12/16、仮釈放になった鈴木宗男氏(右)と盟友・佐藤優氏。この1年、塀の中で忸怩たる思いで日本を見てきた宗男氏が、今すべてをブチまける

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 1年間の獄中生活を経て、元衆議院議員・鈴木宗男が仮釈放された。嘘の証言で、鈴木と元外務省職員・佐藤優を政治の表舞台から追放した外務官僚たちにふたりはどう鉄槌(てっつい)を下すのか。そしてこの一年の日本の変化をどう見ているのか?胸中を聞き出した。

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――1年間の刑務所生活、お疲れさまでした。今日は、刑務所でどんなことをしていたのか、そして服役を経て、今考えていることを伺いたいと思います。鈴木さんは喜連川の刑務所に入っていたんですよね。とても寒かったのではないですか?

【鈴木】本当に寒かった。一番寒かったのが入ったばかりの2010年12月でした。身体に順応能力がないから、寒くなりかけが一番こたえます。喜連川は東京より5度低く、来た瞬間に、年を越してから来ればよかったと思いました(笑)。

【佐藤】大変でしたね。監獄法が改正されて「受刑者処遇法」により、今は刑務所内でカイロが買えるようになっているそうですが。

【鈴木】そう。これには助けられました。私は食道がんにかかっていたのですが、がんに一番良くないのが低体温なんです。カイロ以外には、毛布を1枚余分にもらったりもしました。でも、現場で意地の悪い刑務官がいて、手元に届くまでだいぶ時間がかかりました。60歳超えての寒さはつらいですね。

 でも、そんな嫌がらせに役立ったのが佐藤さんから送ってもらった本です。特に、刑務官をしていた鴨下守孝さんという人が書いた『受刑者処遇読本』。

【佐藤】『受刑者処遇読本』は、受刑者にどう対処するかの刑務官の側のマニュアル本です。こういう本を読んでいると、刑務官に、こいつ情報を知っているなと緊張させられます。塀の中の生活には便利ですね。

【鈴木】刑務官はプレッシャーだったでしょうね。それから、寒さの次にこたえたのが食べることです。基本的に3食とも、同じ仕事をしている者同士で食べなければならないのですが、皆は2、3分でかきこむようにして食べる。ところが、私は胃を手術で摘出してしまっているから、どうしても時間がかかり、いつも皆を10分以上待たせてしまう。

――現場の職員に言って改善してもらえないんですか?

【佐藤】望み薄でしょうね。

【鈴木】そこで、佐藤さんに教えてもらっていた方法を使いました。弁護士宛てに、「いつも急(せ)かされて食べなければならないから、胃のない私は大変なことになりそうだ」と手紙を書いたんです。手紙は刑務所の上層部がすべてチェックしています。これは大変だと、3食のうち朝と夜は部屋に戻って食べていいことになったんです。

【佐藤】これは、刑務所を少しでも快適に過ごすためには有効な技術です。私は検事に知らせたいことがある場合は、便箋(びんせん)ではなく原稿用紙を使って弁護士に手紙を書いていました。原稿用紙に書いたことは、そのまま活字になる可能性があるから特に重要だと、検事がすべてチェックするんです。

――インテリジェンスのテクが役に立ったわけですね。

■被災地の映像を見て元気をもらった

――テレビは見られるんですか?

【鈴木】リアルタイムで接することができるのはラジオです。私は夜7時のNHKニュースをいつも聴いていました。あと、日曜日はかなり長い時間ラジオをつけられるので、『爆笑問題の日曜サンデー』はよく聴いたと思います。

【佐藤】テレビはどうでした?

【鈴木】拘置所と違って、刑務所はテレビが見られるから退屈しないと聞いていたので楽しみにしていたんです。しかしなんのことはない、編集済みの録画したものでした。それも、ほとんどが歌謡番組かバラエティ、落語など。基本的に私が見ていたのは、一日遅れで月曜の夜に見られる『サンデーモーニング』。1週間のニュースがわかりますから情報源として貴重でした。ほかにニュース番組では、お昼ご飯のとき、その日の朝の『めざにゅ〜』を30分にまとめたものが流れていました。