心臓弁膜症、膀胱がん、咽頭がん── 。今年に入って次々に病気が発覚したデザイナーのドン小西さん(75)。15億の借金、うつ病、離婚とさまざまな困難を乗り越え、昨年夏には離婚から20年、元妻と再婚が決まったばかり。穏やかな暮らしが始まった矢先に起きた新たな波乱に、ドン小西さんが今、思うことは。

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「どのタイミングで入院するかわからないから」

友人と。軽井沢の別荘で過ごす時間が癒やしになっているという

── 2012年に心臓弁膜症の手術を、今年の1月には再び心臓弁膜症を患い、2月には膀胱がん、3月に咽頭がんと診断され、現在治療中と伺っています。今日の取材(4月上旬)は午前中に放射線治療を受けた後に、午後からお時間を作ってくださったと聞いています。大変な状況のなかで恐れ入ります。

小西さん:いえいえ。僕は3月末から放射線治療をはじめたけど、この先、治療でしゃべりにくくなる可能性があると言われているし、どのタイミングで入院するかわからないから、早めに取材を受けたかったんだよ。

── ありがとうございます。まず、今年1月にわかった心臓弁膜症ですが、もともと12年にも心臓弁膜症を患って手術をされていますよね。

小西さん:テレビ『主治医が見つかる診療所』で受けた人間ドックがきっかけで、心臓に問題があるとわかったの。「なんで俺が?」って想像もしていなかったからかなりショックだった。

心臓弁膜症は、心臓に4つある弁のうち、いずれかに障害が起こって血液の流れが悪くなる。放っておくと、心不全や死に至るケースもあるらしいんだけど、まったく自覚症状はなかったんだよね。

ただ、後から思えば普段から息切れしたり、風呂に入るとのぼせやすかったり。50代でマラソンを始めたけど、頑張っても仲間のペースについていけないこともあった。

それなのに60代になっても仕事が終わった後に頻繁にパーティに参加して。ひと晩で3~5か所くらいハシゴしてたんだよね。体を過信していたし、疲れても、太りすぎや寝不足だろうと、全然深刻に考えていなかった。

当時の手術は心臓弁置換術といって、僕の場合は心臓の大動脈弁を人工弁に取り替えたんだ。手術後の痛みは激しかったし、こんな苦しい思いはもうしたくないって思ったよ。退院後も変わらずパーティに出ていたけど、普段の食生活から健康を意識するようになったかな。塩分を控えるとか、ちゃんと睡眠をとるとか、体を労わるようになったね。

やっと穏やかに過ごせると思った矢先に

── しかし、2026年1月に再び心臓弁膜症の手術を受けることに。

小西さん:12年に手術をしたときも、10~15年くらいしたら弁が劣化するから交換手術の可能性もあると聞いていたけど、当時は「10年先なんてうんと先だ」と思っていたの。でも、ここ数年だんだん調子が悪くなってきて、ひどいときは道端でしゃがみこむこともあって。病院に行くと心不全の一歩手前、「手術をしないと命の保証はない」と言われてさ。今年の1月5日に手術をしたんだ。

手術は成功したけどこの先が大変だった。手術前に撮ったCTスキャンに3cm弱の影があると言われ、もう一度調べたら膀胱がんだって。すぐに手術が決まった。手術前は人工膀胱になる可能性もあると聞いていたけど、ギリギリのところで大丈夫と言われた。そしたら今度は咽頭がんだよ。

僕は昔から葉巻を吸っていて、無類の葉巻愛好家としても知られてるんだけど、それが原因で咽頭がんになっちゃったのかな。実は、1年半くらい前に喉が詰まる感じがして、病気を疑って病院を受診したけど、そのときは「風邪」と言われて終わったの。でもその後も全然治らなくて。今回入院した病院で診てもらったら咽頭がんだって言われて。

まぁ、人生いろいろあるよ。僕の人生ってずっと激しいでしょ。23歳で結婚して娘が生まれ、貧乏生活から事業が成功したら一気にお金が入って派手な生活をしたけど、そこから事業が傾き15億の借金を抱えて家族も失った。去年の夏に元女房と再婚が決まって、やっと穏やかに過ごせると思った矢先、こんなことになってね。さすがにショックだけどしょうがない。やることをやるだけだね。

── 咽頭がんに関しては、3月末から放射線治療がスタートしているそうですね。

小西さん:3月末から1か月半くらいの予定と聞いてる。過去に、借金15億作ったときはうつ病になったし、あのときの苦しみも相当なものだったけど、当時のつらさとは種類が違う。

苦しみという意味では間違いないけど、借金はつらくてもガムシャラに働くだけ。でも、今回はここでじっと耐えるってことでしょ。自分と向き合うことが多いのよ。「動」ではなく「静」の部分で。何の試練だろう。当然、不安もあるよ。でもさ、治療はすでにはじまってるし、気持ちの上がり下がりもあるけど頑張るしかない。 

今夏、再婚予定の妻が支える闘病生活と模索する70代の価値観

25年夏に完成した総額2億の軽井沢の別荘

── 病院の送迎は再婚予定の早苗さんがしているそうですね。

小西さん:そうそう。これから再婚するけどまだ一緒に住んでなくて、毎朝迎えに来てくれるの。今日も病院でたわいもないことでケンカしたけど、それでも早苗がそばにいることは精神的にも大きな支えになってるよ。とくに今のような事態になって、彼女の存在がとても大きい。

── しばらくは治療に専念されると?

小西さん:そうだね。去年まで東京と軽井沢の別荘を行き来していたけど、今は治療がない日に軽井沢に行ってる。すごく気分転換になるんだよね。余計なことを考えなくてもいいし、日常から解放される。

でも、病気になって気分が落ち込むけど、「年貢の収めどき」みたいな話でもないと思う。たしかに病気を患ったけど、体が戻ったら家でじっとしているわけでもないし。気づけば75歳になったけど、その年代で定年退職して家でゆっくり過ごす人もいれば、外に出てずっと現役の人もいる。

僕自身は今は生き方を模索しているところ。僕の70代はどういう価値観で進めばいいのか。仕事も病気も経験したし、去年は再婚も決めた。この先の生き方を日々考えているところだよ。

取材・文:松永怜 写真:ドン小西