ずしもスムーズではなかったが、後半に一変した。第3クォーターの残り8分強に3ポイントシュート決めて以降、視界は劇的に広がっていった。

 今大会初のスリー成功で波に乗った八村は、その後にプルアップジャンパー(ドライブからドリブルを止めて打つミドルシュート)、3ポイントなどで、このクォーターだけで10得点。続く第4クォーターにもアリウープ・レイアップ、ミドルシュート、フリースローを正確に決め、後半だけで19得点という”支配的”なパフォーマンスを見せた。

 得点を量産できた理由は、本人の硬さがついに取れただけではなかったはずだ。第3クォーターに2本の3ポイントを決めたことで、相手ディフェンスも八村のロングシュートを警戒せざるを得なくなった。おかげで、ペリミター(3ポイントラインより内側でペイントエリアより外側のエリア)で自由に動ける攻撃スペースができたのだろう。

 試合後、サマーリーグでウィザーズのHCを務めたロバート・パックは、目を細めて次のように語った。

「彼はインサイドでもアウトサイドでも異なるポジションをプレーでき、アイソレーション(得点能力に優れた選手が1on1をしやすくするための戦術)もできる。エルボー(フリースローラインのどちらかの端)からでもプレーできるし、ドライブもできる。彼に何ができるかのアイディアを得るため、いろいろなことをやっているのを見たかったが、今日の彼はさまざまな位置から得点してくれた」

 実際に、ホークス戦後半の八村の働きはインパクトが大きかった。NBA の舞台において、八村がロングシュートを安定して決めることの重要さをわかりやすい形で示したと言える。

 NBAの本シーズンでは相手ディフェンスもより厳しくなり、それに対する適応が必要になるが、求められる部分は基本的には変わらない。今後も及第点の精度で3ポイントシュートを決められれば、相手ディフェンス陣のマークを分散させることができる。

 そうなれば、ホークス戦で見せたような高得点も可能。逆にロングシュートがなかなか決まらずに苦しむようなことがあると、攻撃の選択肢が減り、サマーリーグ最初の2戦のように”消えている”時間帯が長くなるかもしれない。

 それらを実践で確認できたことは価値が大きい。今後のトレーニングの指針も明確になるだろう。いずれにせよ、サマーリーグの舞台が、NBA本格デビュー前の八村に収穫をもたらしたことは間違いない。