テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より

さっきから、メガネが見つからない。この狭い部屋で、いったいどこに消えたというのか。
私は探すのを放棄して仰向けになった。ぼんやり霞む天井を見つめる。

メガネ。華やかさに欠ける言葉の響きが、地味な印象を与えがちなあの器具にピッタリである。
これがもし、別の呼び方をする世の中だったら、イメージはだいぶ違うものになるだろう。

私はメガネから、あるタレントをよく思い浮かべる。昭和の漫才師、横山やすしさんだ。
床にあるメガネを手探りしながら、「メガネ、メガネ」と発するやすしさんを、どうしても連想するのだ。
つまり、こんな方程式が頭の中にある。

メガネ = やすしがギャグに使用する器具

今回は、メガネの呼び方を「やすしがギャグに使用する器具」略して「やすし」に置き換えて、
いくつかのシチュエーションを想像してみた。会話形式でご覧いただこう。

Situation.1 キャンパス

学生A:「安藤くん」
学生B:「えっ…………」
学生A:「もう。私よ、私」
学生B:「戸部さん?」
学生A:「そう」
学生B:「びっくりした〜。一瞬、誰かと思った。やすし、掛けてないから」
学生A:「そんなに驚かなくたって。これからゼミに行くところ?」
学生B:「うん」
学生A:「私も」
学生B:「今日はコンタクトなんだ?それとも、レーシックをしたとか?」
学生A:「違うよ。別に視力なんて悪くないし」
学生B:「あれ?じゃあ、いつも掛けてるやすしは?」
学生A:「ああ、あれは伊達やすし。言ってなかったっけ?」

Situation.2 家庭

少年:「ただいまー!」
母親:「おかえり、和彦」
少年:「行ってきまーす!」
母親:「あらあら、忙しいわね。どこに行くの?」
少年:「よっちゃんたちと市民プールに行ってくる!」
母親:「気をつけてね」
少年:「あっ!いけね!」
母親:「どうしたのよ」
少年:「水中やすしを忘れるとこだった!」
母親:「ほら、慌てるからよ」

Situation.3 職員室

生徒A:「なんすか?呼び出したりして」
生徒B:「先生よぉ、俺らもそんな暇じゃねぇんだけど」
教師:「いいから、そこに座れ。……………………あのな。先週の金曜日に江南中の1年生がショッピングセンターで不良にカツアゲされたそうだ」
生徒B:「それが俺らとなんの関係があんだよ!」
教師:「話を最後まで聞け。それで、その生徒によると、相手はうちの学校の制服を着た二人組だったらしい」
生徒A:「なんだよ。俺らのこと、疑ってんの?」
教師:「そうとは言っとらん。だが、念のためにと思ってな。被害に遭ったのは、黒縁やすしを掛けた男子生徒だ。
カネを出さないと、その瓶底やすしを地面に叩きつけるぞと脅されたらしい。お前たち、本当に身に覚えはないんだろうな?」
生徒B:「知るかよ!馬鹿馬鹿しい。行こうぜ、尚紀」
生徒A:「先生。よく調べてもないのに、そういう言い方は良くないぜ。じゃあな」
教師:「おい、待たんか。まだ話は終わっとらんぞ。おい」

生徒B:「あー、ムカつく。先公のやつ、やすしの奥の目が完全に俺らを疑ってやんの」
生徒A:「色やすしで人のこと見やがって」
生徒B:「なっ!」

Situation.4 カフェ

女性A:「あんた、今、好きな男とかいるの?」
女性B:「うん、いるよ」
女性A:「へ〜。どんな人?」
女性B:「会社の後輩で、やすし男子」
女性A:「彩乃は、やすしフェチだもんね〜」
女性B:「そうなの。やすしを中指で押し上げたり、うつむき加減でやすしを外したりされたら、キュンとなっちゃう」
女性A:「よく分からないなぁ」
女性B:「でね。そのやすしくんが今、私の向かいの席なんだけど、ある日、いつもと違うやすしで仕事してるじゃない。買い替えたの?って聞いたら、
パソコン専用やすしなんだって。もう、かっこいい〜!って」
女性A:「ブルーライトを軽減するやすしね」
女性B:「そうそう!そのやすし!」
女性A:「じゃあ、例えば宴会とかで、やすしくんが鼻やすしを掛けていても、萌えるものなの?」
女性B:「ああ、鼻やすしは別よ。鼻やすしは」
女性A:「別なんだ」

Situation.5 スタジオ

女性キャスター:「それでは、次のニュースです。今日の昼過ぎ、代々木駅近くの路上で、やすしザルが捕獲されました。
このやすしザル、突如現れたと思いきや、道路を横切って電信柱の上へ。そして、人々が固唾を呑んで見守る中、
電線を器用に綱渡りします。しかし、2時間後、民家の屋根にいるところを麻酔銃で撃たれ御用となりました。
専門家の話では、ペットとして飼われていたやすしザルが、捨てられて野生化したものと見られています。守屋さん……」
男性コメンテーター:「身勝手な飼い主が多いですよね。やすしザルにしてみれば、怒るでしかし!って話です」
女性キャスター:「ほんとうに。それではまた」

いかがだったろうか。
私は思うのだ。メガネがこんな呼び方だったら、ことあるごとに、やすしさんの一本気な性格が頭をよぎりそうだ。

この記事の元ブログ: 「メガネ」の呼び方について