By Steve Jurvetson

ITベンチャー企業の創業者やCEOが集まり意見を交換するイベント「Cultivate 2013」が開催され、IT業界の成功者たちが「自らが経験した失敗」や「よりよいリーダーになるには?」などのトピックで講義を行いました。HubSpotでは、イベント内容の一部が公開されており、その中でも聴衆から高い評価を得た講義をまとめてみました。

Cultivate 2013 - O'Reilly Conferences, October 14 New York, NY
http://cultivatecon.com/cultivate2013/

Lessons from Leaders on Cultivating Culture
http://dev.hubspot.com/blog/notes-from-cultivatecon-2013

ティム・オライリー 主題「私が失敗した経緯」


アメリカのメディア企業オライリーメディアの創設者であるオライリー氏は、IT業界で大きな成功を収めましたが、その背後で数々の失敗を犯してきました。しかしながらその失敗こそが、会社や社員、そしてオライリー氏自身を成長させた要因であるとのことで、オライリー氏は「犯した失敗」と「失敗から得た教訓」についてまとめています。

・1:チームが自分の指示を正確に理解しているか確認しなかったこと

By Marco Bellucci

オライリー氏によると、指示を出す場合、プロジェクトチームが自分の指示についてきちんと理解しているか時間をかけて確認する必要があるとのことです。そのためには、「プロジェクトの戦略について優先順位をつけること」「優先順位を守ってプロジェクトを遂行するには何が最優先なのか理解すること」「最優先の作業を完了するためにすべきこと」をチームに伝えるべきとのこと。

・2:思い込み

By @Doug88888

以前に試した方法がうまくいったとしても、必ずしも正解は1つではないので、過去の事例にとらわれないことが大事。テクノロジーにクリエイティブな考え方が必要なら、当然ビジネスにも必要です。

・3:財務と運用に関する規律が不完全であったこと

By Eric

オライリー氏が犯した最大の失敗は「財務と運用に関する不完全な規律」だったそうで、これが原因で「お金の使い方」や「外部との交渉」に問題が発生し、オライリーメディアは破産寸前まで追い込まれることに。同じ失敗を繰り返さないために、会社の財務部の社員の特性を正確に把握し、的確な人員配置をする必要がありました。

・4:凡庸性に妥協したこと

By Evan Leeson

自分の心に問いかけてみて何かが足りないとと感じれば、それが正解。凡庸で特に目立ったところがないままでは妥協せずに、レールから外れたことでも、自分を信じてトライしてみるべきです。

・5:「私がやりましょう」

By Adam Bronkhorst

部署内の社員の能力にばらつきがあるとき、どうしても能力のバランスを取るような人員配置を行いますが、これは間違っています。他人の仕事の尻ぬぐいを誰かがするような事態は出来るだけ避けたほうがいいそうです。

◆Kate Matsudaira 主題「1日に何をしているのか?」


スタートアップ企業popformsのCEOであるKate Matsudaira氏は、フラットな組織、つまり伝統的な上下関係を排除し、すべての社員がマネージャーである組織を目指しているとのこと。しかしながら、フラットな組織にもリーダーという存在は必須で、Matsudaira氏は良きリーダーになるためにすべきことを考えるようになりました。

リーダーとは「決断を下す人」であり、決して地位ではありません。Matsudaira氏はリーダーが持っているべき素質として「カリスマ性」「専門的知識」「コミュニケーション能力」を挙げました。特に重要であるのがコミュニケーション能力を使って構築する社員との人間関係。Matsudaira氏によると、人間関係を築く方法は、まず全ての部署やプロジェクトチームにおける「チーム内で1番重要な人物」と「自分と1番良好な人間関係を築いている人物」を選び、リストを作成します。2つのリストの人物が同一でない場合、なぜ自分は「チーム内で1番重要な人物」と良好な人間関係を築けていないのか、考えなければいけません。

By Kevin Dooley

業務内容に矛盾を感じたときなどは真っ向から立ち向かうこと。矛盾を無視しないことは、社員からの信頼を得ることにつながります。また、社員に質問し、返答にしっかりと耳を傾けることも大事。Matsudaira氏は「人間関係を構築することは簡単ではありませんが、問題はその難しさを忘れてしまうことです。企業の成功は人、つまり社員にかかっているのですから」と企業における人間関係の重要性を語っていました。

◆Michael Lopp 主題「私はミーティングが嫌いです」


「なぜミーティングが嫌われるのか?」というトピックで、さまざまな角度からミーティングを分析したのは、Palantir TechnologiesエンジニアであるMichael Lopp氏。Lopp氏によると、ミーティングは「自分以外の人間」「問題解決のための共同作業」「限られた時間」「必要性」の4つの要素から構成されていますが、4つの要素を満たしていない場合に「嫌われるミーティング」が発生してしまうとのこと。

4つの要素を満たしていないミーティングの例としてLopp氏が挙げたのは、「ミーティングの場にいながら参加していない人がいる」「議題の不足」「出席者が時間を割いて参加していることに敬意を払わない」「時間制限なしで永遠に進行する」といったもの。

By NASA HQ PHOTO

Lopp氏が挙げたようなミーティングを防ぐには、短くても30分のミーティングを毎週開催し、抱えている問題点をはっきりとさせます。また、違う部署やプロジェクトの人間を招くことも重要。全く違う分野の人たちと問題点を共有すると、新たな糸口の発見につながります。多くの参加者を抱えるミーティングは、頻繁に行わず時折開催する程度で十分。ポーカーをしながらなど、環境を通常のものとは異なったミーティングを行えば、予想外の会話やアイデアが飛び出すこともあります。

講義内容は、大きな成功を収めた人の経験談なだけに説得力があり、これからビジネスを起こすつもりの人や、すでに起業している人にも参考になるかもしれません。