日本一厳しいビーチ? 飲酒、音楽、タトゥー禁止「逗子海水浴場」利用客の声を直撃
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今回のテーマは…
<横浜のココがキニナル!>
今シーズンからビーチでの飲酒や音楽、タトゥー・刺青が全面禁止された逗子海水浴場。利用者の意見は? 海の家の経営者はどう思っている? 市の対策は?(はまれぽ編集部のキニナル)
■日本一厳しいビーチ
7月22日(火)に梅雨明けし、本格的な夏が到来している。
毎年、海水浴客でにぎわう湘南地方だが、例年とは少し様子が違うビーチがある。今年3月に“日本一厳しい”条例を施行した逗子海水浴場だ。
逗子海水浴場は、逗子市出身の人気アーティスト・キマグレンが出店した海の家形式のライブハウス会場「音霊(おとだま) OTODAMA SEA STUDIO」が風物詩となり、若者を中心に多くの海水浴客が詰めかけ、2012(平成24)年には過去最高となる73万2000人(逗子市発表)が足を運んだ。
しかし、音楽イベント時の重低音や、海水浴後に近隣のマンションや住宅に侵入して水道を使ったり、飲酒後に大声で騒ぎ、ごみを捨てていったりするなど、イベント目当てに集まる客のマナーの悪さが目立つようになった。また、2013(平成25)年7月には海水浴場の近くで人が亡くなる事件も発生した。
この事件や住民の声などを受け、逗子市は2014(平成26)年3月、「安全で快適な逗子海水浴場の確保に関する条例」を施行した。
条例に罰則規定はないが、これまで海水浴場内では全面可能だった飲酒を海の家だけでのみ許可するとしている。音楽については楽器、拡声装置を使うことを禁止したほか、刺青やタトゥーについても事業者だけでなく、利用者の露出も禁止。
さらに、これまで午後8時30分閉店だった海の家の営業時間を2時間早め、午後6時30分閉店とした。
逗子市の平井竜一市長は、この条例を「日本一厳しい条例」と銘打ち、逗子海水浴場を「一度リセット」することで新たなルール作りをめざしている。
市経済観光課の鈴木仁係長も「逗子は本来、遠浅で波が静かなのでファミリー向けのビーチ。『(音楽や飲酒でなく)海水浴を楽しむための海水浴場』にリセットした。
5年後、10年後という中長期的な逗子の海水浴場のあり方を考えている段階」と話していた。
逗子市では関係者や市民をメンバーにした「逗子海水浴場のあり方検討会」を設立しており、規制の内容が妥当なものかなどについて、引き続き話し合いを続けていく考えという。
■客数75%、売上80%ダウン?
では実際、海の家を経営する人や利用客は「リセット」した逗子海水浴場をどのように感じているのだろうか。
お話を伺ったのは、逗子海岸営業協同組合代表理事の原淳さん。原さんが営む海の家「Field&Sea(フィールド アンド シー)」では、客足は去年の2割以下といい、予定していたスタッフの数も大幅に削減したという。
事実、逗子市がまとめている海水浴場の利用客は、海開きをした6月27日から7月21日までで約2万6000人(速報値、前年同期比は約7万4000人減)と大きく落ち込んでいる。
原さんは「家族連れ、特に子どもが安心して楽しめるというのは当然大事だが、規制が厳しくなりすぎて客足が遠のくことが心配。あらゆる世代が楽しめるビーチを目指して市と話し合いを続けたい」としている。
■利用客の反応はさまざま
一方で、利用客の声はさまざまだ。
毎年、逗子海水浴場を訪れていて、今夏初めて訪れたという30代男性と20代女性のカップルは「テレビで見て規制は知っていたけど、ここまでひどいとは思わなかった。タトゥーは理解できるが、ビーチでお酒も飲めない、音楽もないではつまらない。もう来ない」と厳しい意見。
ただ、ビーチから徒歩5分ほどのところに住み、子どもがいる30代男性によると「静かになったというか、品が良くなったというか。昔の逗子に戻った感じ」という。
子どもが友達同士ということで、グループで来ていた母親も「ビーチだけでなく、駅や周辺商店街もおとなしくなった。安心して子どもを連れて来ることができる」と条例に肯定的だった。
また、逗子海水浴場から10kmも離れていない江の島海岸(藤沢市)では、海の家から音楽がかかり、ビーチでの飲酒も可能だ。江の島海岸でお酒を飲みながら海を楽しんでいた女性同士のグループは、「海の家から音楽がなかったり、お酒がないというのは寂しい気がする」と話していた。
市担当課も「海水浴客の誘致による経済活性と同時に、地域住民や飲酒の影響による事故や救急搬送など、利用者の安全・安心も守るというアクセルとブレーキを同時に踏まなければならないもどかしさもある」と話している。
その上で「昨年までのあり方が逗子として正しい姿なのか、日本一厳しいという今の方がいいのか引き続き検討していきたい」と話す。
■取材を終えて
家族の目線から見れば安心なビーチも、夏ならではの海を楽しみたい人たちからみれば物足りなさを感じるかもしれない。
「リセット」した逗子海水浴場がどのような姿になっていくのか、注視したい。
※本記事は2014年7月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。