自身のPK失敗もあって、アンデルレヒトでのデビュー戦を勝利で飾れなかった森岡。試合後は苦虫を噛み締めながらもしっかり前を見据えた。(C)Getty Images

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 アンデルレヒトでのデビューマッチを終え、更衣室から出てきた森岡亮太は開口一番、「相当、悔しいですね」と厳しい表情で語った。メヘレンを相手に2対2で迎えた81分、森岡の蹴ったペナルティーキックはミスショットとなって左へ外れたのだ。
 
「緊張はしました。だけど悪いフィーリングも無かった。思いの外、(キックが)インに入り過ぎちゃったという感じがしました」
 
 サッカーの世界には「PKをミスするのは蹴った者だけだ」という言葉がある。言い換えれば、PKを蹴る勇気のない者はミスもしない。だから、メヘレン戦で森岡を第1PKキッカーに指名したハイン・ファン・ハーゼブルック監督は、決して森岡のPK失敗を責めなかった。
 
 とはいえここ数シーズン、アンデルレヒトは「PKを苦手とするチーム」として知られており、指揮官たちを悩ませてきたのも確かだ。直近の3本のPKもハニ(現スパルタク・モスクワ)、サイーフ、森岡と全て失敗に終わっている。
 
「モリオカは責任を持ってPKを蹴ったのだから、失敗に対して私は何もコメントしない。『次は自分が蹴って決める』という選手がいたら申し出てほしい。私はオープンだ」(ファン・ハーゼブルック監督)
 
 アンデルレヒト対メヘレン戦のキーポイントとしてフォーカスされた森岡のPKだが、素晴らしいアシストもあった。
 
 開始10分、左CBデスハフトのロングフィードを、DFラインの裏に走りながら受けた森岡は左足ダイレクトでクロスを入れ、ガンボウラのヘディングによる先制ゴールをお膳立て。森岡のキックテクニックが光ったシーンだが、ボールを受ける前に首を振りながらしっかりゴール前の状況を把握していたのも隠れたファインプレーだった。
 
「彼(ガンボウラ)がいるのは分かってました。あとは彼がどう動くかという最後の予測(が必要)だった。良い所にいてくれて良かったです」
 
 デスハフトからの縦パスを相手DFラインの裏で受けたアシストシーンでの動きは、「練習でやっていたこと」と言う。森岡が倒されてPKを奪ったシーンでは、前線でガンボウラがつなげたボールを拾い、そこからドリブルを仕掛けて生まれた。この一連の流れも「練習でやっていた」と振り返る。
 
 まだ全体練習に合流して3日ということもあり、周りとの呼吸があってないようにも感じられたが、それでも森岡は練習の成果を随所で披露していたのだ。
 
「べベレンのシステム(4-3-3。森岡はトップ下)と、アンデルレヒトのシステム(3-4-2-1。森岡は2シャドーの左)は違います。だからといってアンデルレヒトのシステムが難しいわけではない。あるのはシステムの違い。だから、もう少し時間をもらえれば大丈夫だと思います」
 
 試合のあった日はあまり眠れないという森岡。メヘレン戦後、「いつも寝れませんけれど、今日はもうあのシーンが何度も出てきそうな」と悪夢を恐れて苦笑いした。森岡の夢には是非とも10分の鮮やかなアシストシーンが出てくるのを祈り、そして次のオーステンデ戦に向けて良いイメージで準備することを期待したい。
 
取材・文●中田徹