平成生まれは「8センチCDのケースは折れる」ことを知らない... 青春の90年代「小さな円盤」の思い出
江古田の中古レコード屋を覗いていたら、今どき珍しいものを見つけた。8センチCDだ。

今や懐かし。8センチCD用の縦長ケース
チャゲアスに小室プロデュース勢、WANDS......90年代を代表する曲の数々が、1枚100円で無造作に積み上げられている。
そういえば、昔はシングルって全部このサイズだったなあ。小学生のとき(筆者は1986年生まれ)「WHITE BREATH」買ったっけ。いつの間にかなくなったよね。
漁ってみると、1枚のCDに目が留まった。

折られた状態だとこうなる。省スペース
「CDケースの下半分を折ってる......」
何歳から下だと通じないの?
記憶のドアがばーん!と開いた。そうだ! そういえばそうだった! あのころの8センチCDのケースって、下半分が折れるようになってた! 僕もWHITE BREATHのケース折った!
懐かしさにテンションが上がって後日、数歳下の後輩編集者に、「君は折ってた? シングルのケース!」と聞いてみた。すると、
「......折る?」
聞くと、彼の世代だと8センチCDは「家にはあったけど......」というレベル。自分で買ったことはないし、折ってるのなんて見たことない、というのだ。
あれ? 「8センチCD」についての思い出が共有できるのって、僕らの世代がギリギリ最後なの?
「彼氏から初プレゼントがtrf」「ポケビのCD買った」
リサーチのため、読者に「8センチCDの思い出」を聞いてみた。まずは、愛知県のAさん(30代女性・主婦)から。
「初めて聞いた8センチCDは、trfの『masquerade』(95年リリース)でした。中学校2年生の時に初めてできた彼氏にもらいました。当時は、音楽やファッションにも興味がなかったので、プレゼントされたCDはとてもうれしかった思い出です」
なんとも甘酸っぱい。続いて、神奈川県のBさん(20代女性・主婦)。
「学校で発表するダンスがSPEEDの『White Love』(97年)だったので、家で練習するために初めてCDを購入しました。今でも実家の押入れに入っています。親からは捨てろと言われていますが必死に貯金していた自分のお小遣いで買ったので、懐かしく思ってなかなか捨てられずにいます」
おそらく同じ世代の千葉県のCさん(20代女性・主婦)は、初めて買ったのがポケットビスケッツのシングルだった。
「当時、私は小学生だったので、あのサイズ感が自分にピッタリで気に入っていた記憶があります。普通のサイズのCDはアルバムがほとんどだったので、大人じゃないと買えないイメージが勝手にありました」
なんとなくわかる。最後に、京都府のDさん(30代女性・主婦)からの証言。
「8センチCDは紙ジャケットだったので、そのまま棚にしまったり友人に貸したりすると紙部分がへたる恐れがあります。大切なCDを良い状態で置いておきたかったので、すっぽり入る縦長のプラスチックケースを買って、その中に入れて保存していました」
あった! 確かにあった専用のケース。プラスチック製の透明のヤツ。最後の方は100均に山積みにされてたっけ。
ボーダーラインは昭和と平成の間?
と、こうして投稿を見てみると、やっぱり8センチCDが懐かしいのは、20代後半〜30代が中心みたいだ。
ちなみに8センチCDが登場したのは1988年。では「消えた」時期はいつごろだろう。
モーニング娘。の場合を見てみよう。まず、1999年9月リリースの「LOVEマシーン」は8センチ。2000年1月の「恋のダンスサイト」も8センチ。ところが、2000年5月の「ハッピーサマーウエディング」は12センチだ。どうやらターニングポイントは、2000年ごろらしい。
CDを自分で買うようになるのって、10〜12歳くらいだろうか。つまり、1988〜90年生まれくらいが「8センチCD世代」と「最近の若者」の境界線ということになる。
Jタウン探検隊、屋内で聞き込み
よし、実証だ。仕事をしている同僚や後輩たちを片っ端から捕まえて回る。「Jタウンネットが、またなんか始めた......」という目で見られつつ。

寒いのでしばらく使っていなかった「Jタウン探検隊」企画用の帽子を久しぶりに引っ張り出す。ただし、今回は室内である
(問1)君は8センチCDを知っているか?
(問2)8センチCDのケースが「折れる」ことは知っているか?

仕事中で忙しいにもかかわらず質問に答えてくれた若手記者の皆さん
質問はこの2つだ。1979〜96年生まれの、計13人が答えてくれた。
まず、問1については、全員が「知ってる」。最年少の96年世代も「見たことはある」とのことで、とりあえず一安心だ。
で、問題は2つ目の質問です。
まず、90年生まれの男性。
「えっ、折るんですか!? いやー、それは知らなかったです!」
92年生まれの女性。
「へー、聞いたことないですねー」

世代が下がるごとに「ナニコレ」感が強まっていく
93年生まれの男性。
「折るってどういうことです? なんの意味があるんですか?」
いや、折ることでサイズが小さくなって、収納が楽に......。
「でも、ジャケット曲がっちゃいますよ?」
うん、だから上半分にタイトルとかが書いてあることが多かったんだけど......。あれ、言われてみれば折る意味あったのか? うーん。

めげずに聞き込みを続ける
見事に「昭和」と「平成」で別れた
気を取り直して。
96年:知らない
93年:知らない
92年:知らない
91年:知らない
90年:知らない
89年:知らない
88年:知ってるけど折ったことはない
86年(筆者):知ってる。折った
仮説通りだ。88年と89年の間に、「知ってる」と「知らない」の壁があった。昭和と平成!
周りで聞いただけなので、「昭和生まれだけど知らない」「平成生まれだけど知ってる」という人も多そうだけど、モー娘。の切り替わりの時期なんかを見る限り、そんなに大きくは違わないはず。というわけで、8センチCDを見ていろいろ語り出したら、そいつは昭和生まれだと判断しよう。

ということで、15年ぶりくらいに折ってみた
1990年代を駆け抜け、消えていった8センチCD。僕たちがちゃんと思い出は語り継ぐから、安心して眠ってください。

指を突っ込んで遊んでいると、時々抜けなくなるくらいの微妙な大きさの穴
ところで、この折ったケースの下半分、どうしましょう。
あなたが「ジェネレーションギャップ」感じた瞬間、募集しています
Jタウンネットでは、あなたが「ジェネレーションギャップ」を感じた瞬間に関するエピソードを募集しています。寄稿フォームないしはメール(toko@j-town.net)で、お住まいの都道府県、あなたの年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。採用者には、Amazonギフト券300円分を進呈します。
なお、いただいた投稿の一部を改変・編集する場合があります。あらかじめご了承ください。