「借金を二重に抱えられない」集団移転を前に揺れる被災地 戸沢村蔵岡地区の2年
木曜特集です。おととしの豪雨で被害を受け、集団移転に向けて検討が進む戸沢村蔵岡地区。災害から1年以上が経過する中、住民たちは様々な思いを抱えていました。蔵岡地区の現在地を見つめます。
4月26日、戸沢村蔵岡地区に住民たちが集まりました。田植えを前にした恒例の共同作業です。
住民「これをやると田植えの準備が始まるんだなと思ったりする。やっぱりばらばらになったりして人がいなくなりましたね」
ヘリリポート「住宅地一帯が茶色い水に覆われています」
2024年7月、豪雨の影響で69世帯のほとんどが浸水した戸沢村蔵岡地区。
地区住民「もう諦めました」
地区住民「もう住むところじゃない。水の心配のない所で生活したい」
住民たちは村が提案した地区からの集団移転に同意。新たな段階に進みました。「水あがり」からまもなく2年。蔵岡地区の住民たちが今思うことは。
2024年7月、当時69世帯が住んでいた戸沢村の蔵岡地区は、最上川からあふれた水などでほとんどの世帯が浸水。
住民たちは地区内や村内の仮設住宅、村外の親類宅などに身を寄せ暮らしています。
村は住民に対し、蔵岡地区からの集団移転を提案。すべての世帯が同意しました。
災害から1年が過ぎた2025年9月、村内の高台にある名高地区が移転候補地として住民に示されました。
2025年10月、村営住宅で避難生活を送る柳田雅志さん一家は、村からのアンケートに回答しました。
回答「希望する移転先についてお聞きします。移転先住宅団地への移転戸建て、移転先住宅団地への移転集合住宅、移転先住宅団地以外への移転」「戸建て」「100坪、150坪、その他」「150、その他だべな。150以上平屋なら欲しくなるし」
柳田さん一家は子どもが5人いる蔵岡地区内で最も子だくさんの家族。移転後は妻・まゆみさんの両親と合わせて9人で生活する予定です。
柳田雅志さん「人数が人数で物価も何も高い時代なんで。そういったものを抱えてでもやっていかないといけないと思っているので、必要なことかなと思う」
村のアンケートの結果、蔵岡地区住民全体の68%が村が提示した候補地への移転を希望。その他は、別の場所への移転を選択しました。
柳田まゆみさん「もう東根とかに家を買って住んでいる人とか、集団移転を待てなくて本合海に家を建てている人はすでにいる。子どもたちのことを考えればここ戸沢村ではない方がいいのかなとも思ったりしてでも現実を考えれば」
会話「お腹出てるよ。ちゃんと隠しなさい。大きいお尻映されちゃうよ」「やめて」
現在も蔵岡地区で暮らす横山雅生さん。この日は県外から帰省した孫とのひと時を過ごしていました。
横山雅生さん「水害の時はこのくらいの高さまで水が来た。でも家族が一緒にいられる空間が一番だと思って家も直した」
横山さんの家は新築してまだ4年ほど。水害で被災したものの修繕し現在は支障なく暮らしています。村のアンケートでは村内の候補地への移転を希望すると回答しながらも、複雑な心境を抱えています。
横山雅生さん「できればこのままでもいいんですけど。移転先に行くと同意をしているが、この規模の家が建つほどの補償があるのかどうか」
集団移転に伴い、現在住んでいる家は取り壊されることになり、村から住民に補償金が支払われます。新たな家の建築費を補償金から捻出できれば借金をせずに済みます。しかし、2025年に示された補償金の概算額は横山さんの想定を下回っていました。
横山雅生さん「借金を二重に抱えるわけにいかないし、息子に残すわけにもいかない。最終的には移転になると思うが、一人だけここに残ると頑張っても他の人にも迷惑がかかるし」
4月1日、村は蔵岡地区を災害危険区域に設定し、地区内での新たな家屋の建設を制限しました。一方、集団移転事業が完了するまでの間は、蔵岡地区内で住み続けることができ、稲作などの農作業も継続することができます。
4月26日、蔵岡地区に住民たちが集まりました。この日行われたのは稲作シーズンを前に毎年行っている「泥かき」。田んぼの脇を流れる側溝にたまった泥をスコップでかき出していきます。
住民「たまってる。結構重いですよね。毎年恒例。春になると。これをやると田植えの準備が始まるんだなと思ったりする。やっぱりばらばらになったりして人がいなくなりましたね」
おととしの豪雨の影響はまだ残っているといいます。
コメ農家・中村健一さん「ことしは雪解け水がすごすぎて砂と一緒に田んぼまで流れるような状態になってしまった。これからもこういうことが続くと思うので、蔵岡の住民の人々が手伝ってくれるのはありがたい」
ことしも5軒ほどのコメ農家が稲作を続ける予定です。
コメ農家・横山博さん「やります。引き続き。おととしが最悪だったけど去年はおかげさまで何とか息をつきました。秋の収穫を楽しみに毎日頑張るしかないかなと思っています」
4月27日、村は策定した集団移転の事業計画を国に提出し、了承を得次第、本格的に事業を進めたい考えです。また、5月中に補償金の算出に向けた本格的な調査を蔵岡地区の全ての世帯で実施します。
戸沢村加藤文明村長「希望のアンケートもまとまってようやくここまで来れた。大臣からの合意を早く受けたいというのが本音。そこからハード面の整備に取りかかるのでもう少し時間はかかるのかなと」
柳田さん「うちは頭数が多いので移転まで早い方が助かる。負担の無いよう金銭的にも日数の面でも負担が少ないように考えていってもらいたい」
地区住民「なるべく早くやってもらわないといなくなってしまう」
事業の開始から完了まで3年はかかるとされている集団移転。蔵岡地区は新たなスタートラインに立とうとしています。
