「パパ活?」「サッカー興味ないだろ」W杯現地観戦の女性インフルエンサーへの誹謗中傷に本人が反論「4年前からお金をためて夢を叶えた」
サッカーW杯で、日本代表が世界を相手に熱戦を繰り広げている。グループステージ初戦では、強豪オランダを相手に勝ち点1を獲得し、続くチュニジア戦では4得点で圧勝。日本中がサッカー熱で沸く中で、SNSでは現地観戦に訪れた女性サポーターたちの投稿が話題となった。
【画像】海外の強豪チームも観戦 いのりさんの水色ユニフォーム姿
サッカー観戦の女性サポーターにSNSで誹謗中傷
なかでも注目を集めたのが、スタジアムを背景にして記念撮影している女性サポーターの写真だ。サッカー観戦の喜びを伝える投稿には、SNS上では彼女たちに対して心ない言葉も飛び交った。
「サッカーなんかサラサラ興味が無いだろ」
「自分が目立ちたいだけ サッカー利用すんなよ」
「ほんとにサッカー好きなんか??ルールわかってみてるのか?」
「パパ活のパパに連れて行ってもらったんじゃないの?」
いずれも根拠のない推測であり、偏見でしかない。しかし投稿は悪意ある形で拡散され、本人への誹謗中傷に発展していった。
こうしたトラブルに巻き込まれた一人が、女性インフルエンサーのいのりさんだ。SNS総フォロワー数は35万人。日ごろからサッカー観戦の様子などを投稿している彼女だが、今回、日本対オランダ戦の際に投稿した、日本代表のユニフォーム姿でスタジアムに立つ写真が拡散され、心ない言葉を浴びることになった。
若い女性がスポーツ観戦に行き、自分の写真を投稿する。その姿に対し、なぜここまで疑いや偏見の目が向けられるのか。当事者であるインフルエンサーの、いのりさんに話を聞いた。
いのりさんがサッカーを好きになったのは、小学2年生のころ。
友人の父親からチケットをもらい、初めてスタジアムへ足を運んだ。観戦したのはセレッソ大阪の試合。その日をきっかけに、サッカーに心をつかまれた。
「サッカーを好きになる理由は、人それぞれだと思います。地元のチームだから好きになる人もいれば、友達が好きだから興味を持つ人もいる。選手がかっこいいから好きになる人もいると思います。私の場合は、たまたま最初に見た試合がセレッソ大阪だったんです」(いのりさん、以下同)
当時、いのりさんは空手を習っていた。基本的に一対一で相手と向き合う個人競技の空手に対して、サッカーはチームスポーツ。初めてスタジアムで見たサッカーは、彼女にとって新鮮だった。
その後、いのりさんはJリーグを観戦するようになり、現在もスタジアムで応援を続けている。
そんな彼女が、今回のワールドカップを現地で観戦しようと決めたのは、4年前だったという。
いのりさんが明かすサッカーへの強い想い
「SNSで、実際に現地へ行っている人の投稿が目に入ったんです。それを見て、『次は自分も絶対に行きたい』と思いました」
当時は大学生。海外までワールドカップを観に行くお金があったわけではない。それでも、いのりさんは「4年あれば、自分の行動次第で実現できるかもしれない」と考えたという。
「費用がかかることはわかっていたので、お金を貯めることはずっと意識していました。ただ、自分では苦労や努力という感覚ではなくて、自分が楽しみながら続けられるやり方を選んできたという感じです」
SNSでの活動やライブ配信など、自分に合った形で発信を続けた。今回の渡航費や滞在費などにかかる金額は約300万円。滞在は約2週間。しかも、いのりさんにとっては初めての海外渡航だった。
「海外に行くのが初めてだったので、飛行機の取り方も、ホテルの選び方もわからなくて。今回は旅行会社の方にお願いして手配してもらいました。その分、費用は高くなったと思います」
それでも、4年前に思い描いた夢を実現させた。
実際にスタジアムで日本代表戦を観たとき、何を感じたのか。
