Illustration: Davide Bonadonna via Gizmodo US

この記事は「ギズモード・タイムマシン」──すこし前の今日って、何があったんだろう?未来から観察してみたら、懐かしさだけでなく、意外な発見だってあるかもしれません。

2022年5月10日、「地球最大の肉食恐竜スピノサウルスは、水中にも適応した最恐ハンターだったらしい」という記事を掲載しました。

スピノサウルスといえば、映画『ジュラシック・パークIII』でもフィーチャーされた大型の恐竜。ティラノサウルス以上の体格を誇ったという説もあり、非常に人気のある恐竜となっています。

そんなスピノサウルスについて、その骨密度から「彼らが水中にも適応したハンターであった」と考える説には、ロマンを感じた人も多かったのではないでしょうか。

さて、記事公開から4年が経った現在、スピノサウルスの生態については依然議論がなされています。骨密度からスピノサウルスが潜水をしていたと論じる考えには、否定的な意見も。体の形状や化石の発見場所などから、水辺に棲んでいたと考えられてはいるものの、ガッツリ水中を泳いでいたという考えには諸説あるようです。彼らの生態について、明確な結論が出るのはまだ先になりそう。

最近では、頭頂部にトサカを持っていたと考えられるスピノサウルスの新種が見つかるといった出来事もありました。新たな発見によって、既存の考えが大きく更新されていくというのは、古生物という領域のおもしろい部分でもありますね。

さまざまな意見があるものの、スピノサウルスが水中にも適応していたという説には、やはりロマンを感じます。最新のスピノサウルス像を追うためにも、これからの発見にもしっかりとアンテナを張っていきたいところ。個人的には、「泳げる!デカい!カッコいい!」なスピノサウルスであってほしいと思います。

Source: CNN,朝日新聞GLOBE+,Forbes,福井新聞ONLINE

(以下、元記事を再編集のうえ掲載します)

今日の記事:地球最大の肉食恐竜スピノサウルスは、水中にも適応した最恐ハンターだったらしい

掲載日:2022年5月10日

著者:George Dvorsky - GIZMODO US[原文]( 山田ちとら )

Illustration: Davide Bonadonna via Gizmodo US

最大級の肉食恐竜は、地上でも水中でも脅威的なハンターだった?

スピノサウルスは水中生活に適応した体を持っていたことが、骨の密度の研究から判明したそうです。最大の肉食恐竜って、ティラノサウルスじゃなかったのね!

肉食恐竜の異端児

スピノサウルスは今から9500万年〜1億年前の白亜紀に生きた獣脚類です。同時期に食物連鎖の頂点に君臨していたティラノサウルスよりも大きかったと考えられ、体長は18mにも及びました。ワニのような長いあご先、魚を捕らえるために最適化した円錐形の歯などの特徴からは、半水生動物だった可能性が以前から指摘されていました。そしてそれを裏付けるかのように、2020年に発見されたスピノサウルスの化石からは尾がほぼ完全なかたちで復元され、水の中でしなるように動いて推進力を生み出していた構造が明らかになっています。

ただ、スピノサウルスが自由に泳ぎ回れたらしいことはわかっていたものの、実際どの程度水中で生活していたのかはわかっていませんでした(ちなみに、すべての恐竜は卵を産み落とすために陸に上がります)。生体構造は行動パターンを暗示する場合が多いものの、必ずしもそうではありません。たとえばカバの生体構造から、彼らが水生動物だと推測するのはむずかしいですよね。

「スピノサウルス科は、歴史的にも奇妙な肉食恐竜なんです」と説明してくれたのは米ミッドウェスタン大学解剖学助教のEric Gorscak氏。

ほかの非鳥類型獣脚類恐竜には見られない特殊性を有していて、しかもそれらは水中生活に親和性がありそうなものばかりでした。

しかし、スピノサウルスが水生動物だったという仮説を支持する定性的観察はたくさん得られているものの、決め手となるような定量的データはこれまでなかったんです。

この不足していた定量的データを提供してくれたのが、最新の骨の密度の研究でした。

半水生を裏付ける研究

フィールド自然史博物館の古生物学者・Matteo Fabbri氏率いる研究チームは、スピノサウルス科に属する恐竜の骨の密度を丹念に調べ、ほかの幅広い生物のものと比べました。その結果、スピノサウルス科の恐竜の化石の骨密度が高かったことから「水生スペシャリスト」だった可能性が高いとの結論に至りました。骨の密度が高いと、潜水時に浮力の調節がしやすくなるからです。

