学生の窓口編集部

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満月の夜に変身する「狼男」や、月に帰ってしまう「かぐや姫」の物語など、洋の東西を問わず、古来、月には不思議な何かがあると考えられてきました。

物語の真相はともあれ、巷には、「満月になると落ち着かない」とか「新月になると頭痛がする」という人もいるようです。

気のせいと思いきや、アメリカの医学博士アーノルド・L.リーバー氏によれば、月には人間の身体や精神に影響を及ぼす大きなチカラがあるのだといいます。たとえば、強姦、ひったくり、暴行、強盗、窃盗、自動車泥棒、家庭内暴力、酒乱などの頻度は、満月の時に増加する傾向があるのだとか。

交通事故死に関しての調査では、上弦と満月の間にピークがあり、その次は下弦の頃にピークがあったそうです。

月齢と交通事故の関係については、日本でも、兵庫県警察本部交通企画事故統計係に勤務していた黒木月光氏によって調査がされています。

それにより、「暴走型」で死亡事故に至るような大事故は満月と新月に集中して発生していて、「うっかり型」の死亡者を出さないような人身事故は上弦・下弦の月のときに集中していることがわかりました。

これは、全国の人身事故約580万件、死亡事故約9万5000件ものデータに基づくもので、きわめて信憑性の高い調査研究結果だと言えます。ちなみに、黒木月光氏のお名前(つきみつ)は本名だそうです。

それにしても、月齢によってなぜこのようなことが起きるのでしょうか?アーノルド・L.リーバー氏はこれを「バイオタイド(生物的な潮汐)」という考え方で説いています。

80%の水分と20%の陸でできている地球が、月の引力によって満潮や干潮といった影響を受けるように、約3分の2が水分である人体もまた月の影響を受けているのではないか、というものです。

人は水を飲んで水分補給をする一方、水分の排泄を行ないます。このバランスが乱れ、もし短時間でも排泄がストップしたら、体内に水分が溜って、組織に過剰な負担がかかってしまいます。すると、一時的にではあっても人格が変わることさえあるのだそうです。

つまり、月の引力によって体内の水分のバランスが乱れることで、精神や肉体に様々な影響が及ぶというわけです。

米フランクリン・ピアス大学保健所長のバーバラ・スペンス氏の月齢の研究によれば、満月や新月とは逆に、上弦や下弦時には人々はおだやかなのだとか。そのため、イベントの開催等は(異常な興奮による暴動化などを防ぐため)上弦や下弦時に行なうべきと提唱しています。

精神面のみならず、肉体的にも月齢は私たちに影響を及ぼしているようです。イリノイ大学医学部薬理学科教授ラルフ・W・モリス氏らにより、満月と新月時には出血が異常に多くなる傾向が確認されています。じつは古代ユダヤでは、外科手術など出血をともなう医学的処置が月齢によって制限されていたといいます。

こうした例をみていくと、人のチカラでは抗うことのできない大自然の摂理ともいうべく、何だか私達の心と体は月に支配されているかのようにも思えてしまいませんか。だとしたら、その摂理を知り、上手に活用していくのが得策と言えるのかもしれませんね。

(文・鈴木ゆかり)

参考

『月の魔力』(A・L・リーバー著/東京書籍)『「月と交通事故の関係』交通事故発生に関する統計的考察1982-1991』(黒木月光・論文)『旧暦と暮らす』(松村賢治著/ビジネス社)