「日本代表戦は国内で見たことはありますが、海外まで応援に来ている方たちの熱量はまた違いました。スタジアムの雰囲気や熱気、サポーターの気合いがすごく伝わってきました。
ゴール裏の席ではなかったんですけど、点が入った瞬間に隣の方と自然にハイタッチしたんです。ゴール裏ではそういうこともあると思いますが、それ以外の席で経験することはあまりなかったので、現地の熱量を感じました」
オランダ戦では、以前から注目していたファン・ダイク選手を実際に見ることもできた。
「高校生のころはプレミアリーグもよく見ていて、その中でファン・ダイク選手に注目していました。これまで(マンチェスター)シティの選手など、来日した海外クラブの選手を見る機会はあったんですけど、ファン・ダイク選手はまだ見たことがなくて。今回のオランダ戦で初めて見ることができたのは、すごくうれしかったです」
ただし、試合中の気持ちはまた別だった。
「好きな選手ではあるんですけど、日本代表がファン・ダイク選手のいるところにボールを送ると、跳ね返されてしまうので、『そこには出さないで!』と思っていました。そう思ったとき、自分はやっぱり日本代表を応援しているんだなと感じました。好きな選手はいても、勝ってほしいのは日本代表なんです」
ここまでのエピソードを知れば、いのりさんがサッカーを大切にしてきたことは十分に伝わるだろう。しかし今回、そんないのりさんの投稿に対し、SNSでは心ない声も上がった。
大学時代にはスポーツマネジメントも専攻
「現地に行っても写真だけ撮って試合を見ていないのでは、と言われたり、誰かのお金で来ているのでは、と決めつけられたりしました。でも、それは事実ではありません。そこはきちんと否定しておきたいです。
SNSでは、事実ではないことを言われることもあるとわかっていますし、発信する以上、ある程度は覚悟も必要だと思っています。ただ、言い返したくても、その後のことを考えると言い返せないこともあります」
いのりさんが強く危惧しているのは、こういったSNSの風潮は、自分だけの問題ではないということだ。
大学時代、いのりさんはスポーツマネジメントを専攻していた。サッカー好きがきっかけで、サッカービジネスも学んだ。その中で、女性サポーターをどう増やしていくかについても考えていたという。
「今回のワールドカップでは、特に女性のSNS投稿に対して心ない言葉が多いと感じました。私はサッカーが好きだからこそ、女性サポーターを攻撃するような言葉が、サッカーファン全体の印象まで悪くしてしまう気もしてすごく嫌なんです。
応援の形はたくさんあると思います。誰が、どんなきっかけで応援してもいいのがスポーツであり、サッカーだと思っています。ワールドカップだけ見る人がいても、それは自然なことではないでしょうか」
写真を撮って投稿する。ユニフォームを着て楽しむ。それらは本来、誰かに口出しされることではない。世界中で多くの人がやっていることだが、若い女性の投稿に対しては、ことさら批判が集まる。
「テーマパークに行ったら写真を撮って投稿する人はたくさんいますよね。スタジアムでも同じで、写真を投稿することで、4年前の私のように『自分も行ってみたい』と思う人がいるかもしれない。そういうきっかけを作れるのもSNSだと思っています」
4年前、SNSで現地観戦者の投稿を見て、「次は自分も絶対に行く」と決めたいのりさん。
そして今、自身の投稿もまた、誰かにとってのきっかけになるかもしれない。
「どんな形でも応援していいと思います。にわかかどうかで線を引く必要もないと思います。ただ、行き過ぎた誹謗中傷はやめてほしいです。女性のサポーターはもっと増えてほしいので」
勝手なルールを生み出し、女性ファンを排除するような空気は、サッカーファンを少なくするだけだ。そして、SNSでの誹謗中傷は、決して許されるものではない。
取材・文/集英社オンライン編集部