スピノサウルス科の中でもスコミムスの骨は中が空洞になっていたそうで、おそらくサギのように浅瀬を歩いて渡りながら狩りをしていた模様。対してスピノサウルスとバリオニクスの骨の密度はどちらも高かったことから、ガッツリ潜水し、オールのような尾で舵取りをしながら水中で獲物を捕らえていたと考えられるそうです。

Gorscak氏曰く、「ワニのような姿をしていて、ウのように浮かび、カバのように潜水できるスピノサウルス科の恐竜は、おそらく半水生動物だった」ことが今回の研究により明かされたのです。

骨480本をCTスキャン

スピノサウルスの本性に迫る画期的な研究結果ですが、定量的データを得るまでには長い年月とたいへんな労力が必要だったそうです。

Fabbri氏の研究チームは、恐竜・ワニ・鳥類・海生爬虫類などの骨をCTスキャンしてデータ化し、比較分析しました。特に注目したのは大腿骨と肋骨だったそうで、Fabbri氏の説明によれば「大腿骨と肋骨はどちらも体の動作・バランス・環境への適応力に強く影響していることが多い」からなのだそうです。

「一部の骨については、骨組織を詳しく調べるために中央部分をカットして細かくスライスしました」とFabbri氏は説明しています。

これらのスライスがCTスキャンで画像化されると、白黒の図形になりました。黒い部分は骨組織、そして白は脈管や髄腔などの空洞を意味していました。

スキャン画像は骨組織を数量化する特殊なソフトウェアに組み込まれ、分析されました。絶滅種・現存種を含めた291種から採取された480本の骨でこのプロセスがリピートされたそうですから、とにかく時間を要したそうです。

Fabbri氏の同僚で同研究に携わったフィールド自然史博物館に所属するJingmai O'Conner氏は、このような手法が「古生物学の未来」を象徴していると前置きした上で、

科学者はひとつの化石から得られる定性的観察に縛られることなく、もっと大きなパターンに光を当てることができる

と説明しています。

スピノサウルスとバリオニクスは水中でも活動していた

実際、Fabbri氏らの苦労は大きな実を結びました。骨の密度と水生環境における行動との関連性が明らかになり、水に潜る習性を持つ動物のほとんどは固い骨を持っているのに対して、陸上で暮らす動物のほとんどは空洞化した骨を持っていることがわかりました。スピノサウルス科に属する恐竜のほとんどが高い密度の骨を持っていることから、「彼らが水中で多くの時間を過ごし、潜水していたこともうかがえます」とFabbri氏。

さらに、スピノサウルス科の中でもスピノサウルス、バリオニクスとスクミムスの3つのグループに属する恐竜の行動についてもわかってきました。スピノサウルスとバリオニクスの骨の密度が高かったことから、おそらく水中で巧みに泳いでいたと推察できる反面、空洞化した骨を持つスクミムスは水面を渡り歩いていたと推察できるそうです。

スピノサウルスに関しては以前から泳ぎが得意そうと言われていたんですが、Fabbri氏は「私たちの研究はスピノサウルス以外の種に視点をシフトすることで、スピノサウルス科に属する幅広い種が潜ったり泳いだりしていた可能性を新たに見出しました」とも説明しています。

仮に、高い骨の密度は水生環境への適応以外にも要因が考えられるのかFabbri氏に聞いてみたところ、

骨格全体での高い骨密度に関しては、ほかに説明しようがありません。一部の非常に大きな体を持つ陸生恐竜は、脚の部分の骨の密度が高い傾向にありますが、骨格全体ではないんです。ですから、このような観点から水生だったのか、またはただ重い体重を支えるために脚の骨の密度が高かったかのかを区別できます

とのことでした。

今後の課題としては、巨体を誇るスピノサウルスやバリオニクスがどのように水の中を移動したのかを研究する必要があるそうです。なにしろ現代に生きる半水生動物とは比較にならないサイズですからね。

科学的に正しいかは置いといて、スピノサウルスが水中を音もなく移動しながら獲物を狩る様子を想像してみただけで、ゾクゾクしませんか?喉を潤すために水辺に集まった恐竜たちを、水中から狙い撃ち!なんてこともあったんでしょう。スピノサウルスに目を付けられたら、それこそティラノサウルスの幼体だってきっとひとたまりもなかったはず…。やはり、スピノサウルスは地球上で最強のハンターだったのかもしれません。

Reference: ナショナルジオグラフィック, Nature

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