日本人メンバーが外される日も? 中国進出が本格化するK-POP、“国籍リスク”を乗り越えられるか
K-POPが、中国市場へ再びリアルな拠点を持ち始めた。
SMエンターテインメントが上海に初の公式オフラインのグッズ売り場を開いたことは、単なるグッズ販売の話ではない。
長く慎重な距離感が続いてきた中国市場に、K-POPが再び“現場”を作り始めた象徴的な出来事といえる。
SMエンタは4月29日、上海の複合ショッピングモール「新六百YOUNG」に「SMTOWN STORE Shanghai」をオープンした。同店舗はSMエンタにとって中国初の公式オフラインMD店舗であり、中国国内初のK-POP公式MD店舗としても意味を持つという。
店舗は約335平方メートル規模で、アーティストの公式グッズだけでなく、ペンライト展示ゾーン、アルバムフォトウォール、大型マルチメディアスクリーンなど、体験型コンテンツも備えた。オープン前から現地SNSで関心を集め、試験運営期間に行われたEXO関連のテーマポップアップや現地特化商品も良い反応を得たとされる。
SMエンタのチャン・チョルヒョク共同代表は「オリジナルのMD(グッズ)や多彩なポップアップコンテンツを継続的に披露する予定だ」と述べ、「今回の店舗を通じて中国のファンとの接点を広げ、現地でのブランド体験を強化していく」と明らかにした。
日本人メンバーが火種に?
ここだけを見れば、K-POPにとって大きな追い風だ。
いわゆる「限韓令」以降、中国は長くK-POPにとって巨大な潜在市場であり続けてきた。音源、アルバム、グッズ、ファンサイン会、ポップアップ、現地イベント。巨大なファンダムと消費力を考えれば、各事務所が再び中国市場に接近するのは自然な流れといえるだろう。
特にSMエンターテインメントは、中国市場との関係が深い会社だ。SUPER JUNIOR-M、EXO、NCTなど、中華圏を意識したグループ運営やメンバー構成を長く試みてきた。今回の上海ストアも、単なる小売店ではなく、中国ファンを再びオフラインのK-POP体験へ引き戻すための拠点と見ることができる。
ただし、その追い風には火種も残っている。
中国市場への再接近が進むほど、K-POPがこの10年で進めてきた“多国籍化”が、別の意味を持ち始めるからだ。とりわけ、日本人メンバーを含むグループにとって、中国活動は単純な拡大戦略では済まなくなっている。
近年、中華圏では日本人メンバーを含むK-POPグループのイベントが、直前になって中止や一部メンバー不参加となるケースが相次いだ。
たとえばTREASUREは昨年12月、中国・上海で予定されていたファンサイン会およびフォトイベントで、ヨシ、アサヒ、ハルトが不参加となった。イベント主催側は「不可抗力的な事情」と説明し、具体的な理由は明らかにしなかった。

だが、日本国籍のアサヒ、ハルトに加え、韓国国籍ながら在日4世であるヨシまで不参加メンバーに含まれたことで、最近の日中関係の緊張と無関係ではないのではないかという見方が広がった。
LE SSERAFIMも同時期、中国・上海で予定していたファンサイン会を中止している。主催側は「不可抗力的な事情により、関係部署との慎重な協議の末、中止を決定した」と説明したが、具体的な理由は明かしていない。
LE SSERAFIMには宮脇咲良とカズハという2人の日本国籍メンバーがいるため、業界内外では、日本人メンバーの存在が影響した可能性が慎重に指摘された。

さらに今年2月にはRIIZEの日本人メンバー、ショウタロウも、マカオ公演を控えて不参加が発表されたことがある。制作側は、メンバー全員が参加できるよう事前に準備してきたが、「やむを得ない事情」により出演できなくなったと説明した。結果として公演はショウタロウを除く体制で行われることになった。
もちろん、これらの事例について、中国側が日本人メンバーを明確に排除したと断定することはできない。公式発表はいずれも「不可抗力」や「やむを得ない事情」にとどまっており、具体的な理由は明かされていない。
しかし、同じ時期に日本人メンバー、あるいは日本にルーツを持つメンバーを含むグループの中国・中華圏イベントで不参加や中止が相次いだことは、K-POP業界にとって無視しにくいシグナルであることも事実だろう。

日本人メンバーが何か問題を起こしたわけではない。パフォーマンスや人気に問題があるわけでもない。むしろ、K-POPの多国籍化において、日本人メンバーは日本市場との接点を広げ、グループの人気を押し上げる重要な存在になってきた。
だが、中国市場では、その“国籍”が活動設計上の不確定要素となり得る。
この点で、SMエンターテインメントの上海ストア開店は皮肉なほど象徴的だ。
SMエンタは中国市場への接点を広げようとしている。だが、SMエンタの現行グループにも、日本人メンバーがいる。つまりSMエンタが中国展開を強めるほど、所属グループごとに“出しやすさ”の差が出る可能性がある。
K-POPは、グローバル化を進めるなかで多国籍メンバー構成を大きな武器にしてきた。
韓国人だけでなく、日本、中国、タイ、オーストラリア、アメリカ出身など、多様な国籍やルーツを持つメンバーがいることで、各国のファンが自分たちとの接点を見つけやすくなった。

日本人メンバーは、そのなかでも特に重要な存在だ。日本はK-POPにとって最大級の市場のひとつであり、日本人メンバーがいることは、日本活動や日本ファンダムの拡大に大きな意味を持ってきた。
しかし、中国市場への接近が進むのであれば、その強みが不確実性となる。K-POPの多国籍化は、世界市場に適応するための答えだったはずなのに、政治的緊張のなかでは、その多国籍性がそのまま管理すべきリスクにもなるのだ。
これは、K-POPの中国再進出にとって無視できない問題だ。なぜなら、中国活動は“出られるメンバーだけで出ればいい”という単純な話ではないからだ。
K-POPグループにとって、メンバー全員で立つことは大きな意味を持つ。ファンサイン会でも、コンサートでも、アルバムプロモーションでも、1人の不参加はファンの満足度やグループの見え方に直結する。特に多国籍グループでは、特定の国籍のメンバーだけが外されるように見えれば、ファンの間で不公平感や不信感も生まれやすい。
実際、TREASUREの件で在日4世のヨシまで不参加となったことは、ファンの議論を広げた。単なるビザやスケジュールの問題ではなく、どこまでが“日本関連”として扱われるのかという不安を呼んだからだ。

中国市場は魅力的だが、そこで活動するために一部メンバーが出られない状況が続くなら、K-POP事務所は難しい選択を迫られる。
今回のSMエンターテインメントの上海ストアは、その意味で“K-POPが中国に戻ってきた”ことを示すだけではない。“では日本人メンバーを含むグループはどうするのか”という新しい火種も映し出している。
