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群馬大学医学部が3月に公表した教授公募が、女性医師・女性研究者に対象を限定しているとして、「男性差別では」との声がSNSで広がり、議論を呼んだ。

群馬大は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「男女雇用機会均等法におけるポジティブ・アクションとして実施している」と説明。法令に基づく適正な運用との認識を示した。

実は、こうした女性限定の募集は他の大学でも見られる。背景には何があるのだろうか。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●群馬大「ポジティブ・アクションとして実施」

注目を集めたのは、3月18日付で公表された麻酔科学分野の教授候補者の公募だ。募集要項には、応募資格として「女性医師又は女性研究者」と明記されていたため、「女性ばかりが優遇されている」との指摘が相次いだ。

大学側に趣旨を聞いたところ、次のように回答した。

「男女雇用機会均等法におけるポジティブ・アクションとして実施しているものです。

本学におきましても、『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく国立大学法人群馬大学行動計画』に基づき、女性教員採用促進にむけて、学系ごとの目標値を定めた採用計画に取組んでいるところであり、女性教職員の比率向上を重要な経営課題と位置づけております。

現在、教員における女性比率22%以上を確保することを数値目標としておりますが、医学系研究科においてはこの目標を下回っています」

そのうえで、「この格差を早期に解消し、多様性のある研究・教育環境を構築するため、同法第8条に基づき今回の募集を行っております。そのため、国の掲げる男女共同参画の推進という大きな方針に沿った、適正な運用と考えております」と説明した。

●均等法の特例、女性優遇はなぜ認められるのか

男女雇用機会均等法は、募集・採用における性別による差別を原則として禁止している。一方で、男女間の格差を是正するための措置(ポジティブ・アクション)については、例外的に認めている。

「事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない」(男女雇用機会均等法8条)

厚労省も、過去の雇用慣行などによって生じた事実上の男女間格差を解消する目的であれば、女性のみを対象とした募集や女性を有利に扱う措置は、同法5条・6条に違反しないとしている。

一方、男性については、同様の特例は設けられてない。一般に、男性が不利な状況を置かれているケースは少ないと考えられているためだ。

●「女性4割未満」が一つの目安に

では、男女雇用機会均等法が言う「支障となっている事情」とは何か。

厚労省のサイトではこう説明している。

「『支障となっている事情』とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における雇用管理などが原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上格差が生じていることをいうものです。

この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものと考えられることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当少ない状況にあるか否かにより判断することが適当です。

具体的には、一定の雇用管理区分における職務、役職において女性労働者の割合が4割を下回っているか否かにより判断することとしています。

なお、現に女性労働者の割合が4割を下回っている場合であっても、例えば、事実上生じて いる格差を解消しようとする意図からではなく、単に男性ではなく女性をその職務に配置したいという意図で女性を配置することは、目的に合致しないため、均等法違反となります」

つまり、群馬大学の場合、教員の女性比率22%以上を確保することを数値目標としているが、募集のあった分野ではそれを下回っていることから、「支障となっている事情」と判断したと考えられる。

●女性教員の比率、日本はなお低水準

日本の大学教員に占める女性の割合は、世界的に見ても低い水準にある。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本は約3割と、加盟国中でも下位にとどまっている。

こうした状況を踏まえ、各大学では女性教員の割合を増やすためのさまざまな取り組みが展開されている。

たとえば東京大学は、2027年度までに女性教員比率(特任を含む教授・准教授・講師・助教)を25%とする目標を掲げている。具体的には、同年度までに着任する教授や准教授1200人のうち、約300人を女性とするという。

文科省の資料では、女性教員の割合が少ない原因として、「家庭との両立が困難」「育児期間後の復帰が困難」「職場環境」「業績評価における育児・介護に対する配慮不足」などが指摘されている。

大学教員のワークライフバランスを実現することは、誰にとっても働きやすい環境の整備につながる。同時に、女性教員をなぜ増やす必要があるのか、大学側には丁寧な説明が求められている。